【オススメ本】島田正樹『公務員の働き方デザイン』学陽書房、2021
4月30日の報道(総務省調査)で2022年度において、自己都合で仕事を辞めたのは地方公務員が1万2501人で2013年度(5727人)に比べ、この10年で2.2倍となったことが分かりました。
そんな状態を少しでも改善するために参考になりそうなのが本書のような「公務員×キャリアデザイン」の観点。
より正確に言うと、キャリアだけでなく、ワーク×デザイン、人間関係×デザイン、こころ×デザイン、プライベート×デザイン、キャリアデザインと5つのデザイン軸で本書は展開(収録)されます。
著者はさいたま市の職員の島田正樹さん。プロフィールは以下の通り。
(プロフィール)
さいたま市都市局東日本交流拠点整備課主査。 2005年さいたま市役所に化学技師として入庁。 環境対策課、交通環境対策課、環境未来都市推進課、内閣府・内閣官房(地方創生)を経て現職。 内閣府・内閣官房派遣中に技師としてのキャリアに悩んだ経験から、業務外で公務員のキャリア自律を支援する活動をはじめる。 それがきっかけとなり、NPO法人二枚目の名刺への参画、地域コミュニティの活動、ワークショップデザイナーなど、「公務員ポートフォリオワーカー」として、パラレルキャリアに精力的に取り組む。 また、これらの活動や、公務員としての働き方などについて広く伝えるために、ブログやSNS(https://note.com/shimada10708)で発信するとともに、地方自治体の研修や「自治体総合フェア」等イベントでの講演を行う。 『月刊ガバナンス』(ぎょうせい)や『公務員試験受験ジャーナル』(実務教育出版)をはじめ、雑誌やウェブメディア等への寄稿実績多数。 ミッションは「個人のWill(やりたい)を資源に、よりよい社会・地域を実現する」。 目標はフリーランスの公務員になること。
個人的に印象の残ったのは以下の言及でした。
・公務員こそ地域・社会のために自分らしく働いて、幸せになりましょう(p.11)
・「聴き切る」という住民サービスの存在があったのではないか(p.61)
・「心理的安全性」で生産性を上げる(p.76)
・苦しい出来事があるのではなく、その出来事をその人「捉え方」を通して解釈した結果、苦しいと感じる(中略)。苦情の対応一つとっても、自分自身の信念や捉え方によって私たちが抱く感情、そしてそこから選択される行動も変わってくる(p.103) ※ABC理論
・やりたいと思った時にできる範囲でやれいい。必ずそいもみんながみんな「地域に飛び出す」ことに、固執する必要はない(p.143)。
・(クランボルツの計画された偶発性理論を引きながら)キャリアアップや自らの成長、仕事の成果を得るには、キャリアプランを作るより大切なことがあると説いています。それは①好奇心、②持続性、③楽観性、④柔軟性、⑤冒険心という5つの姿勢(p.159)。
・苦手の克服よりも強みを磨くことを優先することをおすすめします(p.172)。
ともあれ、ワークライフを二項対立に捉えるのではなく、ワークとライフの両方を充実する、楽しくデザインする仕組みを入れないと、今後自治体では本当に人材難に陥りますね。
そうならないためには、採用改革や研修改革だけでなく、カムバックアルムナイ制度や週休3日制、パラレルキャリアの推進、外部人材の活用など、より多様で、総合的な取り組みが必要でしょう。
是非とも冒頭のニュースと本書をきっかけに、現場の「働きやすさ」だけでなく、「働きがい」が改善されることを祈っています。
最後に目次を紹介しておきます。
(目次)
CHAPTER1 仕事をデザインする
1 自分の仕事を「デザイン」して幸せになる
2 状況への想像力でヌケモレを防ぐ
3 仕事は細かく分解して着手する
4 焦らず慌てず、「記憶」より「記録」に頼る
5 やりたいことがあるなら、今できることに全力を注ぐ
6 学ぶ力で人事異動を味方につける
7 「できません」から始める、引受け方のマネジメント
8 「私がやったほうが」は市民のために捨てる
9 人前に出たら自分の言葉で信頼関係を築く
CHAPTER2 人間関係をデザインする
1 「あなたの頼みなら」と言われる関係をつくる
2 「後工程はお客様」で小さな気遣いを重ねる
3 人間関係は「わかりあえていないかも」が前提
4 聴き切るという市民サービス
5 知ってもらうことで味方を増やす
6 苦手な上司の「苦手な部分」に着目する
7 役職の違いは「上下」ではなく「機能」の違い
8 「心理的安全性」を高めると生産性が上がる
9 プロジェクトチームは「個人的な関係」をつくる機会
CHAPTER3 心のあり方をデザインする
1 仕事に必要なのは、時間の余裕より、心の余裕
2 望まない異動で腐る前に、置かれた場所で咲こう
3 組織の方針に共感できなくてもモチベーションを保つには
4 上司の評価ではなく、自分自身の納得感を大切にする
5 実在するのは苦しい出来事ではなく、それを苦しいと捉える心
6 “振り返り”と“概念化”で失敗を学びと成長の機会にする
7 元気がでないときは、自分で自分を褒めてあげる
8 「意識高い系」を恐れるあなたは「自意識過剰」!?
CHAPTER4 プライベート時間をデザインする
1 「1時間=168時間」の時間割をつくろう
2 学びは生かす場面まで想定すると自分のものになる
3 息抜きは周りを気にせず自分のスタイルで
4 避難所兼稽古場「サードプレイス」を持とう
5 社会に影響を及ぼすことから、もう、逃げるのはよそう
6 公務員に特有の窮屈さは正しい理解で軽減させる
7 個人としての情報発信で目に見えない資産を築く
8 SNSは発信しないことを決めればリスクを管理できる
CHAPTER5 キャリアをデザインする
1 公務員こそ自分の人生のハンドルは自分の手で握ろう
2 偶然を自分のキャリアの味方につける
3 役所で働くことは目的? 手段?
4 「自立/自律」した公務員になろう
5 どんな部署でも使えるポータブルスキルを身につける
6 これからの公務員の“新・自由七科”
7 仕事は課の名前では決まらない
8 正解を選べなくても大丈