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世にも珍しい円形の組織体制をつくりあげたら、今までできなかった事業が誕生した

組織と聞いたときに、もしくは、組織図を書いてくださいと言われた時に、多くの人の頭に浮かぶもの、それはピラミッド型のものだと思います。

トップダウン。上位下達。この言葉が手放しで称賛されなくなった時代を生きている私たちですが、いまだに多くの企業がこの形を採用しています。それは、この形のメリットを最大限活用するためでしょう。

意思決定の責任を明確にすることで、企業の方向性を一つにまとめやすくなる。縦割りにすることで、それぞれの専門性に特化できる。上下関係をはっきりとさせることで、新人教育の時間と質を確保できる。

伝統的に築き上げてきた組織体制というものには、十分なメリットと理由があります。そして、それを経験してきた企業ほど、この体制を変革することには消極的になるものです。

それが、90年以上続いた企業ならその怖さ、社内からの不安、浸透させる難しさは、想像を絶するものに違いありません。

そんな、いくつもの壁を乗り越えて、ピラミッド型の組織体制を変更された会社が、九州は熊本にあります。それが、1929年創業の西田精麦株式会社です。

今回は、西田精麦の中でも比較的新しい食品部門の吉田さん、大久保さん、鋤先さんにお話を伺いました。



麦一筋で歩んできた90余年

西田精麦が創業されたのは、1929年10月。熊本県八代に精麦の会社として西田清氏によってスタートしました。

その頃から、変わらずずっと精麦一筋として歩みながらも、すこしずつ成長と変革を繰り返してきました。創業当時は、大麦を加工した肥料の販売を中心としていましたが、そこから、徐々に、醸造用の精麦事業の開始、九州を中心に幅広い地域からの原料調達、工場全体の効率化の推進、食品事業への拡大、保管用の大規模サイロの建設。

着実に、確実に、精麦の技術とその精麦を広く届けるための努力と工夫を積み重ねてきた90余年が、現在の西田精麦をつくりあげています。

まさに、堅実に一歩ずつ歩み続けてきた精麦一筋の会社と言えます。


役職の撤廃、円の組織図?!

そんな会社に異変が起きたのは、2019年でした。4代目社長である西田啓吾氏の声かけに賛同した15人ほどのグループで、半年ほどの議論を通して、新しい組織図が誕生しました。

それまでの西田精麦は、ピラミッド型の上下関係がはっきりとした会社でしたが、採用でも苦労をし続けていたそうです。そんな社内の空気を変化させようと歩み続けてきた先に、たどり着いたのが、円形の組織図でした。

西田精麦の円形の組織図

こちらの組織図を見て分かる通り、上下ではなく横のつながり、それも緩く重なるようなつながりが重視されています。そして、これを反映するために、役職が廃止されました。

その結果、社内では、社長も含めてさん付けで呼び合う文化が浸透するようになりました。これによって、社歴や経験、知識があってもなくても、フラットな関係で議論できる社風が醸成されていきました。

そして、その中から、食品部門に新しい事業が誕生しました。西田精麦の歴史の中でも、画期的な挑戦となる商品です。


精麦の技術を食卓まで届ける

西田精麦の食品部門は、これまでナショナルブランドからスタートし、そこから、OEMやプライベートブランドにも力を入れていきました。

たとえば、2022年5月に機能性表示食品の認証を取得した「黄金のもち麦」という商品があります。これは、水溶性の食物繊維であるβ-グルカンが含まれており、食後の血糖値の上昇をおだやかにする機能が認められています。

そのほかにも、九州産の大麦と国産の黒糖蜜・米油と、国産100%にこだわった「九州大麦グラノーラ」や20年間熊本県の学校給食に採用されていた「毎日健康ぷちまる君」などなど。


九州産の黄金のもち麦


九州大麦グラノーラ

国内、海外両方からの豊富な原料供給と、自社サイロによる保管能力をバックボーンにしながら、精麦の技術の高さによって、多種多様な商品を展開してきました。

しかし、西田精麦にとって、1つだけ、まだたどり着けていない場所がありました。それが、消費者に直接届けることです。

この消費者に直接届ける、食卓へ届けるへの挑戦がいままさに進行中です。それが、1年前にスタートした、オーダーメイドのグラノーラ&ミューズリー通販専門店、「Lively Muesli!(ライブリーミューズリー)」です。


オーダーメイドのグラノーラ

このLively Museli!というサービスは、ホームページに訪れるとまず「1分間グラノーラ診断」を受けることができます。

そこで、6個の質問に答えることで、あなた好みのグラノーラを選んでもらえます。そこで提案されたグラノーラを選ぶだけでなく、自分好みのグラノーラをベース食材、サブ、トッピングを選ぶことで、作ることもできます。

グラノーラの素材となるシリアルの一例

このサービスによって、西田精麦は消費者と直接つながる機会を生み出すことができるようになりました。それによって、消費者の声をより身近に聞くことができ、より良い製品作りに活かせると考えているそうです。

さらに、西田精麦の挑戦はここで止まることなく、シリアルバーなど新しい商品開発も進められているようです。


全員が挑戦者、全員が責任者

トップダウンの歴史ある老舗企業が、90年以上かけて築き上げてきたものを前に、恐れることなく新しい組織体制への変革を進めました。それは、円形の組織図、役職の廃止という世にも珍しい組織変革でした。

それは、きっと社内の方達からしたら大変革であり、激震でもあったはずです。しかし、その激震を乗り越えた西田精麦はいま新しい挑戦を次々と進めています。

それは全員が挑戦者、全員が責任者。そんな気概に溢れた企業の姿とも言えるます。


中小企業が変われば、日本が変わる。その思いをもとに、今まさに変わろうとしている、新しい挑戦に取り組んでいる、チャレンジしている中小企業をご紹介しました。

西田精麦株式会社の組織変革は、老舗企業にもできるんだという勇気を与えてくれるものだと思います。

それでは、次回のnoteもお楽しみに。