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2021ファジアーノ岡山にフォーカス14 J2:第11節:秋田vs岡山(Away) 「秋田の圧力を受けたサッカー、岡山の打開策、勝負を分けたセットプレー」

1、 前置き

11節にて、今季初の連勝。シュート数は、恐らく今季最小の6。前節の降格圏に落ちるかどうかのゲームで、勝利できた事が多かった。ホームでの勝利がなかったというのは、チームとしての自信を持って戦う上で、マイナスであった事は間違いない。この試合では、流れの中での得点ではないもののFW登録の選手の初得点。チームとして、ここから浮上してくるのではないかという期待を抱くのに十分な結果であったと思う。

J3から上がって来た秋田ではあるが、自分達のサッカーを持っていて、それに適したサッカーをしっかり展開している。それで、結果が付いてくるかどうか別としても、カテゴリーで、上位に位置するためには、自分達のサッカーの有無というのは、そのまま順位直結すると考えても良い。ここで、結果を残せなければ、降格してしまう事になるが、近年のチームは通用している。

岡山の後輩となるJ2チームは、何チームあるのか。もはや確認するのも難しいぐらいのチームは出てきている。それだけ長く、J2を戦ってきている。サポーターにとって、停滞の12年間なのだろうか。それとも着実な前進の12年間なのだろうか。個人的には、ゆっくりであるものの着実な前進を続けていると思っているが、プレーオフを勝ち抜けていれば、現在の立ち位置は、変わっていたのだろうか。

周りが強くなって行く中で、そして、DAZNマネーにより、J1とJ2の格差は開くこととなった。また、獲得賞金の大きさから、川崎フロンターレの様に、圧倒的なスター軍団が誕生するリーグとなった。Jリーグが発展していく中で、サポーター満足度やスタジアムグルメで、取り上げられることもあったが、成績面で、話題になる事は、少なくなった。

選手を観てもスター選手と呼べる選手も少なくなり、小さくまとまった感は、強くなった。J1チームが、J2で活躍した選手の獲得する流れは主流となり、主軸の引き抜きにより、J2のレベルの均等化がより進んだ印象である。J1で長く戦って来たチームでさえ、J1に戻れず、J2に留まるチームも出て来た。個人的には、スター選手を抱える事が難しくなったリーグになってきて、監督の差が大きくなってきた様に思う。

思い起こせば、J1に昇格したチームの監督は、名将が多いのではないだろうか。松本の反町 康治氏。福岡の井原 正巳氏。小林 伸二氏に関しては、大分、山形、徳島、清水の4チームで、昇格している。昨季は、リカルド・ロドリゲス氏が、J2優勝を置き土産に徳島を二度目のJ1昇格に導いた。思い浮かべただけで、これだけ浮かんだが、皆さんが良く知っている監督が多いのではないか。

一方で、岡山は、Jリーグでの実績に乏しい監督を中心に招聘している傾向にある。J2リーグ以下のカテゴリーが主体であった手塚 聡氏を除くと、影山 雅永氏。長澤 徹氏、そして、現在の有馬 賢二監督。何れもJリーグの実績は乏しい監督ばかりであった。しかしながら、安定した成績を残して来た岡山。その要因は、どこにあったのか。

岡山の監督は、采配にこそ差異があるもののどの監督も選手とのコミュニケーションを大事にしている様に感じる。ここに実は、岡山の狙いがある。ハードワークと堅守、献身性。この3つのキーワードが、岡山の合言葉により受け継がれてきた。諦めないサッカー。それが岡山のサッカーである様だ。それを明確な岡山のサッカーと定義する事に挑戦してきたが、何れの監督も確立はできなかったが、コミュニケーションにより方向性は継承できている。

有馬ファジは、どうなるのか。毎試合形を変えて、戦ってきている。少しずつだが、形になりつつあるが、今節は、明確な形を持ったJ3王者である秋田のホームに乗り込んでの試合。秋田は、ホームでは、未だ無失点で、堅守を誇る。岡山も得点力不足に苦しみ安定した守備を活かせず、勝ち点が伸びず、下位に低迷していたが、前節のホーム初勝利で流れが変わったのか。セットプレーでのワンチャンスを活かして、勝利できた秋田戦を振り返っていきたい。

メンバー:2021ファジアーノ岡山「第11節vs秋田(Away)」

2、 秋田の圧力を受けたサッカー

秋田の狙いは、非常にシンプルであった。ボールを奪ったらすぐに前線に放り込む。マイボールにならなくても前線からハイプレスをかけて、ボール奪取を狙いつつ、奪取できなくても繋ぐ事を許さず、ボールロストを恐れた相手チームに、ロングパスを蹴らせる。その狙いを絞り切れていないロングパス(クリア)を、後方の奪取力のある選手が奪い返し、すぐさままたロングパスを入れる。

この無限ループで、対戦相手のチームにサッカーをさせない守備強度が高く、攻守の切り替えが極めて速いシンプルなサッカーである。加えて、ロングスローワーを擁するので、スローインですら、一息つかせない。そういった非常に分かり易いサッカーであった。岡山がロングパスを多用した時は、前からのプレスが緩く、間延びする事となり、守備が脆くなった

その点、秋田は、ロングパスを蹴った後までのアクションまで徹底しており、自分達が何をすべきか理解した上で、その役割に特化した選手を的確に配置し、見事なまでに機能していた。運よくセットプレーで、隙が出来て得点する事ができたが、岡山は、13金山 隼樹のビックセーブや、ポストバー、ファールに助けられるなど、薄氷の勝利であった。

それもその筈である。岡山は、全てロングパスを蹴るという事を意図していなかったと思うが、自陣深くから自分達がボール保持し、ゆっくり運ぶというシーンは、数えるほどしかなかった。それぐらい秋田の前線からのハイプレスは、強力で、ここまでの対戦相手で、一番であった。サイドチェンジすら許して貰えないぐらいスペースはなかった。

スタッツのパス数の差とプレーエリアの差は、岡山が、秋田のプレスに隙があれば、繋ごうとしたという試みの差であり、基本的には、秋田の狙いであるロングパスの蹴り合いというサッカーに引き込まれてしまった試合と言える。90分間通して、このサッカーを貫き通された岡山は、自分達が主体的に攻めるという事を最後まで許して貰えなかった。

もし、スコアレスで、推移していれば、どう打開するかという点で、最後まで見る事ができなかった。というよりは、難解と考えて、後半の早い時間に守備固めの動きに出た。それだけ秋田のサッカーは、厄介で、もし、先制でもされていれば、攻め手を欠き得点をするのが、難しかった試合と言える。

ただ、一度経験した事で、2巡目の時にはサッカーの完成度を深めて、補強や怪我からの復帰などにより、戦力の充実で、しっかり準備して、この秋田戦に臨む必要があるだろう。無策で臨めば、セットプレーのチャンス以前に、何もできないまま、カウンターやロングスローを含めたセットプレーの前に敗れるシナリオも考えられる。

3、 岡山の打開策

岡山は、ある程度サイドのスペースを突くロングパスを狙っていた。15山本 大貴を探しつつ、隙があれば、どんどん入れて行く。幸い秋田の最終ラインは、何もさせてくれないという程の強度ではなかったので、付け入る隙はあった。5増田 繁人に対してであれば、空中戦では勝てないが、サイドのスペースには、出てこないので、そこで競るのを避ける事ができた。

50加賀 健一もベテランで、スピードや高さの面で、不安がある選手なので、ある程度形になりかけるシーンもあった。ただ、6輪笠 祐士と23稲葉 修士の中盤の2人の奪取力の高さの前に事前に攻撃の芽を摘まされる事も少なくなかった。中央からの崩しにおいて、中心的な役割を担っていた20川本 梨誉があまり目立たなかったのは、その辺りにある。

2列目の選手もプレスが早かったので、なかなか仕掛ける所までは行けなかった。14上門 知樹や27木村 太哉がサイドから仕掛ける場面や、パス交換する場面で、連動したシーンも数えるほどであった。27木村 太哉選手が、相手陣地深くに侵入する事が持ち味であったが、いつもより、低い位置で、なかなか仕掛けるという局面まで運ぶのも難しかった

ボールを持てた時には、SBを交えて攻撃参加を試みたが、シュート数の少なさに象徴される通り、その裏のスペースを狙うというのをテーマに秋田に攻められた。ただ、岡山の両SBの判断の良さは、ここまでの試合でもサイドの裏を突かれるシーンの少なさに象徴される通りであり、回数は限定されるが、この試合では、2,3度突かれて危ないシーンがあった。

28疋田 優人と7白井 永地の楔形パスやロングパスで、形作りを試みていたが、通らないパスも多かった。28疋田 優人に関しては、矢島 慎也の様に見える選手ではないかと期待していたが、決定的なスルーパスというのが、ここまで無い事を考えると、技術系の選手の様だ。デビュー戦の様な、ミドルシュートというのも見る事もできない。

ただ、28疋田 優人の一番の武器は、メンタルティの強さではないかと思う。ミスパスを恐れない積極性と、ボールを失う事を恐れないボールキープ。前から奪う守備の積極性もある。また、チームとして、前から守備に行くという戦い方に変貌させたという点で、28疋田 優人の動く守備の中心選手と言える。6喜山 康平の動かない守備との兼ね合いには、今後も注目したい所。

4、 勝負を分けたセットプレー

意外にも勝負を分けたポイントの1つは、秋田が攻める時のセットプレーであった。ある程度、人数をかけてくるので、ボールを奪った後にカウンターを仕掛けるというシーンを何度か作れた。流れの中では、隙が少ない秋田の守備組織であるが、セットプレーは、両チーム特殊なポジショニングをするので、不確定要素が強くなりがちである。

どれだけ組織された守備組織であってもセットプレーで、カウンターを受けてしまうと、難しい対応が迫られる。27木村 太哉のスピードに乗った持ち上がりや14上門 知樹が持ち上がるとするシーンや、前線に残った選手へのロングパスなど、流れの時よりは、芽があった。シュートで終える事が大事と良く言うが、この試合では、特にその重みがあった

確実にボディブローの様に効いていたセットプレーでの攻防。岡山の得点もセットプレーであった。普段の繋ぎあう展開の試合であれば、普通に近くの選手にパスをすることが多い距離であったが、この試合は、前述の通り、流れの中からチャンスを作るのは難しく、遠い距離であっても重要な得点機会と考えて、DFを上がらせる選択をした岡山。結果的に、それが吉と出て、15山本 大貴の今季初ゴールに繋がった。

ただ、失点した後の秋田の攻撃も迫力があった。秋田の決定機は3度あった。13金山 隼樹のファインセーブのシーンと、ポストバーに当たったシーン。最後、ファールで、無効になった幻のゴールシーン。どれも失点していても不思議ではなく、特に最後に関しては、DFラインを突き破られていた。

33阿部 海人を投入したタイミングも当然議論となるべき所であるだろう。同点に追いつかれた時には、早く守備に入り過ぎたという批判対象に当然なっていた。結果的に逃げ切った事で、逃げ切りに成功したという英断となった。本当にギリギリの勝負で、セットプレーしか攻撃の糸口がないという試合で、こういったチームに対して如何に攻めるかというのは、今後の課題となった。

5、 総評(後書き)

結果でこそ勝利であったが、内容は、秋田のゲームで、完敗と言っても良い。岡山の良さである堅守で守り切れたと考える事もできるが、前述した通り、なんとか守り切ったという試合で、最後まで分からない難しいゲームであった。開幕の時に2点差の勝利という結果であった時に、今季は違うぞとも感じたが、蓋を開けてみれば、得点力不足に苦しんでいる。

上田 康太ロスというのも当然あるかもしれないが、そこの引き換えに、安定した守備を手にした岡山。中盤をドリブルで、崩されて失点というシーンは、ほぼ見なくなった。逆に、攻撃時の縦パスやスルーパスというシーンも激減した。この辺り、実は、赤嶺 真吾の存在も大きかったかもしれない。今ではあまり見る事ができなかった収めるプレーが、岡山では見せていた。

前線の中央で収めるというよりは、サイドのスペースを突いての攻撃が主体の岡山だが、20川本 梨誉が出場機会を増やす中で、中央の崩しに希望の光が見え始めた。この試合では、中央での崩しに着手こそ出来なかったが、わざわざ相手のストロングポイントを無理に攻める必要がないので、相手の弱い所を突いて攻める方が、理に適っている。

秋田のゲームではあったが、岡山のできる事をしっかりやる事によって勝利に繋げる事ができたゲームと言える。今季の岡山は、攻め筋が分からず試行錯誤した側面と、相手に合わせて戦い方を微調整して戦ってきたと見る事もできる。後は、チーム状況にもよる部分もあるが、この辺りは、観る人によって、捉え方が違って来るのであるからサッカーとは、面白い。

ホームにこの連勝という良い流れを持ち込み3連勝できるかどうか。町田も強力なスポンサーが付いたことで、ここから上を見て行くクラブの1つである。岡山も上を見て行きたいが、依然として課題が多く、対戦チームを圧倒する事ができるだろうか。来季に繋げるためにも今後の試合も見守っていきたい。

文章・図版=杉野 雅昭
text・plate=Masaaki Sugino

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