2024ファジアーノ岡山にフォーカス32『 重みの違いと目指す物の違い~平等な運命~ 』J2 第19節(H)vs鹿児島ユナイテッドFC
1、順位を意識した戦い方~昇格と残留~
鹿児島をホームのCスタで迎え撃つ岡山は、プレーオフ圏以上を狙うことができる順位に位置していますが、岡山の地に乗り込んでくる鹿児島は、監督が、シーズン途中で代わるほどの厳しい順位に位置しています。
当然ながら、岡山は、より勝ち点を積み重ねるために勝ち点3を狙う戦い方をしますし、鹿児島は、勝ち点1でも欲しいという戦い方が残留のためには必要であるので、負けない戦い方をします。
この辺りが、勝敗にどう左右するかというのが、この試合のポイントですが、この試合では、風雨の影響を受けるピッチコンディションであり、その辺りも試合結果に影響した試合になりましたね。
それでは、今回もスギさん的視点で、柔軟に振り返っていきましょう。
2、人数をかける所~対極のバランス~
まず、岡山は、3-4-3のシステム通り、攻守において十分な人数を割いて、攻守において戦える布陣と意識で、戦っていました。ここ数節であったような上位との対決のように左右のWBが守備に追われるというこそなかったですが、攻撃に移っても鹿児島の組織的守備と個の力での守備の双方の前になかなか得点を奪うことができませんでした。
確かに決定機を作れていて決め切れなかった側面こそありますが、その決定力を下げるだけの最後の守備というのを鹿児島はできていたように映りました。
その鹿児島の戦いですが、4-2-3-1のシステムですが、愛媛や千葉とは違いSHやOHが、ゴール前に飛び込むというよりは、深くまで侵入せずに、一本のパスを裏へ放り込むということを選びがちで、カウンターを警戒していました。
そのために、鹿児島としは、最後のフィニッシュは、92番 ンドカ・チャールス 選手に任せて、GK〜MFの10人で守備を安定させることに注力していました。岡山のFW&WBの5人で攻めて、GK〜DHの6人で守る形と比べて、鹿児島の戦い方は、守備のバランスを重視した戦い方と言えるでしょう。
前半は、鹿児島が、10人で守るとはいえ、距離感良く分散して埋めることで守るために、最後のDFラインだけを固める訳にはいきませんから、そこに対して、岡山が連動した個の力でこじ開けようとしていましたが、鹿児島の出足の速い守備の前に、最後の壁をこじ開けることができませんでした。
なぜ岡山が決定機で決め切れなかったり、チャンスでシュートを打てなかったシーンが多かったか。それは、分厚い守備網に加えて、やはり99番 ルカオ 選手が競り合いと走り合いで突破できなかった通り、鹿児島のDFの選手に足が速い選手が揃っていたことであるでしょう。
どうしても主体的に「決められなかった」と捉えがちにこそなりますが、どちらかと言えば、守備に8~9割力を割いた鹿児島に対して、多くの決定機を作ることができた岡山のチームの崩す力は、それなりに高いとも考えてもいいでしょう。
この均衡が、どう崩れたのかは、次章で語りましょうか。
3、前がかりのリスクと力~確率の収束~
前項のバランスの話の延長になりますが、岡山はビルドアップをGKとDFライン3枚を軸に中盤が絡む形で、進めていく形を採用していて、繋ぐというよりは、前線にも人数を配置することで、危険であれば、放り込むことも前提としていました。
しかし、この試合は、後方を埋めた上で、足の速いDFが揃っていたことで、岡山が、サイドからも中央からも簡単には攻撃の形をなかなか作りきれなかった試合になりました。
そのためか、後方での繋ぐ意識が高くなっていく中で、49番 スベンド・ブローダーセン 選手のパスミスが生まれて、そのままループシュートを92番 ンドカ・チャールス 選手に決められるという先制を許すことになったのです。
それでもなかなか形を作れなかった一本のロングパスのセカンドボールが良いところに出たことで、10番 田中 雄大 選手がミドルシュートに見せかけた絶妙なスルーパスから19番 岩渕 弘人 選手のループでの同点ゴールが生まれました。
オフサイドになっても不思議ではない位置でありましたが、3試合連続ゴール中で、絶好調の19番 岩渕 弘人 選手。この辺の感覚が研ぎ澄まされていると感じられるポジショニングから絶妙なループシュートで、4試合連続ゴールとなりました。
こうした巡り合わせのような好調不調の波や決まる時もある。まさにそういったサッカーの怖さや難しさが出た後半の戦いの末に試合は、1-1で終えた。
4、守備とビルドアップから攻撃へ~鹿児島ユナイテッドFC~
また、この試合での岡山の戦い方を難しくした理由として、鹿児島の安定したビルドアップが大きかったと見立てることができる。(一度いい形で奪えこそしたが)岡山のハイプレスがあまり嵌らなかったことで、ある程度、鹿児島に持たれた上で、前進を許していた。
しかし、最後の所で、ある程度運んだのに関わらず、人数をかけない速攻により、岡山に対応されるというのは、前述通りである。加えて、守備も安定していたという事も前述していたが、こうした下地は、しっかりしているという印象を抱いた。
安定したビルドアップと安定した対人守備。こうしたチームへと変貌した理由として、浅野 哲也 新監督のDHやDFとしての経験からによるものもあるはずである。
以前鹿児島の試合を観た時には、攻撃的なスタイルで、守備ブロックを無効化するパスでの崩しに優れるチームであったが、ベースこそ残っているが、大きな方向転換と言える。
多くの選手が得点できている一方で、絶対的なエースが不在ということもあって、しばらくは得点力という部分に苦しむことは間違いないでしょう。
ただ、チームとして継続してきた「繋ぐ」と「崩す」という武器が消える訳ではないですから、守備をしっかり構築した上で、勝負の攻撃にどうトライできるかではないかと感じます。
残留争いから抜け出すためにも、この武器を新監督の新戦術のもとで、どう形にするか。そこが、後半戦に問われていくのだと思います。
5、重みの違いと目指す物の違い~平等な運命~
チームのスタイルの違いや戦い方の違い。全てが違いますし、厳密に言えば完全な平等とは言えないかもしれませんが、広義の意味で言えば、サッカーにおいては、最終的に総合的に強かったチームが「頂」に立つことができて、順位もそれに応じて決まることで平等です。
他クラブでも少しでも強いチームになれたチームが、勝ち点を積み重ねることができる。その過程で、好調なチームや不調なチームがあるように、選手やプレーでもそういった良し悪しがある。審判のジャッジに恵まれることもあれば、その逆もある。
そういった意味では、多少の差はあっても広義の意味では非常にフェアなスポーツであります。そこを理不尽や不満ばかり募らせていては、チームとして前に進むことは難しいかもしれません。
しかし、だからと言って、どれだけチームとして正しいアプローチでチームを作り、手厚いサポーターの後押しがあったとしても力が足りなければ、目標とする結果を手にすることはできないでしょう。
この試合では、43番 鈴木 喜丈 選手が、長い離脱期間を経ての復帰。フル出場やトップパフォーマンスには届かないものの大きな一歩を歩みだすことができた試合でした。途中から交代して入った55番 藤井 葉大 選手も堂々たるプレーぶりで、力を示しました。
何が正解で、何が成功か。逆に何が間違いで、何か失敗か。それは、立場や考え方によって違い、まさに千差万別と言えるでしょう。
この試合で、両チームの状況や戦い方について触れてきましたが、運命の二巡目。後半戦で、何を残せるか。正解を探す中で、成功に辿り着けるか。運命とは全ての人に平等にある。それは、残酷か幸福か。
受け止め方一つである。
この前半戦をどう捉えて、どう消化するのか。それは、全ては貴方次第である。
重みの違いと目指す物の違いの先に、1人1人に平等な運命が待っている。
文章・図・写真=杉野 雅昭
text・figure・photo=Masaaki Sugino
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