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【オススメ本】片山善博・糸賀雅児『地方自治と図書館』勁草書房、2016

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はじめに

元鳥取県知事・元総務大臣として図書館政策に貢献され地方自治を専門とする片山善博氏(慶応義塾大学法学部教授)と図書館情報学を専門とする慶応義塾大学文学部教授の糸賀雅児氏による共著本。

https://www.keisoshobo.co.jp/book/b253110.htmlhttps://www.keisoshobo.co.jp/book/b253110.html

「地方自治は民主主義の学校」(ブライス)という有名な言葉があるが、その実現のために必要な装置(拠点)こそが図書館であり、タイトルにある通り、まさに「地方自治」と「図書館」の関係性について、それぞれの専門の立場から論が展開される一冊となっている。

目次

目次は以下の通り。

まえがき[片山善博]

第Ⅰ部 図書館は民主主義の砦

第一章 知的立国の基盤としての図書館[片山善博]
 1 知的立国とは
 2 知的立国を支える国民、それを育てる図書館
 3 図書館によるビジネス支援
 4 図書館による支援対象の拡大
 5 図書館と民主主義

第二章 図書館のミッションを考える[片山善博]
 1 図書館の置かれた政治状況
 2 分権の「砦」としての県庁図書室の実践
 3 レファレンスを通じて垣間見えたわが国の知的環境
 4 議会の自立と議会図書室
 5 議員は「対抗軸」を持つべし
 6 民主主義の砦としての図書館
 おわりに

第三章 民主主義社会における図書館[糸賀雅児]
 1 地方自治と図書館
 2 図書館は民主主義社会に不可欠な情報提供機関
 3 「情報公開」における図書館の位置づけ

第Ⅱ部 地方財政と図書館

第四章 講演・図書館と地方自治[片山善博]
 1 住民生活に光をそそぐ交付金
 2 自治体行政の諸相
 3 従来の地方行財政の特徴
 4 自治体行政のバランス回復の試み
 5 図書館行政に光を当てるには

第五章 パネル討論・地方財政と図書館──交付金で図書館整備を
 1 総務省の地域振興、地域活性化に関わる取り組み
 2 ヒューマンキャピタルとソーシャルキャピタル
 3 地方交付税─福岡県小郡市を例に
 4 特別交付税の仕組み
 5 知の地域づくり
 6 自治体予算と図書館
 7 知の基本的財産の拠点──図書館と予算

第六章 光交付金が図書館にもたらしたもの[糸賀雅児]
 1 光交付金の概要
 2 光交付金と図書館予算の比較
 3 光交付金の図書館における活用実績
 4 光交付金が図書館にもたらしたもの

第Ⅲ部 地域の課題解決を支援する図書館と司書

第七章 まちづくりを支える図書館[糸賀雅児]
 1 図書館の「集客力」と「認知度」
 2 中心市街地を活性化した図書館
 3 まちづくりへの図書館の効果
 4 まちづくりを支える図書館の特徴

第八章 「地域の情報拠点」としての課題解決型図書館[糸賀雅児]
 1 新しい図書館モデルの必要性
 2 『市民の図書館』が遺したもの
 3 司書の働きが見えてくるか?
 4 図書館発展の構造を持続できるか?
 5 地域の情報拠点への進化に向けて
 6 「地域の情報拠点」としての課題解決型図書館

第九章 地方自治を担う図書館専門職のあり方[糸賀雅児]
 1 行動する司書
 2 問題の背景─図書館労働市場の変化とキャリアパスの必要性
 3 司書のキャリアデザインの必要性
 4 キャリアパスとしての認定司書制度──「節目」でキャリアをデザインする
 5 イギリスと日本の図書館専門職認定制度
 6 司書の社会的責任

第一〇章 「地方創生」の視点から見た図書館と司書[片山善博]
 1 「地方創生」とその課題
 2 司書の雇用を棄損する図書館の指定管理
 3 「地域の知の拠点」と認定司書への期待

第Ⅳ部 地方自治と図書館政策

終章 対談・地方自治と図書館政策[片山善博・糸賀雅児]

あとがき[糸賀雅児]
(目次ここまで)

私がとりわけ印象に残った言及

私がとりわけ印象に残ったのは下記の言及である。

・【片山】図書館というと、(中略)社会教育とか生涯学習の中枢にとどまらず、自治体行政の拠点になり得る施設。(p.104)。

・【糸賀】「まちづくり」との結びつきは、これからの図書館にとって欠かせない視点であると同時に、逆に自治体のまちづくりにとって「図書館」との結びつきは必須条件である。なぜなら図書館は単なる読書施設ではなく、以下のような特徴を併せ持つ、他に類を見ない公共施設だからである。・施設の床面積あたりの集客力が大きい。・利用者の年齢・年代の幅が広い。・毎日来館する人がいるくらい常連、リピーターが多い。・無料で使え、平日・休日、昼夜を問わず開館している。・司書という専門的職員が利用相談に応じ、ボランティア活動も盛ん。・時間つぶしや趣味・娯楽から研究・興味と知的関心に対応可能。・短時間の立ち寄りから長時間にわたる大罪まで、自分の居場所がある。・カフェ、書店、体育・スポーツ施設、学習塾など民間文化施設とも親和性が高い(p.138-139)。

・【糸賀】図書館というとこれまで「読書の場」のイメージが強く、趣味や教養、娯楽目的で利用される施設と思われがちであった。しかし、これらの記事で図書館利用は、まさに生活や生命に直接関わる情報入手のための利用であって、切実なニーズにもとづいてる。こうした切実なニーズにもとづく利用を促し、地域にあっては身近な窓口でこのニーズに応えうる公共施設が「課題解決型図書館」であり、「地域の情報拠点」なのである(p.162)。

・【片山】行政が持っている情報というのも図書館の機能を通じて公開される、利用されるということに本来なるべき(p.207)。

・【片山】議会もちゃんと図書館機能が要りますよというのが議会図書室の設置が義務付けられた背景(中略)。議員の活動にふさわしい、図書室環境を整備しなければいけない(p.210)。

・【片山】図書館のミッションというものは自立支援(中略)。一人ひとりの住民・国民の、と捉えればすごく視野が開けてきます。左から子供が放課後に行くところがなければ、図書館に来て自分で好きな本を読むというのは、まさに自立支援(中略)。アーティストが図書館にあるいろんな画集とか写真とか資料集を見て、そこからヒントを得るというのも良い(中略)。政治家だったそうなんです。もっと勉強しなくちゃいけない(中略)。

この他にも色々とあるが、重要なのは「民主主義」「課題解決」「知の拠点」「人材育成」「財政」、何より「自立支援」というキーワードであろう。

私も昔から受験勉強に使ったり、今は論文などを取り寄せたり、時には仕事や会議の場と使ったりと、まさに自らの自立のために図書館にはお世話になってきた。

これからもこの図書館の機能を将来世代に残せるよう、地方自治と図書館の関係について考え続けたい。

図書館の自由に関する宣言

追記

リマインドも込めて、1954年に採択(1979年に改訂)された日本図書館協会「図書館の自由に関する宣言」を改めて確認すべく、下記に貼っておきたい。

図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することをもっとも重要な任務とする。
 日本国憲法は主権が国民に存するとの原理にもとづいており、この国民主権の原理を維持し発展させるためには、国民ひとりひとりが思想・意見を自由に発表し交換すること、すなわち表現の自由の保障が不可欠である
 知る自由は、表現の送り手に対して保障されるべき自由と表裏一体をなすものであり、知る自由の保障があってこそ表現の自由は成立する。
 知る自由は、また、思想・良心の自由をはじめとして、いっさいの基本的人権と密接にかかわり、それらの保障を実現するための基礎的な要件である。それは、憲法が示すように、国民の不断の努力によって保持されなければならない。
 すべての国民は、いつでもその必要とする資料を入手し利用する権利を有する。この権利を社会的に保障することは、すなわち知る自由を保障することである。図書館は、まさにこのことに責任を負う機関である。
 図書館は、権力の介入または社会的圧力に左右されることなく、自らの責任にもとづき、図書館間の相互協力をふくむ図書館の総力をあげて、収集した資料と整備された施設を国民の利用に供するものである。
 わが国においては、図書館が国民の知る自由を保障するのではなく、国民に対する「思想善導」の機関として、国民の知る自由を妨げる役割さえ果たした歴史的事実があることを忘れてはならない。図書館は、この反省の上に、国民の知る自由を守り、ひろげていく責任を果たすことが必要である。
 すべての国民は、図書館利用に公平な権利をもっており、人種、信条、性別、年齢やそのおかれている条件等によっていかなる差別もあってはならない。
 外国人も、その権利は保障される。
 ここに掲げる「図書館の自由」に関する原則は、国民の知る自由を保障するためであって、すべての図書館に基本的に妥当するものである。
この任務を果たすため、図書館は次のことを確認し実践する。

第1 図書館は資料収集の自由を有する
 図書館は、国民の知る自由を保障する機関として、国民のあらゆる資料要求にこたえなければならない。
 図書館は、自らの責任において作成した収集方針にもとづき資料の選択および収集を行う。その際、
(1) 多様な、対立する意見のある問題については、それぞれの観点に立つ資料を幅広く収集する。
(2) 著者の思想的、宗教的、党派的立場にとらわれて、その著作を排除することはしない。
(3) 図書館員の個人的な関心や好みによって選択をしない。
(4) 個人・組織・団体からの圧力や干渉によって収集の自由を放棄したり、紛糾をおそれて自己規制したりはしない。
(5) 寄贈資料の受入にあたっても同様である。
  図書館の収集した資料がどのような思想や主 張をもっていようとも、それを図書館および図書館員が支持することを意味するものではない。
 図書館は、成文化された収集方針を公開して、広く社会からの批判と協力を得るようにつとめる。

第2 図書館は資料提供の自由を有する

 国民の知る自由を保障するため、すべての図書館資料は、原則として国民の自由な利用に供されるべきである。
 図書館は、正当な理由がないかぎり、ある種の資料を特別扱いしたり、資料の内容に手を加えたり、書架から撤去したり、廃棄したりはしない。
 提供の自由は、次の場合にかぎって制限されることがある。これらの制限は、極力限定して適用し、時期を経て再検討されるべきものである。
(1) 人権またはプライバシーを侵害するもの
(2) わいせつ出版物であるとの判決が確定したもの
(3) 寄贈または寄託資料のうち、寄贈者または寄託者が公開を否とする非公刊資料
 図書館は、将来にわたる利用に備えるため、資料を保存する責任を負う。図書館の保存する資料は、一時的な社会的要請、個人・組織・団体からの圧力や干渉によって廃棄されることはない。
 図書館の集会室等は、国民の自主的な学習や創造を援助するために、身近にいつでも利用できる豊富な資料が組織されている場にあるという特徴を持っている。
 図書館は、集会室等の施設を、営利を目的とする場合を除いて、個人、団体を問わず公平な利用に供する。
 図書館の企画する集会や行事等が、個人・組織・団体からの圧力や干渉によってゆがめられてはならない。

第3 図書館は利用者の秘密を守る

 読者が何を読むかはその人のプライバシーに属することであり、図書館は、利用者の読書事実を外部に漏らさない。ただし、憲法第35条にもとづく令状を確認した場合は例外とする。
 図書館は、読書記録以外の図書館の利用事実に関しても、利用者のプライバシーを侵さない。
 利用者の読書事実、利用事実は、図書館が業務上知り得た秘密であって、図書館活動に従事するすべての人びとは、この秘密を守らなければならない。

第4 図書館はすべての検閲に反対する

 検閲は、権力が国民の思想・言論の自由を抑圧する手段として常用してきたものであって、国民の知る自由を基盤とする民主主義とは相容れない。
 検閲が、図書館における資料収集を事前に制約し、さらに、収集した資料の書架からの撤去、廃棄に及ぶことは、内外の苦渋にみちた歴史と経験により明らかである。
 したがって、図書館はすべての検閲に反対する。
 検閲と同様の結果をもたらすものとして、個人・組織・団体からの圧力や干渉がある。図書館は、これらの思想・言論の抑圧に対しても反対する。
 それらの抑圧は、図書館における自己規制を生みやすい。しかし図書館は、そうした自己規制におちいることなく、国民の知る自由を守る。
図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る。
 図書館の自由の状況は、一国の民主主義の進展をはかる重要な指標である。図書館の自由が侵されようとするとき、われわれ図書館にかかわるものは、その侵害を排除する行動を起こす。このためには、図書館の民主的な運営と図書館員の連帯の強化を欠かすことができない。
 図書館の自由を守る行動は、自由と人権を守る国民のたたかいの一環である。われわれは、図書館の自由を守ることで共通の立場に立つ団体・機関・人びとと提携して、図書館の自由を守りぬく責任をもつ。
 図書館の自由に対する国民の支持と協力は、国民が、図書館活動を通じて図書館の自由の尊さを体験している場合にのみ得られる。われわれは、図書館の自由を守る努力を不断に続けるものである。
 図書館の自由を守る行動において、これにかかわった図書館員が不利益をうけることがあっては ならない。これを未然に防止し、万一そのような事態が生じた場合にその救済につとめることは、 日本図書館協会の重要な責務である。

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