2023ファジアーノ岡山にフォーカス53『 視線の先に~景色~ 』J2 第41節(H)vsブラウブリッツ秋田
1、気持ちの向け処~哀愁~
プレーオフ進出の可能性も完全に消えた中で、ホーム最終節。多くのイベントなどと重複する中で、スタジアムに足を運んだ方は、1万に届かなかった。13,000を想定したフラッグは、多く余ることとなった。
この試合に向けて、どういった気持ちで望むのか。その場に足を運んで多くの人が、そういった中での難しい気持ちでこの試合を迎えた。
いつもであれば、メインスタンドの岡山側で、起こる岡山もコールに呼応する人の声量は小さく、子どもが大きな声を出して、チームに応援を届けようとしていたが、やはり小さい。見かねた向かいのバックスタンドから岡山コールのサポートこそあったが、やはり小さい。
ただ、メインスタンドで起こる「ファジアーノ」というコールに対して、バックスタンドが久々に応えていた。メインスタンドとバックスタンドで、応援する場所や応援のスタイルこそ違うが、ファジアーノ岡山というサッカークラブを応援するサポーター仲間であることを改めて感じた。
今回は、5柳 育崇の骨折があったとはいえ、ベストメンバーであって、ベストメンバーではない。矛盾するが、そういったメンバーでの試合であり、ベストなゲームプランであって、ベストなゲームプランではない。そういった戦い方であったと筆者は捉えているので、メンバーに関しては、契約満了の選手のプレー時間をを意識したメンバーであったので、フォーメーション図のみに留めることとする。
2、もっと旗を降りたかった~劣勢~
試合の方は、秋田のやりたいサッカーによって、押し込まれて苦しい時間帯が続いた。それに伴って、特に前半で、フラッグを振る機会は少なかった。
ここ数試合では、簡単にロングパスを選択することが多かったが、WB(SB)が高い位置に上がっている時以外の場面では、基本的に「繋ぐ」意識が高かった。
ただ、秋田も前からのプレスやボール奪取後の速攻を志向しているチームという事もあり、なかなか前進できず、自陣に抑え込まれた状態が続いていたが、久々のスタメンであった23ヨルディ・バイスも、岡山の新スタイルに高い適応をみせていた。
本来であれば、ロングパスを蹴っていく事で、攻撃の形を作ることに長けた選手であるが、練習やベンチからチームの戦いをみている事から、そこに合わせていくという意味では、まさにプロフェッショナルである。
ただ、適応できても試合を有利に進めることができるかは別問題で、効果的な持ち上がりから前に付けるというパスを出せない事で、中盤の選手にプレスが掛かり易いという課題は、解決できていなかった。恐らく、フィード精度やフィジカル面での一時期のようなクオリティが、落ちてという面もあるが、一番は、木山ファジの目指すサッカーへの適応が難しい事が、契約満了の一番の理由で、個人的には、23ヨルディ・バイスのロングパスがメインのサッカーのチームであれば、昨年に魅せたような高いパフォーマンスができる可能性は十分ある。
本当に厳しい状況の中で、チームスタイルに寄り添い、出場機会が少なくなる中でも、チームのために言動や行動で、最後まで昇格のために戦ってくれた。本当に感謝の気持ちしかなく、その熱い言葉やプレーを岡山でみることができなくなることは寂しい。岡山に、対戦チームの選手としてか、指導者としてか、トークショーか。いずれにせよ、岡山に戻って来ると試合後に語ってくれたことは嬉しい。2年間、有難うございました。そして、これからも岡山の事をよろしくお願いします。
また、後半の2点ビハインドで入った27河井 陽介のプレーはやはり安定感があり、気持ちの入れ方が難しい試合でも、自分の持っているものを100%近くを、ほぼ全試合で出せる。決して長い時間ではなかったが、長短のパスや止める蹴るやポジショニングなどで、違いをみせていた。本当の気持ちを言えば、今季ももっと観たかった選手の1人だが、チームとしてのやはり戦力差を埋めるためには、チームとして如何に成長曲線を描けるかというのは、今後のポイントともなるので、ユース出身の選手を含めて、チームとしての持続的な成長を目指すために若い選手を起用するというアプローチ自体は悪くない。
そういったチームにあって、27河井 陽介のプレーというのは、若い選手も吸収するものは多かった筈で、まだまだやれる力のある選手で、清水歴が長いので、岡山に何らかの形で戻って来ることは、可能性は低いかもしれないが、まだ何らかの形で戻って来て、欲しいと感じる選手の1人である。
そして、久々に16河野 諒祐にも出場機会があったが、プレースキックやクロスという部分で、いつもと違った期待感があった。まだ、分からないがこの起用法を観る限り、来季は、どうかという部分こそあるが、後半はフラッグを振る機会が何度かあったので、できれば、ホームで16河野 諒祐のアシストからの岡山の得点が観たかった。
スコア的にも内容的にも秋田の試合であったことで、来季に繋がる可能性を残せた試合とは言えなかったかもしえないが、この試合では、安易にロングパスを選択しない「繋ぐ」という事への強い意志を感じたので、木山 隆之 監督が続投であれば、「繋ぐ」をテーマに、来季も戦って行く事にはなりそうだ。
やはり、ボール保持ができた時に、狭い所で崩していく可能性というか糸口の見つけ方は、ミドルシュートでこじ開ける事が多かったファジアーノ岡山が、そのブロックを連動したパスやドリブルで崩すという事にも着手できたシーズンであったことも感じた。
ただ、そういった守備が安定したチームが多く、そのブロックをどう崩すかという観点から、ミドルシュートが武器の選手の獲得も有力な選択肢ではないかと感じた。
本当は、13,000人以上入って、スタジアムがフラッグで揺れる光景を観たかったが、頂どころか自動昇格やプレーオフの可能性が消滅していたからこともこの現状は、仕方ないと言える。
しかしながら、ファジアーノ岡山というクラブが、昇格するんだという想いで、最終盤に向けて、総力を尽くして、1つとなることに挑戦したという事実に変わりないので、今季でのJ1昇格という挑戦は、失敗であったかもしれないが、より先を見据えて、下を向かず続けていきたい。
3、秋田スタイル~バランス~(秋田編)
秋田スタイルのイメージとして、90分間通してプレー強度の高いプレーを続けるイメージが強かったが、ハイプレスを控えて、受けに回ってカウンター体勢を整える時間をあえて作っている。特にリードしてから、岡山が持てる時間を意図的に秋田側で、作っていた(許容していた)感があり、実際に、岡山の2失点目もカウンターからの失点であった。
過去を振り返ってても秋田に対しては、「繋ぐ」ことを前面に出した試合や先制を許した試合では、厳しい結果になっていることも多いが、この試合もそうであった。
しかしながら、ここまで明確にペース配分とカウンターの両面を意識した戦い方を採用するのは、秋田スタイルの挑戦、もしくは、進化と言えるだろう。
秋田というクラブが、他のJ2クラブに対して、戦力的に見劣りするとは全く思わないが、少なくとも技術面では岡山の方に分があるが、この試合で、岡山がそういった面を発揮するという場面は少なかった。むしろ、ファールで止めるにしてもプレー強度の高い守備やスピード、強さ、跳躍力といった面で、岡山を圧倒した秋田のフィジカルレベルは、岡山を軽く凌駕していたことは間違いない。
各チームが、自分達の良さを出せた方が勝ち易いということは間違いなく、岡山だけではなく、秋田にとっても(23シーズンでの昇格や残留に関係しないという意味で)消化試合であったこの試合。普段通りの実力を内容や結果に繋げることができるという点で、心技体の秋田スタイルの完成度の高さを感じた。
今季は、序盤の勢いを持続できず、中盤戦で、ライセンスの問題があり、メンタル的に厳しい時期もあったが、交付されたことで、来季もJ2で戦うことができる。同じサッカーファミリーという面で、秋田がライセンスの問題をクリアできることで、J1昇格に挑戦できる権利を手にすることができたらと強く思う。
岡山もまたライセンスの問題があるので、新スタジアムを含めて、地域のサッカーの盛り上がりをより高い所に持って行く事で、サッカー界全体が盛り上がったら良いなと思います。
秋田のライセンスなどのおよその状況を把握していてもあえて言いますが、秋田スタイルというのは、J2に根付いて来ていて、選手とサポーターの相手チームへのリスペクトというのは、私のレビュー方針としても非常に共感できるので、いつか共にJ1で戦えるように、J2からJ1を目指す戦うライバルとして、来季も対戦できることを楽しみにしています。
セレモニーを含めて、最後まで残って下さった方もいましたし、秋田スタイルとの来季の対戦を楽しみにしています。岡山もその時は、木山スタイル、もしかすると新監督スタイルになってるかもしれませんが、岡山スタイルというのより表に出せると信じて、ストーブリーグの様子を見守りたいと思っています。今季も有難うございました。
4、4連勝スタイル~課題~(岡山編)
久々に繋ぐスタイルを徹底して戦った試合であったので、改めてプレスをどう打ち破るのかという問題に直面した試合となった。足の速いCB不在問題にも最後まで結局直面する事になってしまったが、23ヨルディ・バイスに代わる軸となるCBの獲得や今季終盤に定着したレギュラー陣の獲得は、必須である。
少なくとも元々少なかったCBの選手が、二人も抜けたので目玉選手の獲得は、間違いなくある。今季終盤のサッカーをベースとするのであれば、〇〇特化タイプの選手というよりは、43鈴木 喜丈や15本山 遥のように総合力の高いCBにオンターゲットなるのは間違いない。
ただ、セットプレーでの得点力が低下しているので、元岡山の井上 黎生人のような得点力のある上に、総合力の高いCBが理想的であるが、一定の足下の技術を持っていて、個性豊かなタイプのCBの選手を獲得することで、対戦相手に応じて戦える柔軟性をチームとしての伸ばせれば、なおいい。
後は、FWに高さやポストプレーもできるタイプのストライカーも欲しい所である。ロングパスが悪い訳では無く、空中戦に強いタイプの選手が不在であったことで、ロングパスに誘導された時に裏抜けだけ警戒していれば守れるという状態が続いた事で、終盤戦の苦戦に繋がった。
99ルカオの強さや7チアゴ・アウベスの速さに加えて、高さという武器があれば、強く感じた限りである。その点、18櫻川 ソロモンが、そこで対戦チームに対して、アドバンテージをとれなくなった事は、クロスでの得点が少なくなったことは、岡山としても苦しくなった。そういった状況もあり、繋ぐことに舵を切ったという事も理解できる。
その中で、中盤に関しては、終盤のパフォーマンスは素晴らしかったなというのが、正直な所です。何が足りないというよりは、終盤のサッカーを継続するのであれば、選手の引き留めや周りの選手をスタイルに近づける事で、より安定して戦える筈である。
強いて挙げるとすれば、もう1ランも2ランクもチームのレベルをあげる事ができる選手を獲得できればと強く思う。中盤の底に関しては、ハーフタイムで交代する事もあったので、外国籍の選手のような総合力の高い選手を獲得することで、攻守でより強く戦える選手がいたら面白いかもしれない。
サイドに関しては、言及の難しい所であるが、16河野 諒祐の守備を目に瞑って戦う場合は、現状維持できれば良いかもしれないが、守備強度をより重視するのであれば、動きもあるかもしれないが、4バックや3バックを含めて、難しい判断になるのではないかと。
現状として、CBの多様性と層の充実とFWのロングパスや空中戦でも戦える選手、中盤は、方向性や編成でマッチして、1ランクあげられる選手、そこに即したサイドの編成。戦力差を補うという意味で、若手主体になるのは致し方ないが、ベテランを効果的に編成に組み込む事で、来季こそは、心技体で安定感があって、タフなチームに代わって、来季こそ昇格できると信じて応援したい。
まだ契約に関する続報はなく、本稿で怪我でも触れなかったが、怪我の影響で試合で貢献できなかった38永井 龍。精神的支柱にこそなっていたが、出場機会の少なかった4濱田 水輝の契約満了も発表されている。特に、岡山の歴の長い4濱田 水輝の満了は、サポーターだけではなく、4濱田 水輝自身にとっても最後のスピーチからもショッキングで、寂しい発表だった。しかし、これからも応援したい4選手であり、新天地が決まるという発表を待ちたい。
ここに対しては、少なくとも獲得に動く事は間違いなく、これからもサポーターやファンにとって、辛い発表もあるかもしれないが、アウェイに駆けつけるサポーターは、今季限りの選手もいるかもしれないので、選手へ想いを込めて応援したい。
試合において、サポーターは、選手を観て、応援することしかできないが、プレーする選手もベンチの選手もピッチでプレーする選手を観ている。そこに対して、どういった想いで、準備して、出場機会に備えていたのか、今季は、声を出したり、選手に声を掛けたり、出場機会に向けて、準備したりと、そういった姿がより印象的であった。
サポーター、選手、監督、スタッフ、審判など立場によって視線の先にある景色や感じる事や考える事は違う。アウェイ金沢戦が、今季の最終節になるが、来季に向けて、どういった景色を観る事ができるのか、現地でアウェイの様子をみることで、来季の景色が少し見えるかもしれない。そういった気持ちで、スタジアムに足を運びたい。
文章・図・写真=杉野 雅昭
text・figure・photo=Masaaki Sugino
5、アディショナルタイム
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