2024ファジアーノ岡山にフォーカス50『 前に出る一歩と支える粘り強さ~完走(感送)~ 』J2 第36節(A)vs 横浜FC
1、ファジ史上最も苦しかった快勝~岡山らしさ~
岡山が4得点、横浜FCが2得点。両チーム合わせて6得点入った熱戦は、スコア以上にハードな一戦となった試合でした。
ただ、ファジ史上最も苦しかった4得点で、勝利であったと思います。
4得点してから緩んだ部分があったのは否定できないものの、足が止まり流れを渡すには早過ぎる時間であった。
岡山のメンバーに目を向けると、24番 藤田 息吹 選手とリザーブメンバーであった11番 太田 龍之介 選手がメンバー外となった。代わって6番 輪笠 祐士 選手がスタメンに、29番 斎藤 恵太 選手が、久々のリザーブメンバー入りとなった。特に29番 斎藤 恵太 選手が、久々のメンバー入りで、相当な気持ちの入った一戦になったはずです。
一方で、横浜FCの5番 ガブリエウ 選手が累積警告で、出場停止であったことで、3番 中村 拓海 選手が、スタメンとして、右CBに入った。
両チームの試合の入りとして、対極と言える意識で試合に入った試合でしたが、それがこういった展開になるとは、岡山サポーターの立場である私としても予想外でした。
では、その辺りの理由を探りつつ、試合を振り返っていきたいと思いますが、個人的に岡山らしさを感じた試合でしたので、そこについて触れていきたいと思っています。それでは、よろしくお願いします。
2、横綱 vs 挑戦者~対極の指針~
今季のJ2において、横綱のサッカーができていたのは、1位と2位の清水と横浜FC。そして、大失速こそしてしまいましたが、長崎の3チームです。
この3チームは、対戦相手のサッカーをしっかり受け止めて、力で押し返して、押し通して勝ち点を積み重ねて来たチームです。そういったサッカーに憧れたくなるところはありますが、そういったサッカーを目指して、バランスが崩壊して、順位だけではなく、カテゴリーを落としてきたチームも少なくはないのが、魔境と呼ばれるJ2の厳しさです。
また、私の認識としては、横綱サッカーの3チームのサッカーの特徴は、長崎(攻撃&個の力)ー清水(バランス)ー横浜FC(守備&組織力)というイメージですが、厳密に言えば違ってくる部分はあるかもしれません。
J1昇格はおろか、J2残留の厳しさも増す中で、岡山は「相手チームよりも走る」という運動量・献身性・全員攻撃全員守備・一体感・連動性といった部分で、相手チームを上回ることで、J2で10年以上戦うことができています。
果たして、この試合ではどうだったかというと、立ち上がりこそ、デュエルの部分で、なかなか勝てない。いえいえ、五分五分で、互角という堅い立ち上がりになりましたが、他のクラブの対戦と比べて、ドリブルやキープ、パスといった攻撃のアクションで、最後の所で突破できないというシーンが多く、難しさを感じていました。
それでもこの日の岡山は、後先考えず、1つ1つのプレーに対して、常に全力プレーでトライし、やり切ることで、力の差を覆す予兆を感じるプレーが多かったです。
前節も迷いなく、やり切るプレーを徹底することで、いわきFCを圧倒しましたが、流石に横浜FCには、圧倒こそできなかったですが、やり切ることができる=迷いがない=プレーの初動が速いことで、どちらのファールになるかという判定の部分で、「少しだけ足が先に伸びている」や「少しだけ体を前に入れられている」の部分で、どっちのファールの判定でも不思議ではない部分で、プレーオンになったり、横浜FCの選手のファールで、岡山ボールで、プレーが始まったシーンも多かった。
横浜FCサイドからすれば、非常にフラストレーションの溜まるジャッジが多かったと思いますし、審判のジャッジの基準もあったと思いますが、見方によっては、岡山の選手のプレーというか気迫によって生み出された「僅かな差」の積み重ねであったと思います。
先制点のシーンの場面も、横浜FCの立場からすれば、ファールに感じた部分もあると思いますが、体を強く入れたところ(体を当てたところ)をファールかどうかの微妙な所であったと思います。その後のプレーに関しては、むしろ18番 田上 大地 選手を掴もうとしてますし、本当にギリギリの所であったと思います。
ただ、この所で、最初のアクションから全力でトライしていたからこそ、倒れず次のプレーに移れる体勢を維持できて、次のプレーへと移行することができました。
そのスルーパスは、27番 木村 太哉 選手を結果的に囮にして、まるで死角とか飛び出したように完璧に抜け出すと、GKの21番 市川 暉記 選手まで振り切ると、無人のゴールに流し込んで、岡山が先制点を決めることに成功した。
勇気を貰った岡山が、1つ1つのプレーのデュエルの部分で、マークを剥がすことができるプレーが増えてくる中で、少しずつ横浜FCの陣地に近づくことができていく中で、得たCK。
この日の14番 田部井 涼 選手のプレースキックは冴えわたっていました。FKで、オフサイド?(ファールのどちらか)で、横浜FCのボールになったシーンのように、対応の難しいボールを蹴ることができていた。
24番 福森 晃斗 選手までとは言えなくても、高い軌道から球落下する軌道で、味方が抑えていたポイントへ蹴ることができたことで、結果的ではあるものの味方の27番 木村 太哉 選手を競り合いの前方の防波堤及び土台にできて、22番 一美 和成 選手が、高く跳躍することができた。その結果、しっかり合わせて落とすことができて、その先に飛び込んだ43番 鈴木 喜丈 選手が、軌道を変えて押し込むことに成功した。
アディショナルタイムでの追加点は、時間帯も合わせてぐっと勝利に近づく追加点、こちらは、文句の付けようのない幸運をも手繰り寄せる精度で生み出したCKでの得点であったと思います。
横浜FCの「横綱サッカー」の懐に入っていく「挑戦者のサッカー」の岡山は、懐に入れただけではなく、良い形で組めたことで、「受け返せるか」と「押し通せるか」という「対極の方針」の攻防の部分で押せた前半となった。
その結果、横浜FC相手に、これ以上ない有利なスコアで、勝負の後半へ。
3、意識と疲労で重くなった一歩~限界の先~
0-2は、怖いスコアとよく言われるだけに、次の1点が、どちらに入るかというのは、ポイントであったと思います。
そういった中で、最高のスタートを切ったのは、岡山でした。43番 鈴木 喜丈 選手から22番 一美 和成 選手へと縦パスを付けられたものの、受けた場所は、四方を横浜FCの選手に囲まれた位置でした。
通常であれば、その危機を脱するために、味方へのパスがファーストチョイスになることが多いですが、前節のレビューでの華麗な局面打開を表現したファジ造語の一美ステップをこの場面でも発動。
このシーンでも岡山の選手は、フォローに動くどころか、パスを貰う動きを見せた。横浜FCサイドからすれば、意表を突かれたプレー選択であったことで、対応が遅れただけではなく、バイタルエリアの所で、岡山の味方選手が、ここでも囮となったことで、シュートコースが空き、そこへのコントロールショットを放った22番 一美 和成 選手のシュートは、綺麗な軌道を描き、ゴールネットを揺らして、移籍後初ゴールを決めることができた。
待ちに待った岡山での初ゴールは、更に岡山の勢いを加速させた。
その8分後に訪れたCKのチャンスで、14番 田部井 涼 選手のピンポイントのキックに、横浜FCのセットプレーの守備の僅かなスペースへのポイントへ飛び込んで、勢いよくゴールへ向かった18番 田上 大地 選手の十八番であるダイビングヘッドで、ダメ押しと思われた4点目を決めることができた。
このまま押せ押せで、5点目かという流れになったが、高い位置でカットした際に、やや消極的なプレーと拙攻で、決定機でシュートすら打てなかったシーンの直後、交代で反撃に出てきた横浜FCの「押し返し」に弾かれた岡山。
「組織」対「組織」と「個」対「個」で組むことができず、何れもこぼれ球をドリブル突破でDFラインを抜けたり、スルーパスで裏に抜け出したように、こぼれ球に乗った意地の気持ちが最高の決定機を横浜FCに作りだして、立て続けずに8番 山根 永遠 選手と10番 カプリーニ 選手が決めて、2-4へと一気に分からないスコアに戻した。
この2得点の間の、熱かった岡山のファジレッドの流れから横浜FCの白・水色・青色のクールな流れへと一変していたが、その流れをすぐさま感じ取って、5分間の間に計3選手、計2回の選手交代で、局面を落ち着かせた木山マジック。
総合力で勝る横浜FCの勢いこそ、リードしている側であったことと、前半からハイペースであったことを相まって、守勢の時間も長く、一歩がなかなか出ない。デュエルの所で、接触どころか、触らせてもらえないような、速さ・強さ・高さ・巧さの全てが、岡山に襲い掛かってきた。
本当に苦しくて苦しくて苦しかった。2失点してからの残り時間。しかし、各選手が、リードしていても諦めない守備対応、粘りの気持ち、姿勢を崩さなかったことで、なんとかリードを守り切ることができた上で、最後には29番 斎藤 恵太 選手にも惜しいシーンもありましたが、決め切れなかった。
「挑戦者」の「意識」から「勝利」への「意識」へと変わった瞬間。横浜FCの「組織」と「個」の「力」と共に岡山に襲い掛かってきた「疲労」。
得点と時間の重みを感じた試合。試合後は、まるで負けたかのように、その場に倒れ込んだ岡山の選手たち。
先行逃げ切りでは甘く、最初から最後まで全力疾走した岡山は、酸欠になりながらも勝利をを手にすることができた。
その結果、次節へと希望を残すことができた。
限界の先に待っているものは、果たして…
4、横浜FC戦のヒーロー~完走(感送)~
・MOMアンケート
①14番 田部井 涼 選手(DH)
『 完走と感送をやり遂げた左足 』
苦しい時の一歩が出るのも、良いプレーができることが多いのは、利き足でのプレー。
この試合でも数々のセットプレーで、横浜FCの24番 福森 晃斗 選手のお株を奪うセットプレーの2得点をお膳立てできた。得点に繋がらなかったシーンでも数々の決定機を、出場した試合で演出することが増えてきている。
きっと僅差のゲームや勝負どころのゲームで、彼の左足から多くの得点が生まれるはずだ。
そして、もう1つの武器は、運動量だ。左足で、プレーの狙いや意図を体現する左足に、感じた気持ちを送り出す「感送(造語:気持ちを込めて送り出す届ける)」。
彼の左足から、残り試合でもパス・プレースキック・シュートだけではなく、献身的な運動量や守備でのプレーで、感送されたプレーで、チームを勝利に導き完走してくれるはずだ。
②18番 田上 大地 選手(中CB)
『 完走と感送の心身の元気印 』
攻守共に多くのプレーで、完走し、守備と攻撃で、相手選手より一歩前で到達し、プレーできたことで、多くのシーンで感送のビックプレーで、岡山の時間を作った。
攻守でのやりきる「完走」のプレー。
攻守のプレーで実行する「感送」のプレー。
どちらも熱くエネルギッシュで、アグレッシブだ。
今節も火傷しそうなぐらい強い気持ちの籠ったプレーで、攻撃では1G1Aの活躍、守っては、横浜FCの反撃を2失点に抑えて、勝利に貢献した。
③22番 一美 和成 選手
『 完走からのゴールとゴールへの感送 』
一美ステップでの局面打開で、シュートコースへの最高難易度の局面を打開すると、最後は、そこしかないシュートコースへ、気持ちへのブレなく、落ち着いて狙いすましたシュートで、加入後初ゴールを決めた。
一美ステップからのゴールは、最後は、GKの手をシュートでかわして、得点となったが、この3点目が決勝点。
ホップ・ステップ・ジャンプの躍動する活躍で、1G1A。三段跳びならぬ、勝ち点3へとホップ・ステップ・ジャンプできた。
④-①木山 隆之 監督
『 完走の徹底と感送の決断 』
今までの岡山であれば、勝利したメンバーを弄ることなく、次節に入ることが多かったが、この試合では、しっかり、準備したメンバーで試合へと送り出した(感送)した。
しっかり、90分間、「完走」できる選手を選出した上で、強度と量共にハードではあった試合で、そこを徹底する準備と、そこをサポートする采配の「感送」で、勝利という結果に導いた。
④-②19番 岩渕 弘人 選手(シャドー)
『 完走(受け手)と感送(出し手)の完成系 』
18番 田上 大地 選手からの絶妙なミドルスルーパスに対して、囮役となった27番 木村 太哉 選手と共に連動したことで、走り抜けることができた得点のように、受け手と出し手での関係を最後まで役目を完走し、いつもより早い交代であったが、気持ちを託して、感送した。
もはや1つ1つのプレーが、作品と言えるぐらいで、多くの選手を惹き付ける完成度を誇る。
+α:6番 輪笠 祐士 選手(DH)
『 完走の守備で示す無言の感送 』
24番 藤田 息吹 選手に代わってスタメンとなった6番 輪笠 祐士 選手の力強い守備、運動量、縦横無尽に走り回っての守備、強烈なミドルシュート。
やりきる完走と次のプレーへ繋げる感送のプレーで、中盤からチームを支えた。
久々の出場でありましたが、前節の15番 本山 遥 選手のように、運動量と強度、速さをベースとした守備から、チームの勢いと強さを作った。
・あとがき
今節も岡山らしく「走る」プレーが、印象に残った。2失点しても4得点できれば、勝利できる。横浜FCに出場停止の選手がいたことや、自動昇格が限りに無く近づいていて、優勝を意識する中での難しさがあったことを強く感じた。
岡山も試合展開の中で、挑戦者という意識が緩んだ中で、疲労もあって、押し込まれたことは確かに課題かもしれないですが、後悔なくやりきる。そういった選手を各選手から感じた。
この先行逃げ切りのサッカーで、残り試合を戦い切っていくのか。それとも違う形で、次節以降戦っていくのか。
ここに来て、どんどん勝負にでる木山ファジ。ファジアーノ岡山ファミリーとして、挑戦する気持ちを忘れず、選手と共に一緒に戦いたい。
文章・図=杉野 雅昭
text・figure=Masaaki Sugino
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