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成績が良い生徒ほどテストの点数を正確に予測できる
以前スゴ論では、私たちが自信過剰になってしまう要因の一つとして、メタ認知の欠如を紹介しました。例えば、サッカーの初心者は自分の実力の程度をうまくメタ認知できていないので、中級者や上級者と比較すると自分の実力を過信してしまう、というお話でしたね。この現象を総称してダニング・クルーガー効果と呼びました。
以前紹介した論文では、実験を通してダニング・クルーガー効果を検証していましたが、実際の教室の中でこうした現象は本当に起きているのでしょうか?実際の教育現場で観察を行った研究を紹介します。
結論
成績が良い生徒ほど、継続してテストの点数を正確に予測できる傾向が見られた。
実験方法
*読みやすさのため、内容を要約しています。
アメリカのとある大学にて心理学の基礎コースを履修している学部生99人を対象に、一学期を通して以下の研究を行った。
学期内で行われた3つのテスト(中間テスト2つ・期末テスト1つ)ごとに、
①テスト直前に点数を予測する
②テスト直後に点数を予測する
ことを各生徒に行ってもらった。
予測されたそれぞれの点数は、その都度回収された。
各テスト終了後、採点が行われ、生徒を成績順に5グループに分け、各グループの予測の正確さが比較された。
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結果:成績が高いグループの生徒ほど、より正確な予測をする傾向が見られた。さらに、成績が低いグループの生徒ほど、実際の点数より高い予測をする傾向が見られた。
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エビデンスレベル:観察研究
編集後記
研究室内での実験の結果が現場で通用するかどうかの確認は非常に重要なので、こうした研究は非常に貴重です。実際の論文には各グループごとの予測の変遷などに関しても分析を行っているので、関心のある方は是非読んでみてください。グラフを見てみると、総じて多くの生徒が自分の点数を多く見積もりがちな傾向がわかりますね。自分の実力を正確に見積もることの難しさを感じさせられます。
文責:山根 寛
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過去記事のまとめはこちら
Hacker, D. J., Bol, L., Horgan, D. D., & Rakow, E. A. (2000). Test prediction and performance in a classroom context. Journal of Educational Psychology, 92(1), 160–170. https://doi.org/10.1037/0022-0663.92.1.160