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『将棋ペンクラブ大賞』のこと

 
 前回、『将棋ペンクラブ大賞』の技術部門のことを書いたが、このnoteの「将棋ペンクラブ」マガジンを見返してみて、『将棋ペンクラブ大賞』のことを説明していないということに気づいた。いきなり技術部門を書いてしまったが、まず『将棋ペンクラブ大賞』そのものを簡単に説明しておこうと思う。くだけた記事はそれからだ。
 
 『将棋ペンクラブ大賞』というのは、年度ごとに切り、将棋に関する文章を対象にして、その優れたものに賞を与えるというもの。平成元年に第1回がスタートして、今年で33回目。
 年度ごとの審査なので、3月末が締切。5月に1次選考、6月に2次選考。7月の最終選考が終わると受賞対象者に賞を受けるか意思を確認したあとで賞を確定し、40程度の媒体にその旨を知らせる。主に新聞社と出版社だ。伝達方法は、現在においてもファックス。笑ってやってください。
 毎年5~10紙(誌)くらいは、それを記事にしてくれる。文化面あたりで扱ってくれるともっと広く知られるのだが、多くは囲碁将棋欄のトピックスで載るので、あまり知られていない。
 
 
 
 将棋の文章といっても、いろいろある。現在では、それを下記3つの部門に分けている。
 ひとつは『観戦記部門』。観戦記とは、よく新聞のスポーツ面や文化面の下の方に載っている、囲碁将棋に興味がない人であれば、なんでこんなものが載ってるんだろうと思う記事だ。観戦記は1つの対局(試合とか言わないでください)を、何回かに分けて掲載する。その対局ごとの観戦記を、選考して、その年最も優れたものに賞を出す。
 
 次は、文芸部門。これは将棋が題材の小説や、棋士や将棋関係者が書いたエッセイなど。将棋の起源を追った歴史書や、駒を主人公にした絵本なんてものも、とにかく題材が将棋であれば俎上にあげて選考する。
 
 そして技術部門だ。これは将棋の戦法や上達法などの解説書。もちろん、「駒の動かし方」のような初心者向けから、「矢倉5三銀右急戦」のようなホントに将棋ファンの中でも特定の人しか相手にしないようなマニアック且つ上級者向けのものまで、選考する。
 
 平成元年の第1回も3部門だが、その時は「観戦記」、「雑誌」、「特別賞」。当時はネットがなく、媒体は雑誌中心だったのだ。全国発売の将棋雑誌が4誌も5誌も出ていて、キオスクには必ず将棋新聞が売っていた。この体制が第4回まで続く。
 これ以降、部門はときおり変わる。ただ、「観戦記」だけは一貫してある。賞を創設した趣旨が、「優れた観戦記者を育てる」ことだからだ。「特別賞」も常設からはずれたが、これまでに何度も設けられている。それだけ将棋関係の本が、カテゴライズしにくいのだ。なにか部門に入れられないものが出ると、「じゃあ特別賞に」となる。直近では第30回、山本一成さんの『人工知能はどのようにして「名人」を超えたのか?』や、第29回羽海野チカさんの『3月のライオン』。ついでに書くと、マンガは毎年、どう扱おうか議論になる。
 
 最終選考委員は、棋士を1人含めてだいたい3人から5人くらい。作家や観戦記者、評論家といったところ。ただ、棋士を含めない年もある。技術書でも、その内容の完成度ではなく、書籍としての面白さを選考基準にしているので特段問題はない。むしろペンクラブの技術部門は、あまりにガチガチの内容だと選ばれない傾向がある。
 
 賞金は破格の安さだ。出版社の文芸賞とちがって、賞というカンムリを付けてヒット商品に仕立て上げる「ビジネス」ではないので、これは仕方のないところ。ぼく自身、出版社系でない文学賞をいくつか獲っているが、賞金はないも同然だった。賞の企画を起こし、選考などの手間をかけ、表彰する。それをしていただけるだけで、ありがたいと感謝している。感謝と同時に、表彰式のときに、「この人たちって、なんでこんなことしてるんだろ?」と思ってしまう。
 まぁそんなこと考えるぼくも、将棋ペンクラブ大賞授賞式では、逆に受賞者から思われてるのかもしれない。「この幹事、なにを好きこのんで手弁当で動き回っているのだろう」、と。
 
 以上、将棋界の賞の1つである『将棋ペンクラブ大賞』について、さらっとだが書いてみた。過去32回の受賞作は、将棋ペンクラブのホームページに載っている。あとWikipediaにも出ている。気になる方は、そちらに。
 
 将棋ペンクラブのホームページ



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曠野すぐり
書き物が好きな人間なので、リアクションはどれも捻ったお礼文ですが、本心は素直にうれしいです。具体的に頂き物がある「サポート」だけは真面目に書こうと思いましたが、すみません、やはり捻ってあります。でも本心は、心から感謝しています。