(6)走りまくる少年たち
(今はなくなってしまった東京駅12・13番線ホームの、夕方から深夜にかけての風景を綴った連載)
『はやぶさ』に続いて、今度は『みずほ』。30分の間に3本のブルートレインが発車する東京駅12・13番線ホームには、優雅な中にも気ぜわしさが漂う。
気ぜわしさを演出するのは、鉄道少年たちだ。列車で見栄えがするのは、主に先頭と最後部。見どころが中間にあれば楽だが、残念ながら前後なのだ。JRの車輛は1輌20メートル。だから機動車合わせて15輌のブルートレインは、前後見るためには300メートルの移動を強いられる。だから少年たちは駆けるのだ。
ブルートレインを追う鉄道少年たちは、正直、少年野球なんかよりよっぽど体を動かしていた。野球はプレイ中に絶えず動く競技ではないし、試合は9人なので補欠になればベンチでじっとしている。ところが鉄道写真はほとんど走りっぱなしだ。実際、東京駅などまだ楽な方なのだ。上野など、被写体となる列車がバラバラな場所に現れる。地上ホームと地下ホームは離れているし、また、くし型ホームが多い。くし型ホームとはその名のとおりの形のホームで、髪を梳かす櫛を連想してもらえばいい。その隙間部分に列車が入るのだ。後部の写真を撮るには、ホームを歩いて(走って)いかなければならない。
『みずほ』も、陽の高い時分に現れ、去っていく列車のイメージがある。17時発なのだ。『はやぶさ』同様、写真は西日に包まれている。
『さくら』のヘッドマークは花の桜をあしらったもの。『はやぶさ』は鳥の隼がモチーフ。対し、この『みずほ』はこれといったイメージをわかせないもの。また行先も長崎・熊本で、他のブルートレインと重なっている。子ども心に、なんとなく中途半端な感じの1本に思えた。こういう、ある意味「削ったとしても問題ない」ように思える列車が存在できたくらい、当時は需要があったのだろう。
この『みずほ』が東京駅を出発し、ひとまずこのホームが落ち着く。
(7)に続く。
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書き物が好きな人間なので、リアクションはどれも捻ったお礼文ですが、本心は素直にうれしいです。具体的に頂き物がある「サポート」だけは真面目に書こうと思いましたが、すみません、やはり捻ってあります。でも本心は、心から感謝しています。