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(5)『さくら』より重みを感じる『はやぶさ』

(今はなくなってしまった東京駅12・13番線ホームの、夕方から深夜にかけての風景を綴った連載)
 
 
 
 『はやぶさ』もまた、入線時はヘッドマークが見えない。EF65の反対側に付けられているからだ。
 
 重い響き、そして振動。ゆっくりとホームに入ってくる。ブルートレインは機動車と客車を合わせて15輌。首都圏を走る黄、緑、青、だいだいの通勤電車は10輌なので、その長さだけでもすごい威圧感があった。
 
 また、客車側面の行先表示が「西鹿児島」(現在の鹿児島中央駅)だ。『さくら』の終点「長崎」も遠いが、やはり鹿児島は格別に遠い印象を受ける。この列車がおよそ1日弱かけてあの最果ての南国まで行くのかと思うと、子どもとはいえ畏怖の感情に支配された。もっとも、人ではなく鉄のかたまりだが。

東京駅はやぶさ

 
 『はやぶさ』もまた、明るい時間帯に発つ列車である。東京発が16時45分。冬至近くの曇った日であれば闇に包まれるが、それ以外の時期は陽に晒されている。子どもにとっても、撮りに行きやすい時間だ。だから『はやぶさ』はよく見たし、撮りもした。
 

東京駅はやぶさ2

 
 「西鹿児島」行きの表示を探したが、なかった。あれほどたくさん撮ったはずなのに。
 この「東京」行きはどこで撮ったのだろう。この表示を西鹿児島や熊本、博多などで見て、東京への思いを馳せた人も多かったにちがいない。「あぁ、これにポンと乗ったら翌日東京に着いてるんだなぁ」、などと。もっともそれには、3万円ほどの金が要るが。40年ほど前の3万円は、かなりの価値だった。
 
(6)に続く
 
 
※連載終了時には電子書籍にしてしまうので、記事は削除します。コメントをいただいた場合も一緒に削除されますので、ご了承ください。

書き物が好きな人間なので、リアクションはどれも捻ったお礼文ですが、本心は素直にうれしいです。具体的に頂き物がある「サポート」だけは真面目に書こうと思いましたが、すみません、やはり捻ってあります。でも本心は、心から感謝しています。