「他サポは黙れ」の是非 2/3
前回に引き続き「他サポは黙れ」と言われてしまう原因を考えていきます。
※第1回
「他サポは黙れ」と言われてしまう原因を調べてみた(続き)
第1回では「内集団バイアス」をピックアップして中途半端に終わってしまいましたが、今回は上記を含めて3つのバイアスを取り上げます。
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①内集団バイアス
②外集団同質性バイアス
③確証バイアス**
※繰り返しになりますが、私は心理学者ではありません。今回の記事もあくまで参考程度に聞き流していただければ幸いです。
あと、もし間違っている箇所があればご指摘ください。
①内集団バイアス(前回の続き)
内集団バイアスについて更に調べてみたところ、以下の記事を見つけました。とても面白かったので、興味のある方は是非ご覧ください。
この記事の中で本件と関係していそうな箇所を見つけました。以下に抜粋します。
ヘンリー・タジフェルは、自分と自分の所属集団を同一化し、誇りや恥ずかしさなどの感情的意味合いが加わると、集団意識が「社会的アイデンティティ」と呼ばれるものに高められると唱えた。
こうなると、自分の所属集団を他の集団と比べたときの相対的な優劣が、自分自身の優越感や劣等感に直結しやすくなる。この社会的アイデンティティにとらわれると、人はさまざまな極端な行動に走りかねない。
※社会的アイデンティティ
「社会的アイデンティティ」とは、自分がどのような社会集団に所属しているのかという自己認識のことです。「自分がどういった社会的なカテゴリーに所属しているのか」という自分の考えのことです。
話は変わりますが、皆さんは「自分が応援するクラブ」や「選手」について誰かに褒められると無性に嬉しくなることってありませんか?私自身は雑誌やネットニュースに掲載されているマッチレビューで推しの選手が絶賛されると自分のことのように嬉しい気持ちになります笑
我々は一般的に己自身や他者を認識する際に「どの集団に所属するか」を意識するものです。
例えば以前に記事で取り上げた槙野智章選手ですが、単に「槙野智章」という一個人として捉えていることはないでしょう。「浦和レッズの選手」とか「日本代表」とか「サッカー選手」とか、何かしらのグループと紐づけて選手本人を認識しているはずです。
それは我々も例外ではありません。私で言うなら「川崎フロンターレの一員(正確にはサポーター)」とか「○○株式会社」とか「××家」といった"特定の集団に属する存在"として己を認識しています。
つまり、自分自身のアイデンティティ(ざっくり言うと「私という存在そのもの」)と「所属するグループ」は密接に繋がっているのです。
そして「所属するグループ」や「そこに属するメンバー」の評価はそのまま自分自身に直結します(といっても、実際に評価されるというのではなく「評価を受けた」と錯覚するにすぎませんが)。
つまり、グループ自体やメンバーが褒められると"そのグループに密接に繋がっている自分自身"も「褒められた」と感じ、反対に貶されると「貶された」と感じてしまうわけです。
そう考えると、クラブ自体や選手・監督が批判されたことに対して”それらと直接的には無関係のサポーター”が「他サポは黙れ」と怒るのも納得がいきます。彼らにとっては決して他人事ではないのです。
②外集団同質性バイアス
突然ですが、皆さんは他クラブのサポーターに対してどんな印象を持っていますか?
ちなみに、川崎サポの私が今までに実生活やSNS上で言われたことのある「川崎サポの印象」は以下の通りです。
・おとなしい
・陰湿
・タイトルを取ってから調子に乗っている
陰湿なのかどうかは分かりかねますが、"おとなしい"というイメージは「言われてみれば確かにそうかな」と思います。YouTubeにアップしている動画にも「緩い」ってコメント来るし(ただ、ムカつくので削除しています笑)
では「川崎サポは全員おとなしい」かというと、そうではありません。本当にそうであれば熊谷で大宮サポーターと喧嘩を起こさないはずだし、ここ数年は敗戦後に野次やブーイングや飛ぶことも珍しくなくなりました。
皆さんが抱いた印象についてもそうです。そのクラブのサポーター全員が貴方のイメージに当てはまるとは限らないですよね?
一人ひとりの素行や人格を隈なく調べ上げた上で主張するなら話は別ですが、数千人ないし数万人もいるサポーターを全て調査するのはまず困難です。それに、そもそも人間って「おとなしい」とか「陰湿」といったように一括りにできるほど単純な生き物なのでしょうか?
いろんな性格の人たちがいるはずなのに、なぜステレオタイプ化されてしまうのかーー私は「外集団同質性バイアス」というバイアスが働いているからではないかと考えます。
これは自分が所属していない集団(外集団)に対して、自分が所属する内集団よりもステレオタイプ化された単純かつ均質な認識をしてしまう現象です。
たとえば「XX県民は冷たい」だとか「YY国民は気難しい」などですが、容姿などの外見的な特徴に対する認識の中にもこの現象が見られる場合があります。
推測ですが、「他サポは黙れ」と言う人たちは「他サポは何も理解していない」と考えているのではないでしょうか。私が調べた限りでも(良くも悪くも)「他サポ=自分が応援するクラブ以外のことは理解に乏しい」と認識していると思わせる呟きが多く見受けられました。
※一部加工しています
③確証バイアス
「何も分かっていない他サポは黙れ」的な呟きを投稿する背景としては、やはり他サポの中に無知であったり理解力の足りない人間が少なからず存在していて、その人たちが好き勝手にツイートしている様子を目撃してしまったのかなーと察します。そう考えるとお怒りはごもっともでしょう。
ただ、前項と少し被りますが、他サポだからといって「自分が好きなクラブ以外のことを理解していない」とは限りません。日頃から新聞やネットニュースなどで情報収集している人もいるでしょうし、他クラブの応援スタイルや選手補強の在り方などを尊重している人間もいるはずです。
横断幕掲出禁止の統一ルールに対して浦和が反対を表明した件についてもそうでした。同情的なリプライを寄せている他サポがいたにもかかわらず、「なぜかマリノスサポが口を挟んでいる」とか「他サポがやかましい」と呟いていた浦和サポがちらほら見受けられました。
※本当はそのスクショを貼りたいのですが、浦和サポを過度に刺激することに繋がりかねないし、特定のアカウントを晒すことにもなり得るので自粛します。
全員が同じことを言っているわけではないのにもかかわらず、あたかも他サポが批判的なことを書いていると捉えれている人が現れたのは何故だったのか。
これは推察ですが、「確証バイアス」というものが働いたのかな思いました。
確証バイアスとは認知バイアスの一つで、自分にとって都合の良い情報ばかりを集めてしまう性質である。
例えば、「A型の人は几帳面だ」という先入観があると、10人中3人が几帳面だったとしても3人の几帳面な人に意識が行ってしまう。また、残りの7人については「A型なのに几帳面じゃないのは、めずらしい」と感じてしまう。
つまり、他サポの中にも理解力のある人はいるかもしれないし、そういった人を見ているかもしれないのに「本当に何も理解していない人間」にばかり注目してしまっているのではないか?ということです。
(こう書くと「お前もこの記事書く時、自分に都合の良い記事やツイートばかり集めてたんだろ!」とか言われそう・・・)
まとめ
構成の組み立て方をかなりミスっているような気がしてなりませんが、ここでまとめを。
以上のことから、「他サポは黙れ」と言われてしまう原因は、発言者自身が多かれ少なかれ以下の通りに認識しているからではないかと考えます。
**①程度の差はあれど、他サポそのものに対して排他的 →”自分と同じクラブのサポーター”が言うのと”他サポ”が言うのとでは違う
→意見の内容以前に"他サポが発言すること自体”が気に入らない
②他サポからの批判や苦言について「自分自身に向けて言われている」と感じてしまっている
③「他サポは何も理解していない」と見なしている
→"本当に何も理解できていない他サポ"にばかり注目しがちで、そうでない人たちの存在を軽視している**
ここで一つ申し上げたいのですが、私自身は「他サポは黙れ」という発言について絶対に間違っているとは考えていません。
事実、SNSを利用していると「無関係なはずなのに何故か文句を言ってくる人」や「被害を受けたわけでないのに殊更に非難してくる人」って少なからずいますからね。怒りたくなる気持ちも理解できます。
しかし、他方で安易にそれを言い放つのも良くないと考えています。
言うまでもなさそうですが、他サポ全員が有意義な意見を出さないとは限りません。
内集団バイアスが働いていない分、忌憚のない意見が出てくる可能性はありますし、「周りからどう思われているか」を知ることで新しい発見を得ることも十分に起こり得ると私は考えます。
振り返ると、「フロンターレの応援は緩い」とか「声が小さい」ってのも、確かに殆ど想像がつかなかったかなぁ。個人的には問題ないと重いっていましたが、「そういう風に見る人もいるのか」と思いました。まぁ、正直ムカつくけど笑
※もちろん他サポ自身がバイアスに掛かっていることも十分にあり得るので、鵜呑みにするのは避けるべきです
それにもかかわらず「他サポだから」という理由で全てを排除してしまうのは、なんだか勿体なくないですか?「他サポ」と一括りにせず、投稿の内容を十分に確認した上で賛同ないし反論をする方が良いのではないでしょうか。
ーーと、今回も長々と書いてきましたが、ここで最後に1つ疑問が。
「じゃあ、他クラブのことに口出しするのは間違っちゃいないのか?」
かなり大事な話ですね。他クラブのことをとやかく言う人たちがいなければ「他サポは黙れ」だなんて言う人が現れることもないわけですから。これについても言及しなければならないでしょう。
ただ、残念ながらこれ以上書く体力は残されていません。仕事終わりに累計5000字も書くとは、暇つぶしにしては頑張りすぎました。今回はここまでです。どうもすみません笑
というわけで、次回は「我々は"応援しているところ以外のクラブ"のことを語ってはいけないのか」について書いていきます。