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物の表情を残しながらの修理 シザーケース編

きっかけは親しい方からのご紹介で。

「ずっと使っているシザーケースのストラップが切れてしまい、そこを修理されたい」とのコト。

「もちろんですが、ひとまず画像をお送りいただき、可能か不可能かの判断を」と、

送っていただいた画像を見て、
一目で年季が入っていると分かる表情、これは 可能ではありますが、
実際に現物を見ながらどのように直していくか、いきたいかを話し合わさせてくださいとお伝えし、

後日、
別のこれまた親しい人と一緒にSugiSに寄ってくださった初めましての美容師さん。

良い人達のまわりには必然的に良い人しかいないと常々思っているのですが、やはりその定説通りの素敵な人。

基本的にはお任せいただいての修理内容で、
今後も安心して使っていけるようにというご要望。

そんなシザーケースの修理の話。

愛用されて20年以上となるシザーケース

話をうかがうと20年以上の愛用歴。

20年以上!
なんたる時間の重み、色々な思いや何やら全てが詰まっているとしか思えない。

加えて、友達が作られたモノということでじっくり見させていただく。

キチンと作ってあるシザーケース。

さぁ取りかかろう。


before

限界を超えた繊維構造
折り返し部分にひび割れも
20年以上身体に寄り添って、持ち主に沿う形へと変化した革
カッコ良い
やはり糸はほどけていく所からほどける
ここの隙間はあいていちゃ、よくない
20年以上経てば、負担が掛かる場所は糸もなくなります
作られた方の顔が浮かぶ手縫いでの縫製
マグネットの付け方が面白かった
あぶない箇所=不安要素は直していきます
フロントポケットの許容できない反り返り
前面は油分が抜けきっている状態
この表情をできるだけ残しながら、どう直すか。
難しい修理というよりかは、色々と恐い修理です。

古い革製品は糸をほどくのも慎重にやらないと、糸をほどく時に革も崩れ落ちる(この表現が一番適しているかと)ことが多くあるのです。

after

必要な所は残し、必要のない所はへつる
時間を経て変わった仕事道具としての有用性を含めての再構築
できるだけ、雰囲気を崩さないように
かつ オイルアップはしっかりと
縫うべきところは縫う
きちんと繋ぎなおす
隙間はなくなった
より丈夫に繋ぎなおす
補強の為、見えないところから新しい革を裏張り
裏張りをする=必然的に縫い合わせる
どうしてもな所は新しい革の助けを
金具も付け替えて
これでまだまだ安心です
前から見ると表情は変わりません
ストラップも必要のない金具や革パーツは外して軽量化
元々は長くとってあったストラップも、
今は肩から掛けて使わないとのことで、短く、扱いやすくする
かなり弱っていたストラップは新しい革を総裏張りで
表の革より左右を1mmづつ短くして表からの表情を保つ

これで大丈夫
解体した残りの革でベルトループを製作
飛び出た剣先を少しでも収まりよく、扱いやすく
できうることは全てやって いざ お渡し
喜んでいただけて良かった
写真までいただきました

その後、ご紹介いただいた親しい方からも嬉しい連絡をいただけて、

万事、めでたしめでたし。

初めましてにも関わらず、信頼いただきお任せくださり
ありがとうございました。

このシザーケースを作られた方も20年以上使ってくれて嬉しいだろうなー

僕も精進あるのみ です。


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