2021ファジアーノ岡山にフォーカス5 「第2節vs金沢(HOME)」Part2@攻撃チーム(SH2・OH・CF)の光陰
1、 前書き
Part1にて、有馬ファジの目指す守備チームの狙いついて述べてきましたが、FWチーム(前線4枚)の攻め方についてと、その方針の利点や課題について述べて行きたいと思います。岡山は、開幕戦と2節の内容を未完成ながら、開始15分という短い時間ではあるものの、魅力的なフットボールを魅せてくれたと思います。その後の機能不全というよりは、狙いが外された理由ことにより、パフォーマンスは低下しましたが、とても可能性を感じる内容であったと思います。そう感じた理由を攻撃チームにフォーカスを当てて、述べて行きたいと思います。それでは、よろしくお願いいたします。
2、 攻撃チーム(SH2・OH・CF)の基本方針
守備チームからボール奪取後に、配給される縦パスを呼び込むために、前線の4人が、下がり過ぎない様に、高い位置にポジショニングする事を意識している。また、昨季と違いOH(トップ下)を採用した事で、孤立しがちであったSHとFWの関係性から距離感が良い組織的な連動したパス回しの攻撃や、連動したプレスの守備などのプレーが可能となり、縦パスが通る回数や、高い位置でのボール奪取の回数が向上。パス通った後やボールを奪取後も良い距離感により、パスを近くの選手へ落とし、マークをいなし、守備網も素早いパスワークと、縦への推進力で、ラインブレークし、ゴールへ迫る事が出来る様になった。攻守共に、距離感を重視したこれまでの方針に、流動性とスピード感を加えた事で、昨季からアップデートされた。
3、 攻撃チーム(SH2・OH・CF)の各選手の役割
・左SHの14上門
力強い突破というよりは、スピードを活かした仕掛けや、周りとのパス交換で、局面を打開して、ドリブルで持ち上がってシュートやラストパスで、得点に絡む事を主眼としている。2列目の選手の中では、主に左サイドを主戦場としているので、10宮崎や27木村とのポジションチェンジは少なく、左サイドでの崩しに集中し、41徳元との良好な関係を今季も見せている。27木村が、やり切る仕掛けなら、その手前のミドルシュートやクロスという形で、決定機を作る。決断良く、展開も速い攻撃ができる一方で、稀に選択するバックパスをカットされて、カウンターを受ける悪癖があるので、良い形で、ボールを如何に持つかが、重要になる。そういった意味で、今季のダイレクトパスが多く、流動的に動く前線で、ボールがシャッフルされる中で、良い形でボールを持てるシーンが増えた。マークも分散してくる中で、如何に決定的な仕事ができるかが、ポイントなる。得点に絡むという部分で、より中に入ってシュートまで行けるかという点で、まだ2節終了しただけではあるが、勢いに乗るためにも早い段階での得点に期待したい。
・右SHの27木村
パスワークで崩すために細かいパス交換を繰り返す事や得点を決めるというよりは、一点突破に特化した選手。細かいパスワークに絡む事は得意ではないかもしれないが、パスの受け手として、フィジカルを活かした起点に成り得て、体を張って収める事ができる。また、右SBの16河野との関係もシンプルで、どちらかが、外を駆け上がって、ドリブル突破でのラストパスやクロスでのアシストを狙う。1対1を仕掛けられる状況であれば、どんどん仕掛ける事ができる。献身的な守備で、好機であれば、プレスもしっかりかける。金沢戦では、10宮崎とポジションを変えて、両サイドにドリブラーとして絡んで、突破からの攻撃の突破口を探る動きにも試していた。課題としては、90分間通してのプレーするスタミナやペース配分の面で、現状は厳しい点にある。この辺り、5枚の交代カードを切れるという事で、現状のままで良いかもしれないが、3枚となった時に、どうするかという点を考えると、岡山以上で、試合にスタメンで出るためには、必要不可欠である。
・トップ下(OH)の10宮崎
CFの18斎藤の脇を固める役割を主眼としている。ダイレクトでの落としを受けて、左右のSHの27木村や14上門といった選手を使う事もあれば、可能であれば、自ら仕掛けてゴールへ向かって行く。また、隙があれば、DFラインの背後を狙うという動きも見せており、攻撃の幅が広い。例えるならば、攻撃的な役割に比重を置いた7白井。攻撃の中心にあり、彼が巧くCF18斎藤、左SH14上門、右SH27木村といった選手達を活かす事と、彼らに活かされる事で、攻撃は、全て10宮崎を経由するぐらいになると面白い。ただ、体を張るというプレーは、あまり得意ではないようで、ポストプレーの様に、止まって受けると言うよりは、テクニックを活かしての動きながら受ける事で、フィジカルコンタクトを最小限に抑えるプレーを意識しているので、ボールを持つ時間は短い。右にポジションを移し、密集地を避けてプレーする時間もあるなど、チームとしての攻撃の糸口を探る時間もある。
・CFの18斎藤
守備チームからの多くの縦パスは、18斎藤に集まっている。パスを受ける時の18斎藤のプレーのベクトルは、自陣に向けて小さく向いている。体を張るポストプレーではなく、ダイレクトで捌くイメージのポストプレーで、寄せやマークをいなして、近くの選手に預ける。捌いた後は、縦・斜めへの裏への動きで、ラインブレークを狙うプレーや、サイドでの崩しに絡み流れに加わるプレーなど、18斎藤のプレーのベクトルが、相手陣深くに向かうように変わる。FWエリアのCF・WGエリア全ての広範囲がプレーエリア。ポストプレーやラストパス、クロスなどのチャンスメークから点取り屋としてゴールを狙うプレーなど、幅広くスピードやパワーを活かしたプレーで、攻撃を活性化していた。ただ、プレーの幅が広い反面、器用貧乏の様になっており、結果と内容を出せておらず、ダイレクトでのパスの裁きをカットされるシーンや、決定的なシュートを放っているもファインセーブなどで、あと一歩で留まっている点があり、そこが現段階の課題である。
4、 攻撃の推進力の秘密
戦術的な卓上では、2トップの時と違いCFが1人となった事で、相手陣地深くに1人という状況が生まれやすい。対戦チームが、岡山の選手からボールを奪うためには、ラインを高く距離感を維持し、コンパクトにしてボール奪取に行くか、誰かがDFラインを離れて寄せにいかないといけない。そういったアクションを対戦相手が起こさなければ、前線や中盤の選手を低くポジションを取る必要があり、DFラインの裏やスペースに隙が生じさせる事や、相手の人数をかけた攻撃への牽制の効果がある。そのどちらかを選択させるために、前に人数をかける必要がある対戦チームの攻撃に対して、ボール奪取後に縦パスをすぐさま守備チームから攻撃チームに付ける事で、食いつかせて、すぐに捌くことで、寄せをいなして、その寄せで出来たスペースを一気に突くことで、スピード感のある仕掛けを可能としている。勿論、そこに対応する選手が次から次に出て行く中で、SHの2人が内側に絞ったり、外のスペースを抉ったり、守備人数が揃った時は、SBがすかさず、そのスペースを駆け上がる。そして、ボランチの2人が後方で待機しつつ、セカンドボール回収での2次攻撃や、攻撃にサポートに入る機会を窺う事で、攻撃に厚みを生み出す。ここまで、スピード感のある流れで仕掛ける事で、昨季に多く見られた回す事が目的になってしまっているパスというのが劇的に減った。その結果、縦へのスピード感のある攻撃を実現できた。
5、 攻撃チーム(SH2・OH・CF)の課題
・縦パスを受けた後のアクションの精度
守備チームからの縦パスというのは、成功率及び回数が増えた事で、多くの縦パスが攻撃チームへと通った。ただ、上記で述べた受け手が捌く最初のダイレクトのパスやトラップした所を狙われていた。ダイレクトで、味方に繋ぐという意識が強すぎた事で、安易にダイレクトパスを出してカットされてしまう事や、トラップをする意識に集中出来ない事で、トラップが大きくなって、そこを奪取されるというシーンが、とても多かった。そこで、しっかり収めるか繋ぐ事ができていれば、もっと攻撃の機会を作る事ができた。そういった意味で、質と回数に課題を残した。
・高いパス意識を結果にどれだけ繋げられるか
パスは、選手が密集していれば密集しているほど、パスの通る成功率が下がる。縦パスを入れた後に敵陣での細かいパスワークというのが、1節と2節、特に2節で見ることができた。巧く守備網を潜り抜ける事ができれば、選手の走るスピードより、パスのスピードの方が速いので、受け手と出し手の意図を共有出来ていれば、それだけ攻撃時に運ぶボールのスピード感が、加速する。ただ、それだけ確実性というのは、低くなる。この試合では、前半の15分ぐらいの成功体験により、細かいパス交換を意識し過ぎた印象が強い。また、前半の15分が良すぎた事で、攻撃回数が増えて、スタミナを大きく消耗してしまった。その結果、疲労によるパスのズレや意識疎通の相違などの現象が散見された。この辺りの判断の質と連携を深める事で、成功率を増やす事で、もっと長い時間に渡って、主導権を握る時間を増やす事。そして、良い時間にしっかり得点を決める事で、ペース配分を意識し、90分間でしっかり戦う事。最後に選択肢の幅を広げる事で、相手の対応を間違わせるシーンをどれだけ作れるか。この辺りが、より精度が上がれば、もっと良い攻撃ができる。
・前線の消耗度による質の維持の難しさ
残念ながら交代カードを5枚使えるが、運動量低下によるパフォーマンス低下を受けての交代で、攻撃を維持するためのスペシャルな交代選手を5人揃える事が、岡山は出来ていない。9李の復帰以外では、20川本がチームフィットする事。この辺りしか現状は望めない。若い選手の成長にも期待したい部分があるが、昇格を意識して、戦って行く中では、アクシデントが無い限り、出場機会は限られるため、現実的ではない。特に18斎藤が右に回った時間だと、前線の攻撃のスピード感が、やや落ちる印象がある。この辺り9李の復帰で、得点力の向上と共に改善が期待できるが、その分、縦パスが入った後の捌きの部分に不安を残す。9李も巧くプレー出来る様に、攻撃パターンの変更と改良が、どこまで進んでいるのか。この辺り不透明で、ビハインドの状況やスコアレスで推移している中で、苦しい時間にこの試合の前半15分までの猛攻の様な攻撃がどれだけ出来るか、それは、今後のリーグ戦で、安定して得点を積み上げて、勝ち点に繋げるためにも必要不可欠な要素であることは間違いない。出場機会があるのであれば、その辺りに注目してみて欲しい。
6、 後書き(総評)
昨季と違って、攻撃にスピード感が生まれた。大きな違いは、守備チーム(CB2・SB2・DH・CH)からの縦パスの回数と成功率の高さと、そのパスを受けた攻撃チーム(SH2・OH・CF)のパス回しの速さと、連動した攻撃と縦への推進力にある。まだまだ課題が多いが、現状は、この方向性の中で、攻撃の質と練度を高めて、どこまで得点を決める事ができるか。守備のチームと攻撃チームの融合する時間を含めて、攻撃の速さと守備の密によって、チームとして攻守のバランスを取り、より強い岡山を魅せて欲しい。まだまだ完成度は低いかもしれないが、チームの潜在能力の高さを感じる事が出来た1節と2節だと思いますので、早い段階で内容を高めて、結果に繋げて欲しい。
文章・図版=杉野 雅昭
text・plate=Masaaki Sugino
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