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【オススメ本】木下斉『まちづくり幻想ー地域再生はなぜ失敗するのかー』SB新書、2021

「まちづくりの狂犬」との異名もとる木下斉氏による近著。

今作も「東京一極集中が終わったというのはフェイクニュース」「よそ者・若者・ばかものなどウソ」「インバウンド消失で観光業崩壊というのは虚像」「予算があれば地域が再生するは本当ではない」など、地方(創生)で語られがちな話を統計と実践例から真っ向から批判する。

目次は以下の通り。

第 1 章 「コロナ禍で訪れる地方の時代」という幻想
第 2 章 えらい人が気づけない、大いなる勘違い
第 3 章 「地域の人間関係」という泥沼
第 4 章 幻想が招く「よそ者」頼みの失敗
第 5 章 まちづくり幻想を振り払え!

木下氏曰くまちづくり幻想が生まれるのは「思考の土台」が古くなり、アップデートしないからだと言う。そして、そうした幻想を振り払うために以下、12のアクションを提言する。

①外注よりも職員育成。
②地域に向けても教育投資が必要。
③役所ももらうだけでなく、稼ぐ仕掛けと新たな目的を作る。
④役所の外にで絵、自分の顔を持とう。
⑤役所内の「仕事」に外の力を使おう。
⑥既存組織え無理ならば、新たな組織を作るべし。
⑦地域企業のトップが逃げずに地域の未来を作ろう。
⑧バイローカルとインベストローカルを徹底しよう。
⑨一住民が主体的にアクションを起こすと地域は変わる。
⑩リスクを共有し、地元ではないからこそのポジションを持つ。
⑪場所を問わない手に職をつけよう。
⑫先駆者のいる地域にまずは関わろう。

上記とは別に、本編で私が響いたのは、

・大人数になると馬鹿になる、だけど一人だけでは潰される。だから「強烈な少人数チーム」を組織し、圧力をかわしながら、時に相手の力も借りながらプロジェクトを前に進めていくことが大切(p.105)

・ジメジメと潰し合いをする地域よりも、当然ながらネアカで笑って飲んで楽しくやっている地域のほうに人は集まり、挑戦は成果を生み出し、その成果が潰されることなく、むしろ地域全体へと波及していくことも可能になる(p.146)

・仕事においては「何をやるか」よりも「誰とやるか」が極めて大切であり、それを重要視している人が多い(p.214)

・まちづくりを幻想を振り払うのに必要なのは、「百人の合意より一人の覚悟」(p.235)

・宮崎駿さんの名言で「大事なことは、だいたい面倒くさい」というものがあります。地域においても同様で大事なことは、だいたい面倒くさいのです(p.242)

という5点。

これはまちという大きなものだけでなく、大学や行政、また1プロジェクトにも当てはまる至言であると思う。

まちづくりにストライクで関わる人も、そうでない人も、生きている以上はどこかのまちには直接的間接的に関わっているはずである。

その意味で、本書はまちに対して、あるいはまちに深く関わっている人に対して少しでも何かしらの違和感がある人であれば、ぜひ一読いただきたいと思う一冊である。

(HP)https://www.sbcr.jp/product/4815609122/

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