HiGH&LOW THE戦国(ザ戦)の各主従関係のネタバレ感想

こんにちは。杉山です。今回、フォロワーさんに誘って頂き、舞台『HiGH&LOW THE戦国(通称、ザ戦)』を観に行き、各主従関係に狂ってしまったので記憶が薄れる前に感想を書こうと思います。
一度しか鑑賞していない為、セリフや登場人物の行動に間違いがある可能性がありますがご容赦下さい。
またネタバレもしていますので、鑑賞前の方はお気を付け下さい。


ストーリー

ハイローシリーズお馴染みのナレーションから始まった今作。SWORD地区ならぬ5つの国が群雄割拠し、争わなくて良いところを敵に唆されて国同士で戦い、最終的にはいがみ合っていた国同士が共闘すると言う筋書き。ハイローの鉄板のストーリーですが、出て来る登場人物毎によってキャラクター同士の関係性や戦い方が違うので飽きないですね。今回は戦国時代と言うこともあり、主従関係にフォーカスされていたと思います。

舞台の演出

私は普段観劇しないので素人意見になりますが、現代のハイローでは拳で戦っていたのが刀に変わり、臨場感ある殺陣が圧巻だった。これはまさに戦国時代ならではの戦い方ですよね。演出面に関してはステージだけではなく、客席から舞台に登壇したり、舞台から客席を通ってはけたりと観客のエリアにも役者の方々が入ったことでステージだけでなく、観客も戦国の舞台に入り込んだような没入感があった。

またハイローと言えば、本編を盛り上げる主題歌や挿入歌が印象的だが、今作では生歌、ダンスでのパフォーマンスで魅せてくれ、映像作品とはまた違い、テーマソングをその場で歌唱してくれるのはまさに舞台の醍醐味だと思った。曲もアップテンポの盛り上がる曲調だけでなく、(俗な言い方になってしまうが)宝塚の舞台で歌われていそうな優雅なしっとりとした雰囲気の曲もあり、宝塚ファンの方々も楽しめたのではないかと勝手に思いました。

黄斬&吏希丸


黄斬は心優しき人間で砂金を盗もうとした民の処遇を慈悲の心から許していたが、その優しさ故に内乱で同胞を殺めてしまったことに対する後悔を抱えていた。更にその後悔、罪悪感は龍に取り憑かれたことで増幅し、自身を責め、悩み苦しむ。その黄斬の姿を見ていたのは幼馴染である吏希丸だ。黄斬が仲間を切ってしまった悲しみ、後悔の念を口にした時、「生きる為には仕方なかった」と彼に言うが、黄斬の悩みが晴れることはない。楓斗が龍から解放されるには己の弱さを克服することだと言っていたが、吏希丸は彼の為にある行動に出る。(ここで白銀が「言葉」によって玄武を龍から解放したのに対し、吏希丸は「行動」で解放しようとした対比が切ない)

吏希丸はわざと縻爛側について、黄斬達と敵対関係になる。吏希丸は本心で寝返ったのではなく、友を龍から解放するためにあえて縻爛側に行き、黄斬に剣を抜かせ自分を切らせる。黄斬は幼馴染の友を切ったことで自分が全てを背負って生きる覚悟を決めることができ、龍から解放される。吏希丸は誰よりも黄斬の横で共に須和国の再建をしたかったと思う。それでも友である黄斬を救う為に自分と敵対し、剣を抜かせ、同胞を殺めてしまった罪悪感ではなく、同胞達の分まで生きること、魂を背負うことを身を持って伝えた。友達を救う為に自身の命を犠牲にした友情が胸を打った。また黄斬が再び剣を抜くことが出来れば、天下を取れると信じたからこそ、彼にもう一度戦う活力を与えたと思う。

一番印象に残った場面は、吏希丸の最期。いつも先を読んで作戦を立てる黄斬に対し、吏希丸が「黄斬の考察もここまで及ばなかったか。初めてお前よりも先を読んだな」と笑った場面。さすがの黄斬も友の吏希丸が自分の為に命を賭して救おうとした行動は読めなかった。その友情に涙すると同時にとても辛い。吏希丸は亡くなったが、黄斬は彼の意志を継ぎ、須和国を緑の国へと再建させると願っている。

個人的に吏希丸は、モンテ・クリスト伯(巌窟王)のフランツを思い出した。どちらも自分の命よりも、友を守る為に戦った男……。

玄武&白銀


個人的に一番好きな主従関係だった。鬼神と呼ばれ、人を寄せ付けない暴君のような態度の玄武とその玄武の戦う姿に憧れている白銀。しかし愛を知らずに生きて来た玄武に唯一の「期待」と言う情を寄せていた影森が殺され、玄武は須和国(実際は縻爛の仕業)に攻撃を仕掛ける。あまつさえ尊武国の社に封印されていた龍が弦流に破壊され、龍に取り憑かれてしまう。益々自暴自棄になりこのまま暴走すれば破滅の道しかない玄武の姿を見た白銀は彼に従う訳ではなく、憧れである彼を叱咤した場面が印象に残った。

特に印象に残ったのは「玄武殿は弱すぎる!!」と言う白銀の言葉。誰がどう見ても玄武は武力に関しては作中屈指の強者である。その玄武に対し、「弱い」ではなく、「弱すぎる」と言う言葉をかけ、更に「もっと仲間を信じて下さい!」と激励をする。今までの玄武を慕っている白銀ではただ彼に付き従うだけだっただろう。しかし白銀は彼の強さが諸刃の剣であることを知っている。彼が愛を知らず、孤独に戦っている。仲間を信じられず己しか頼ることが出来ない。自分の力だけでなく、他人を頼ること、信じることもまた武力とは違った強さであり、他人を頼ることが出来ない玄武の弱点でもある。それを白銀は指摘した。
白銀は玄武に憧憬の念を抱いているがただ盲目的に彼の行動を支持はしない。憧れとはどうしても相手を好意的に見ていないと抱かない感情であると思う。しかし彼は玄武を憧れる気持ち以上、玄武に正しい道を歩んでほしい、もっと言うと玄武に死んでほしくないと思い、憧れよりも彼を案ずる「愛情」が上回って叱咤激励したのだと思う。その白銀の言葉を受けて、玄武は自身の力で龍を振り払った。

冒頭で玄武を庇った白銀に対し何もしなかった(むしろ後で殴った)玄武が白銀を助けに行き、彼を庇いながら戦った場面が玄武の心情の変化が表れていてとても良かった(そして玄武が助けに来てくれた時の白銀の嬉しそうな顔!)
玄武には影森以外にも愛情を注いでくれる相手がいることに気が付けたと思う。白銀を、仲間を信頼し、「お前達に期待する」と今度は玄武が他人に愛情を与える。彼はもっともっと強くなれると思う。

またこれは構成上たまたまかもしれないが、チームソング?のINFERNOのサビパートで、ボーカル(玄武)の邪魔はせずにボーカルを引き立てるようにラップ(白銀)を刻む構図も玄武と白銀の関係が表れていて好き。

湧水&弦流


弦流は主である湧水に恋心を抱いているが、主君以前に男同士であるが故にその想いを胸の中にしまっている。しかしその秘めた恋心を縻爛に利用されてしまう。弦流は龍の力で性別を超越した世界になって欲しいと願っており、今生で湧水と結ばれることはないと諦めているところが胸が痛くなる。

一方で湧水の方は無理をして君主として立ち振る舞っており、裏では疲弊している。皆の前では国を治める為に冷酷無比と呼ばれようが気丈な態度を取っているが、友人である弦流の前では自然な姿見せており、彼には繕っていないありのままの姿を見せている。また今後の乃伎国にとってどう行動するのが一番良いのか、その重大な判断に迷った時に弦流に「友」として助言をこう。弦流にとっては湧水は愛している存在、もし許されるのなら結ばれたいと願っている。そんな彼に湧水は「友」と言葉を掛けた場面は叶わぬ恋を表していて切なかった。友には友情はあるが、情愛は生まれない。更に湧水は弦流の好意を(おそらく無自覚で?)で頼り、「依存している」と言う。この言葉を聞いて弦流はどう思ったのだろう。間違いなく湧水にとって弦流は他者とは違う、「特別な存在」だ。しかし同性であるが故に情愛が向かれることはないだろう。だからこそ、弦流は縻爛の甘言に乗ってしまったのかもしれない。

その後縻爛と通じていたのは弦流だと分かり、弦流は湧水の手、刀で切られ、命を絶つことを願う(むしろそうしたいが為に縻爛の手に乗ったのかもしれない)しかしここで弦流は湧水を足止めするだけのはずが縻爛勢が湧水を殺害しようとやって来る。ここで弦流は敵を引き付け、湧水を逃がそうとするが湧水が彼を後ろから抱きしめ、「お前にとどめを刺すのは俺だけだ」と言う。これは、=お前を殺すのは俺だけだから、生き残ってまた俺の元に戻って来い、と取れる。この言葉、弦流にとってはこの劣勢の場を何とか乗り切ろうと奮起出来たのではないかと思う(実際に湧水が手をかけるかは別として)

また湧水が弦流を背後から抱きしめた行動、湧水が弦流の愛を少なからず受け入れたからではないかと思う。西洋では挨拶としてハグを交わすこともあるが、日本、特に戦国時代ではやはり特別な、何かしらの情がないとしない。それを自分が愛している男からされたら。湧水に自身の思いを伝え、拒絶や否定されることなく、抱擁されたら弦流にとってはこの上ない幸せだろう。

しかし多勢に無勢。彼は瀕死となり、最期に湧水の腕の中で息を引き取る。「貴方を愛してしまった」と罪のように言う弦流に対し、湧水は「男と男が見つめ合う時代がきっと来る」と未来に希望を託す。今作は黄斬が別の人生の夢を見ると言う、俗に言うマルチバースと言って平行世界にまた別の自分が存在し、生きていると言う話が出て来る。もしかしたら違う世界では弦流の湧水への恋が成就していたかもしれない、戦国時代でなければ実っていたかもしれないと思うと涙が出て来る。この2人は別の世界で結ばれていることを願う。

◼︎追記◼︎

弦流の「始まる前に終わった恋とはこのことか」と言う言葉の個人的解釈。

弦流は別れ際、湧水に耳打ちされた時にこの言葉を言うが、湧水は弦流に対して情愛はなかったけれど特別な存在だと思っていたと思う。

彼の前だけは自分の弱さを見せたり、ヴィラン側の提案を受けるか否か判断に迷った時に「友」として弦流に意見を求めた。更に弦流に対し、「俺はお前に依存しているな」とはっきりと言う。おそらく湧水にとって唯一自分を曝け出せる友だった。そんな友からの熱の帯びた視線の意味も気が付いていたからこそ、弦流の告白に「分かっていた」と答えた。だけれど、男同士の恋愛が認められない以前に自分は乃伎国の当主でこの国や民を導く必要がある。更に当主の血筋を絶やさない為に子孫を残さないといけない。

湧水は弦流からの愛は受け入れたけれど、同じ感情を弦流に向けることは出来ない。でもそれは「乃伎国の当主」だからであって、「神洲崎湧水」としてならば、弦流に対して彼と同じ愛情が芽生えていたのではないかと思う。でなければ、わざわざ戻って弦流に抱擁しないと思う。少なからず彼に対して好意があったからこそ、その想いを表したのがあの抱擁ではないかと思った(と言うか、好きでもないのに弦流を鼓舞させる為やお情けで抱擁したのなら、あまりにも非情すぎる)
個人的には湧水個人としては弦流の愛を受け入れ、彼にも情愛を向けられる心持はあったけれど、当主として国を治める為に彼の愛を拒んだのではないかと思った。

弦流への耳打ちの言葉は想像するしかないけれど、耳打ちする、人に聞かれたくない、弦流にしか伝えたくない言葉と言うことは「俺もお前を愛したいが、それは出来ない」とか? 個人的に「愛」と言う単語は入っているかなと思う。
だから、「始まる前に終わった恋」

長々と感情のままに文章を綴りましたが、5つの国の内まだ2つの国が出ていないので、是非また続編でハイローの世界をもっと見せて頂きたい。あとは各国同士のやり取り、黄斬、湧水、玄武の3トップのやり取りや部下達の交流も見てみたい!
もし続編が出来たら、また観たいです。その時は引き続き激アツ主従関係をお願いします!!!
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

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