見出し画像

モチベーションを引き出すフィードバックの出し方とは?

目の前の人が失敗してしまったとき、どのように声をかけてあげると次のステップにつながるのでしょうか?逆に成功した場合は?失敗した場合は適度に励まし、成功した場合は油断しないように適度に褒めてあげたいものですが、ここでいう「適度」とは具体的に何を意味するのか、なかなか難しいですよね。今回は100人の大学生を対象とした学術的実験を通して、成果向上やモチベーション向上につながるためのフィードバック方法を研究した論文(Brickman et al、 1976) を紹介します。

キーテーマ

フィードバック・成果向上・モチベーション・レジリエンス・実験

主題・結論

相手の成功体験に対し、周りがどのようなフィードバックをしてあげると成果向上、およびモチベーション向上につながるのか? ​

①成功体験と今後相手が取り組んでいく課題における成功との相関関係性を強調することで、相手のその後のパフォーマンスを伸ばすことができる。
例:「君みたいにパスがうまければ、次のフリーキックの練習もきっとすんなりいくよ。ボールタッチのセンスがあるからね!」
②一方、相手が失敗してしまった場合はその失敗と今後の課題における成功とは相関関係が弱いということを強調することでモチベーションを担保し、成果向上につなげることができる。
例:「1限の社会のテストはあんまりうまくいかなかったみたいだけれど、終わったことは終わったこと。次の物理のテストは得意科目なんだから、切り替えていこう!」
③さらに、上記1、 2の傾向は今後のタスクに対する自信が高い相手に対してより顕著に現れることがわかった。

実験デザイン

*読みやすさを考慮して、主要テーマに関連する要素のみを抜粋しています!

96人の大学生を対象に、合計3つの類似したタスク(練習タスク二つ・本番タスク一つ)を順番にこなしていく実験を行う。
指示の出し方により、以下の被験者の認識を操作する。

① 練習タスクの出来の良し悪し
→本番タスクをもともと自分がどれぐらい得意なのか、という期待値を操作する
② 二つの練習タスクがどれぐらい本番タスクの成績と直結するのか、というタスク間の関連性

結果、練習タスクでよい成績を伝えられ、かつ練習タスクと本番タスクの関連性を強調された学生が最も良い成績を収めた。
また、練習タスクで悪い成績を伝えられたとしても、練習タスクと本番タスクが無関係であると伝えられた学生も比較的高い成績を収めることができた。
さらに、上記の効果の程度は生徒の操作された期待値によって変化することがわかった。もともと最後のタスクに対してある程度の自信を持たされた学生の方が上記のフィードバック効果が顕著だったのだ。

20220125_モチベーションを引き出すフィードバックの出し方は? (1)

まとめ

人にフィードバックを与える場合は、「よかった」・「悪かった」だけではなく、この成功(もしくは失敗)体験が次のタスクとの達成とどれぐらい関連性が強いのかということを状況に応じて伝え分けることでその後のモチベーション・パフォーマンスを担保することができる。
前提として、生徒に「自分はできる」という自信を持ってもらうことで、上記のフィードバック効果をより高めることができる。

留意点

この実験は大学生を対象に行ったものであり、子供全般・全年齢の被験者を対象とした実験ではありません。
あくまで実験のために用意された単純タスクを題材とした実験であり、より複雑な要素がかみ合ったゴールに向けたフィードバックに一般化できるかは本論文にて触れられておりません。

エビデンスレベル:観察研究

編集後記

人によっては当たり前のようにやっているかもしれないフィードバックのテクニックを科学的な実験で扱っている点が興味深いと思いました。フィードバックの効果を最大限に発揮するためには、大前提として生徒の自信が必要となるという点も興味深いですね。

文責:山根 寛

スゴ論では週に2回、教育に関する「スゴい論文」をnoteにて紹介しています。定期的に講読したい方はこちらのnoteアカウントか、Facebookページのフォローをお願いいたします。
https://www.facebook.com/sugoron/posts/109100545060178

Brickman, P., Linsenmeier, J. A., & McCareins, A. G. (1976). Performance enhancement by relevant success and irrelevant failure. Journal of Personality and Social Psychology, 33(2), 149–160. https://doi.org/10.1037/0022-3514.33.2.149

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?