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【オススメ本】佐藤賢一『ハテナソンの本ー問いづくりへの旅ー』新評論、2024


はじめに


本書を手に取り、最初に飛び込んでくる問いは、きっとコレだろう。

「ハテナソンって何だろう?」

まずこの問いを読者に抱かせた時点で、著者の勝ちである。というのも、この本の目的は「問いづくり」についと考えてもらうだからである。

ハテナソンについては、まえがき(ⅲページ)にこう書いてある。

「タイトルとした「ハテナソン」という言葉ですが、これは「ハテナ(?)+マラソン」によるもので、問いをつくるマラソンを意味します」

佐藤賢一(2024)

上記の解説を読んでモヤモヤが晴れ、スッキリした方も多いのではないだろうか。この問いと答えの往還をめぐるモヤモヤとスッキリ。これこそが本書が伝えようとする問いの重要性そのものであり、その重要性を喚起するために、敢えてまだ一般的ではない言葉をメインタイトルに置いたのだろうと推察する。

著者紹介


この本の著者は、佐藤賢一氏。京都産業大学生命科学部の教授である。1965年に北海道岩見沢市で生まれたのち、函館、室蘭、札幌の4つのまちを経験。そして、高校在学中に細胞の世界に魅了されたという。生命科学を専門とする。

この略歴からだけでは、やや本書の執筆にどう繋がったのかが分からない。そう、佐藤氏にはもう一つの顔があるのである。それは「クエスチョンデザイナー」。小生も大学コンソーシアム京都の仕事で何度かご一緒したが、いずれもこの肩書きとしての依頼だった記憶がある。

しかし、この言葉も冒頭のハテナソン同様、初めて聞いたという方が多いだろう。その詳細は本書に譲るとして、ここでは、なぜ自然科学の研究者が、いわゆる自然科学の専門書ではなく、普遍的な一般書の執筆に至ったのか、という問いに対する答えだけを書いておきたい。

その答えはまえがきのⅳページに書いてある。少し長いが引用してみよう。

2016年のことです。その年、私は『たった一つを変えるだけークラスも教師も自立する「質問づくり」』という本に出合いました。問いづくりのメソッドである「QFT(Question Formulation
 Technique)」を紹介するこの本は、私の心に深く響きました。言ってみれば、問いづくりがもう力を改めて認識させられた瞬間でした。
このメソッドに感銘を受けた私は、教育や研究、さらにはビジネスの場においても「問いづくり」がいかに重要かを実感し、その普及と発展に尽力することを決意しました。

佐藤賢一(2024)

つまり、「たった一冊の本と出来っただけ」で人生が変わるということです。その象徴がハテナソンという造語やクエスチョンデザイナーという肩書きの創造、何より本書の執筆なのだろう。

それを裏付ける遊びが本書には隠されている。以下の2枚の写真を見比べてみてほしい。


いかがだろうか。色、デザイン、など、レイアウトまるで同一の著者による作品、シリーズものと思わせるかのようなカバーに仕上がっている。出版社も同じ。

これこそが著者の最大のリスペクトであり、自分自身の問いに対する答え(成果)であり、最大の大人の本気の遊びではないだろうか。

ちなみに本書の出版にあたってはクラウドファンディングを活用しておられた。小生もささやかに貢献させてもらった一人だが、これも今から思えば、資金集めではなく、話題づくりだったのでは?と新しい問いが今生まれた次第である笑。

ともあれ、そんな本書が生まれた背景を意識しながら、本書を読むとさらに面白くなると思われる。内容については本書に譲りたい。

(出版社ホームページ)
https://www.shinhyoron.co.jp/978-4-7948-1277-3.html

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