2024テゲバジャーロ宮崎にフォーカス③(J焦点⑦24限定連載)『 心が動かされた得点~吹き抜ける風~ 』J3 第29節(A)vs 奈良クラブ
1、サッカーを心から楽しむために~夢の結集~
2024シーズンのテゲバの補強のほとんどは、期限付き移籍での獲得です。
昨シーズンからの(育成型)期限付き移籍の選手を含めると、スタメン選手の半分以上の選手が期限付き移籍選手です。この背景として、やはり観客動員やクラブとしてのスポンサーが、J3でも多くないことも関係しているでしょう。
しかしながら、J2を長く観てきた私からしても降格を恐れてのサッカーのそれではなく、中位以上のサッカーの方向性に近く、前節終了後に44番 井上 怜 選手が、前節の試合後にXでポストした通り、とても楽しいサッカーをしているのがテゲバです。
期限付き移籍を延長して、テゲバでのプレーを選択した選手や10番背負いながら期限付き移籍した選手もいたりと、J3の覇権をとるどころからJ3に留まることの難しさを感じる成績が続いてきたことが、3節前から観戦を始めた私にも感じる部分は、正直あります。
しかしながら、経験豊富なベテラン選手に頼るのではなく、将来性のある若い選手主体の補強であったことで、夏場からの逆襲となる4連勝を生み出したとも感じています。
クラブとして、少しずつでも前進していかなければ、同じ選手をずっとテゲバの選手であることは、正直なところ難しい面もあるかもしれないですが、このサッカーを続けていれば、テゲバのサッカーに惹かれて、才能のタレントが集まってくるという予感もします。というか、現に集まっているのではないでしょうか。
順位こそ17位ですが、本当に魅力的なサッカーができています。前節の勝利後に「あんなとこに2度と戻りたくない」という趣旨のポストを多く目にしましたが、私からすれば「こんな面白いサッカーをしているクラブが、こんなところにいたら駄目だ…!」と、感じています。
順位が全てとご指摘を受ければ、そこに対しての反論こそできないですが、それでもテゲバを応援するものとしては、クラブのテゲバスタイルを心から楽しんで、信じて応援していくことはできます。それが、何よりの最大の補強で、最大の後押しでもあって、最高の応援ではないかと考えています。
本当に10番が似合うような選手が多く、前10番の選手が戻ってくる可能性を含めて、10番が、チームにいて欲しい。だって、楽しいのですから。
今日は勝てなかったですが、楽しかった。その激闘の試合を振り返っていきたいと思います。
2、襲い掛かるJ2流行のスタイル~バランスvs創造性~
私が、J3を観始めて、相模原〜琉球〜奈良と、この試合が3試合目になります。そこで、J2で多く観られるサッカーに初めて直面した。
具体的には、前からのプレスと中盤に侵入してからの寄せの速さが際立つ、全員守備全員攻撃のサッカースタイルであります。J3では、技術力のあるベテラン選手に合わせた運動量のサッカーを展開することや、スペシャルなFWの選手を引っ張ってペース配分する傾向にありますが、J2だと前からのプレスを維持するために、前線の選手を積極的に交代します。
奈良は、このJ2のスタイルに近い印象でしたが、奈良の3トップは、やはりスペシャルだったようで、試合終盤まで引っ張っていましたので、ここがテゲバの得点にこそならなかったですが、反攻の流れや勢いを手繰り寄せることができたポイントと言えるでしょう。
奈良の1トップの19番 松本 ケン チザンガ 選手の髪型もインパクトありましたが、プレーはそれ以上で、豊富な運動量、速さ・強さ・高さに納得。J2に近いものを感じた理由として、そのサッカーの最上位に位置する秋田からの育成型期限付き移籍ということで、いかにもと感じました。
本当に、この試合は、攻守での19番 松本 ケン チザンガ 選手の圧力は脅威でしたが、テゲバも、全員守備の献身的守備の堅さでは譲れない部分はありますから、前半で勝ち越しこそ許しましたが、勝ち点1に繋がる粘り強い守備ができていました。
Xのフォロワーの翔さんとのXでの意見交換でもあったのですが、守備ブロックを構築できてから失点を減らすことができた部分があったのではないかという話。
しかし、この試合の失点をシーンを観てみると、守備ブロックというか人数こそ揃っていましたが、セットプレーの守備から2次3次攻撃と続いたことで、奈良も人数をかけていましたし、奈良にも多くの選択肢があったことと、テゲバが、連続した攻撃の中で、適正ポジション以外で守ることでの安定感を欠いていた部分もあったかもしれません。
個で守るという部分では、不安があるからこその守り方ですから、同じ人数や多くの人数をかけた攻撃に対して、堅さを維持し続けるのは難しい部分はあったでしょう。ボールホルダーへの多くの選手の寄せができていたテゲバでしたが、最初の失点のシーンでは、これが遅れていて、1人しか反応できていなかったことで、シュートコースを空けてしまったことが、失点に繋がってしまいました。
4連勝で魅せていたテゲバブロックは、もっと堅いですから悔しい失点でした。
ただ、この日のテゲバは、ついにセットプレーで決めることができました。この試合の得点で5得点目なのか。ここまでの5得点なのか分かりませんが、確かに全体的な選手の身長を考えますと、5得点というのは、確かに物足りないセットプレーの得点の数字であるように感じました。
それでも1章で書いた通り、キッカーと高さが夏場の補強で、テゲバの武器と言える高みに近づいていると思いますし、そのどちらもがピンポイントであった素晴らしい同点ゴールでした。これが、15番 辻岡 佑真 選手にとって、プロ初ゴールとのことですが、15番 辻岡 佑真 選手にとっても、チームにとっても大きな価値と意味を持つ得点になりそうです。
このまま同点から逆転できる勢いを作れていましたが、勝ち越したのは、奈良でした。奈良の自陣深くのGKからのFKとして蹴られたボールを、ゴール前で繋がれて、今度も人数が揃っていましたが、壁を作るべきポイントがずれていて、ずれているポイントから本来寄せるべきポイントへスライドして対応すべきでしたが、逆に埋めるべきポイントから動いたことで、そのスライドの守備が遅れた上に、シュートコースを絞り、消すことが不十分で、奈良のテゲバが古巣の31番 岡田 優希 選手にファインゴールを許してしまいました。
若干の失意と大きな悔しさの感情を抱きつつ、試合は、反撃の後半へ。
3、楽しいだけでじゃないテゲバ~勝ち点への執念~
後半は、立ち上がりから攻めるテゲバ。カウンターを狙う奈良という構図ができていました。途中で、同点に追いつけそうな雰囲気はありましたが、1点が遠く、時間だけが過ぎていました。
後半の最初の交代は、奈良の方で、後半16分でしたが、それ以降は、30分以降と、J2と比べて遅めですし、5人枠をフルに使わない点もJ3ならではに感じます。
この辺り、各チームは、運動量と質の維持が難しく、こういった交代の形になるのだと思いますが、この試合で、この交代の意図が上手く機能して嵌ったのは、テゲバでした。
逆に、奈良は、イエローカードを貰っていた49番 下川 陽太 選手を引っ張ったことで、試合終了間際の退場劇に繋がった側面は否定できないでしょう。イエローカードを貰った選手をそのまま出場させるリスクと全体のクオリティやバランスを天秤にかけての判断であったと思いますが、結果的に、テゲバにツキが回ってきた瞬間でした。
そして、同点ゴールはまた44番 井上 怜 選手の左足のCKから生まれました。途中交代で入った18番 吉澤 柊 選手の倒れながらの執念の折り返しを、同じく途中出場の34番 遠藤 光 選手が、気持ちと頭で押し込んでの同点打。
34番 遠藤 光 選手の嬉しいプロ初ゴール。今季頭からの期限付き加入での1年目の選手ですが、「えんぴか」という愛称からも期待されている選手であることが、それだけでも分かります。そういった意味では、34番 遠藤 光 選手だけではなく、サポーターにとっても嬉しい得点であったことが伝わって来ました。ここからより上を目指す流れを呼び込む同点打に感じましたし、今後の得点に期待したいですよね。
残り時間僅かでしたが、逆転しても不思議ではない攻勢を仕掛けるも余りに短すぎました。せめて5分同点が早ければ、5連勝もあったかもしれない。嬉しい引き分けでもあって、悔しい引き分けであった試合でしたが、順位の近いチームに対して、負けなかったのは非常に価値がありますし、決めた選手も良かった。
チームとして可能性を、各選手がチームとして広げていく。夢と希望が、大きくなっていく。今後のテゲバには、そういった感情が、私の中で、大きく膨らんで行く中で、今節を終えた。
出来たことと、出来なかったことがあった奈良戦でしたが、個人的にはポジティブに捉えたい1戦ですし、少しでもそこを、お伝えできていた部分があれば、レビュアーとして嬉しいです。
テゲバブロックのシュートへの壁ととしての厚みと、面で抑えるブロックとしての幅を広くする、ブロックではありますが、表現としては、精度と密度を上げていくことで、より勝てるチームでなれると感じました。
どんな相手にもスピードとテクニックの2列目の仕掛けと、前線の強さと高さで戦える。個人的にも、攻撃陣の可能性がより広がった一線でもありますし、もっともっと強く楽しいサッカーができる。そう期待しても良いでしょう。
勝ちたかった試合でしたが、負けなくて良かったではなく、勝ちたかった試合とあえて言いたい。苦しい試合で、連勝は止まりましたが、勢いはまだ止まっていない。そういった試合であったと思います。
次は、ホームですし、きっとやってくれるはずです。
1つ1つの得点と失点に、心が動いた試合でしたが、テゲバを通して吹き抜けている風は、心地よい良い風に感じた方も多かったのではないでしょうか。多くの方が、そう感じていれば、嬉しく思います。
最後まで読んで下さり有難うございました。
文章・図=杉野 雅昭
text・figure=Masaaki Sugino
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