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メール認証を挟むコンバージョンの計測方法を考える


1.メール認証はWeb計測にとって厄介な存在

メール認証の価値

多くのWebサービスでメール認証が使われています。

メール認証は主に本人確認の為に利用され、楽天、Amazon、Netflix、Spotifyのようなサービスで以前から採用されています。また、金融系サービスではmustで実装されています。

同機能は本人性の担保以外にもフィッシング詐欺の被害防止や会員サイトのログイン機能の簡素化にも利用されており、利便性が高い取り仕組みだと思います。

Web計測の生命線であるCookie

ただ、上記の仕組みは「計測」においてオンライン広告担当者を悩ませます。

前提として、多くのオンライン広告はCookieという技術を使って計測しています。

Cookieは訪問したユーザーの行動ログを一時的に保管しておく仕組み

また、このCookieには弱点があります。

その弱点とは①ブラウザ依存、②セッション切れ、③クロスデバイスやクロスプラットフォームでの欠損です(他にも欠点がありますが、本記事では割愛します)。

①ブラウザ依存
Cookieは特定のブラウザ内でしか有効ではないため、異なるブラウザやプラットフォームに移動すると情報が引き継げない。
例:Chromeで登録を始めた後、Safariで続きを行うと状態がリセットされる。

セッション切れ
ユーザーがページを離れて再度戻ってくる、または一定時間が経過すると、Cookieベースのセッションが切れることがある。登録フローで途中で中断した場合、再開時に情報が欠損しやすい。

③クロスデバイスやクロスプラットフォームでの欠損
Cookieはデバイスやプラットフォーム間で共有できないため、例えばPCで始めた登録をスマホで続ける場合、情報が引き継がれず欠損が発生する。

メール認証がCookieの弱点を突いてくる

メール認証は前述したCookieの弱点を全て突いてきます汗。

下記図をベースに説明すると、異なるWebアプリケーション間(例:chromeブラウザ → アプリ → Safariブラウザ)で操作が切り替わる際、Cookieが引き継がれず、オンライン広告計測が途切れてしまいます。

【例】メール認証を挟むためCookieが引き継がれず広告CV計測が脱落するパターン

ブラウザ間ではCookieが共有できないため、認証や計測が一から再構築されます。

つまり、あるカスタマーがオンライン広告がきっかけでサイトに訪問し、メール認証を経て会員登録した場合、クロスブラウザにより広告経由のCVとカウントされない事象が発生します。

Googleアナリティクスの場合、デフォルトチャネルグループ単位では本来Paid Search(検索広告)なのに、Direct(URLの直接入力やブックマークからの流入)とカウントされたりします。

社内実績で見ると本来の広告経由CVの4~5割が他経路CVとカウントされています。

広告経由のCV量が正確に把握できない場合、広告CPAや登録者の質も正確に把握できない状態になってしまいます。

このような状態が続くと、振り返りが適切にできずPDCAを回せず現場業務に支障が出てしまいます…。

よって、オンライン広告担当者はメール認証を挟むことで生まれる計測不良をいかに解決していくのか?を早期に考えなければなりません。

2.広告効果計測ツール|ADEBiSの解決策

クロスブラウザ計測(ユーザーID引継ぎ×タグ計測)

広告の効果計測においてはイルグルム社が提供しているADEBiSのクロスブラウザ計測が最適な解決策を提供してくれています。

同資料の下記P3のA.クロスブラウザ計測の計測(ユーザーID引継ぎ×タグ計測)にも「メール認証が入りクロスブラウザによるcookie分断で広告計測に課題がある場合」と記載があり、問題との合致度が確認できます。

上記のA.クロスブラウザの計測(ユーザー ID引継ぎ × タグ計測)が該当

クロスブラウザ計測(ユーザー ID引継ぎ×タグ計測)のポイント

計測方法のポイントは、Cookieに依存せず、自社側の計測サーバーを活用している点です。左記をベースにユーザーIDの引継ぎと上書きを行い1つのユーザーのアクティビティとして計測します。

同資料のP4 計測概要:A. クロスブラウザ䛾計測(ユーザー ID引継ぎ × タグ計測)

同資料P8に「ユーザーID引継ぎ:計測サイトでユーザー IDの引継ぎ処理を実装」の後続説明資料があります。私個人の見解では安全な情報管理を行い、できるだけ精緻な計測を実現するのであれば、「3.データベースに値を保存する」が良いのかなと思っています。

同資料のP8 設定例:ユーザー ID、広告パラメータ䛾引継ぎ例

ADEBiSを提供しているイルグルム社に話を聞きましたが、クロスブラウザ計測を導入している企業の数は多くないとの事で事例も少ないようです。

3.Web アクセス解析ツール|Googleアナリティクスの解決策

User-IDでデバイス間のユーザー行動を正確に計測する

User-ID」はGoogleが発行するIDではなく、サイトやアプリの運営者側が独自に発行するID(ユーザーごとに割り当てた一意の識別子)を指しています。

異なるデバイスやブラウザ間の行動が統合されるのは、User-IDがユーザー単位で一貫してGoogle Analyticsのサーバーに送信されるからです。

たとえば、スマホでログインして広告をクリックした後、パソコンで再度ログインして購入した場合、同じUser-IDが記録されることで、これらの行動が1つのユーザーのアクティビティとして統合されます。

これはブラウザに保存されるCookieの情報に依存するものではなく、Google Analyticsの計測サーバー側で行動データが紐付けられるためです。

User-ID を生成した後にウェブサイトからユーザー ID を送信する方法
自社で生成したUser-IDをGoogleアナリティクスに送信する方法は下記記事をご参照ください。

4.Google広告の解決策

クロスデバイス コンバージョン

Googleの計測技術「クロスデバイス コンバージョン」は、ユーザーが異なるデバイスやブラウザを使用しても、その行動を追跡するための機能です。

具体的には、あるデバイスで広告をクリックし、別のデバイスや同じデバイス内の異なるブラウザでコンバージョンが発生した場合でも、その一連の流れを計測することが可能です。

ちなみに、Googleが提供するクロスデバイスやクロスブラウザ計測が実現できるのは、Cookie以外のシグナル(信号)も含めて計測サーバー側でデータを統合管理しているからです。

1点留意が必要なのは、計測精度はユーザーのプライバシー設定やブラウザの仕様によって影響を受ける可能性があるということです。

5.Meta広告の解決策

クロスブラウザでもイベントのトラッキングが可能

多くの企業で利用されているMeta広告はクロスブラウザでもイベントのトラッキングは可能です。

(ただし精度はクロスブラウザではない場合と比較すると落ちます)

ポイントはブラウザに付与されるCookie情報以外にも情報を取得しているためです。具体的な内容を下記に記載します。

Click ID
Browser ID
Client IP address
FB Login ID
Device ID(ATTにOpt-inしている場合に限る)

Meta広告の計測でCookie以外に取得している情報

広告クリック時にピクセルを用いて複数の情報を取得してサーバーに保管。
その後コンバージョン時のピクセル経由でも同様の情報を取得し、入口と出口の情報で複合的にマッチングをかけてトラッキングしています。

加えて、App Tracking Transparency (ATT)の施工以降は実マッチングと類推データも活用して管理画面に反映し、計測精度を高めているとのこと。

以上です。
引き続き勉強を続けます。

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