2023ファジアーノ岡山にフォーカス28『 自滅に誘導する栃木の戦術 』J2 第18節(A)vs栃木SC

 岡山の悪い所が出た。そう結論づけたくなるが、私は、栃木のサッカーへの完敗であると感じた。岡山にも確かに悪い点もあったが、それ以上に栃木の目指すサッカーというのが、相手チームを自滅に追いやる恐ろしい狙いのあるサッカーではないかと感じた。

 今回のフォーカスでは、その点について触れていきたい。

 全文無料公開。スキーやフォローや、購読などをして頂ける記事を目指しています。一人でも多くの方に読んでいただけると嬉しいです。

1、被シュート0の失点~罠~


 栃木戦のダゾーン中継を視聴していて、印象に残っている言葉がある。「過去にもオウンゴールで勝った試合がある。」「シュート0本で勝った試合がある。」2度ある事は3度あるというが、まさにこの試合もそれに近い試合となった。

 岡山が、失点するまで被シュートは0であったが、「岡山が、シュート0本に抑えることができていた」のか。それとも「栃木のシュートに対する意識が低かった」のか。

 私は、どちらかと言えば、後者であるように感じた。理由としては、守備の意識が高いことに対して、ボール奪取後に明確な攻撃の形が、栃木に見て取れなかったからだ。

 例えば、秋田であれば、ロングパスを蹴っていく。藤枝であれば、細かくパス交換やドリブルで、ゴールに迫って来る。しかし、栃木は、こうした明確な狙いが存在しないように映った。

 一方で、明確であったのが、守備意識だ。前からプレスをかけていく意識も高く、ボールホルダーに対して、人数をかけて奪いに行く意識も高い、ロングパスに対しても強く競っていく、セットプレーやクロス対応を含めて、集中力は極めて高かった。

 良い守備からでしか良い攻撃に繋げられない。「カウンタ―」に特化しているため、主体的な攻撃は難しい。しかしその分、ハイライトを見ただけでも分かる通り、守備にかける人数や中央の守備密度は極めて高い。

 解説の方が、「岡山は繋ぐチームではないので助かった」という趣旨の解説の言葉を残されていた。

 これは、どういう事かというと、栃木の守備スタイルは手堅くパスを繋がれた時に、防戦一方になり易いことを意味する。攻撃の形を持たないことで、攻撃時のクションの成功率や攻める時間も短くなる。

 一方で、ロングパス主体のチームに対しては、強く守れる中で、お互いに決定機をなかなか作れないという試合になり易い。得点の形が明確にできなければ、それだけ勝ち点3からは遠くなる。

 この試合の岡山は、ロングパス主体の攻め方もショートパスを繋ぐ、ポゼッションの攻め方もできる。そして、1対1の強い守り方もできる。

 何かに特化していない中で、「どう攻めるか?」「どう守るか?」という部分で、相手の戦い方に応じて、その隙を突くという岡山の戦い方が、この試合ではできていなかった。

 色々と選択肢があるからこそ、選手の判断が悪くなり、オウンゴールが生まれて、栃木の攻撃の狙いが曖昧だからこそ、守備の対応を誤ってしまった。そして、厳しい守備に対して、焦れてしまい冷静さを失った事で、退場に繋がった。

 今季の岡山が、明確な「攻め」ではなく、「受け」の要素の強いサッカーだったからこそ、栃木の守備特化のサッカーに苦しみ、ミスの確率が高まり、試合を落としてしまった。

2、岡山の選択肢~ピース~


 この試合で、岡山として、どう勝利を目指すべきであったのか。ここに関しては、22佐野 航大や48坂本 一彩の離脱が、正直痛かった試合となった。

 栃木の攻撃への迫力を考えた時に、3バックで、状況に応じて5バックに守るという展開は、やや手堅すぎた側面は否定できない。

 やや攻撃の意識が栃木の方があったとはいえ、攻撃と守備のウェイトの部分では、守備に偏っている。栃木のチャンスを見ても個で圧倒されたり、人数をかけた攻撃があった訳では無く、どうしても単発の仕掛けが目立った。

 それこそ決勝点も5柳 育崇が、普通に対応していれば、何も起きなかったシーンだ。むしろ、勝利するためには、両SBを攻撃的にして、人数をかけた攻撃を仕掛けたい所であったが、22佐野 航大や48坂本 一彩といった前で計算できる選手が、いなかったことで、2高木 友也を左WBで起用せざる得ず、もしかすると、3バックですら積極的な策ではなかったかもしれない。

 そう考えると、前線で攻撃に絡む選手をボランチで起用せざる得ないのもマイナスと言える点かもしれない。6輪笠 祐士の怪我もやはり痛い。

 選手層の厚さという部分で、この試合の栃木に対しては、分が悪かった。そういった試合に感じた。

 22佐野 航大や48坂本 一彩が戻って来るのであれば、11人の選択とリザーブ選手の交代のタイミングやシステムなどの戦術。ここは、間違いなく上積みできる。44仙波 大志や27河井 陽介、14田中 雄大との相乗効果は、もしかすると、私が思っている以上に大きいものとなるかもしれない。

 首位の町田を破った次節の徳島は、攻守のバランスが良くなってきていることが予想され、その攻撃の破壊力は、今やJ2でも高いと言えるのではないか。

 その徳島に対して、3バックは、有効な選択肢となりえる。ただ、23ヨルディ・バイスが不在という点を、どうチームとして補って行くのか。43鈴木 喜丈の左CBの可能性を含めて、栃木戦の反省をどう本日の試合に繋げるか、注目である。

3、敗因と勝因の先~課題~


 選手や監督の現場では、この試合の勝因と敗因について、どう捉えているのか。そこにフォーカスを当てて、今回のレビューは、締めくくりたい。最後までよろしくお願いします。

①岡山の1失点目(栃木の1得点目)について

記者(インタビュアー)
--2失点ともミス絡みでしたが、1失点目などはどう振り返りますか?
44仙波 大志 選手(岡山)
「相手の守備の行き方などを探り探り進める中で、そろそろ僕も受けやすいところを見つけていけるかなと思っていたところで、そこでミスがあったと思います。」

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第18節 栃木 vs 岡山(23/05/28)試合後コメント(選手)
より一部引用。

 守備強度の高いエリアへ進入していく時に生じたミスという解釈で間違いない。守備にほぼ比重を割いているチームに対して、縦にパスを入れて行く、前進していくという難しさを感じるコメント。

②岡山の得点(栃木の失点)について

41藤田 和輝 選手(栃木)
「あの失点シーンは中の状況があまり見えていなかったし、クロスに対して後手を踏んでしまったと思います。」

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第18節 栃木 vs 岡山(23/05/28)試合後コメント(選手)
より一部引用。

 このクロスは、2高木 友也と16河野 諒祐にはないクロスでした。映像を確認すると、低い軌道で速いクロスで、42高橋 諒のクロスは、山なりになりがちな2選手とは違ったクロスで、流石にJ1を知っている選手と感じました。

 低い軌道であれば、相手にクリアされる可能性も高くなりますし、対称の選手まで届かない事や合わし難い可能性もあって、そこが逆に守り難いクロスであったことが、栃木のGKの41藤田 和輝のコメントから伝わってきた。

③岡山の2失点目(栃木の2得点目)について

記者(インタビュアー)
--得点シーンは1本のロングボールからでした。
37根本 凌 選手(栃木)
「ボール自体がストレートだったので、相手GKに行っちゃうかなと思っていたんですけど、相手選手がGKと連係がとれていない印象があったし、ボールが滑らないで止まってくれたので、信じて走ったことがああいうゴールにつながったかなと思います。」

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第18節 栃木 vs 岡山(23/05/28)試合後コメント(選手)
より一部引用。

 「連携がとれていない印象があった。」これは、必ずしも守備対応の時だけではない。最初の失点の時を含めて、チームとしてやりきれなかった試合であった事が、改めて浮き彫りになった。

 言い換えると「迷いがあった」とも解釈できる。チーム事情があったとはいえ、勝機もあっただけに色々と悔やまれる試合であったというのが、岡山サポーターとしては、正直な所だ。

④「①&③」の岡山の失点(栃木の得点)について

時崎 悠 監督(栃木)
「今日奪ったゴールはラッキーなゴールでしたが、ああいうゴールも、思いや気持ちが乗っているからゴールにつながっていると思います。」

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第18節 栃木 vs 岡山(23/05/28)試合後コメント(監督)
より一部引用。

 気持ちと表現されているが、この試合通して、栃木の守備強度が90分間通して途切れなかった。それこそ、岡山の守備のような粘りがあった。攻撃にどうパワーを出していくのかという課題は、依然として残っているかもしれないが、栃木としては、次に繋がる試合になったかもしれない。

記者(インタビュアー)
--今季は今日のようなミスからの失点が目立っているように感じます。
木山 隆之 監督(岡山)
「全部同じではないと思います。今日に関していえば、もっとシンプルに縦にボールを入れながらプレーをすれば良かったと思います。ちょっともったいないなと思います。」

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第18節 栃木 vs 岡山(23/05/28)試合後コメント(監督)
より一部引用。

 パスを繋ぐ事もできる中で、ロングパスも含めて、シンプルに入れて行く勇気も必要である。そこは、確かにその通りで、パスが44仙波 大志や27河井 陽介のダブルボランチで繋げていても、ロングパス入れて行く。

 もしくは、密集していても縦パスを狙って行く隙を探す。ロングパスの選択を含めて、もう少しシンプルに、リスクを小さくしていくという事も確かに必要であると感じた。

⑤岡山が敗戦したこと(栃木が勝利したこと)について

木山 隆之 監督(岡山)
「残念な試合となった。自分たちのプレーもそうだし、色んな事がストレスの多い試合だったが、負ける時はこういうものなので、しっかり切り替えてやっていきたい。
予想と違ったところもあるが、それも含めて選手にはいつも相手を見てプレーすることを要求しているので、自分たちの思ったような形にならず、その中でミスで失点して前半を終えた。ただ、こういうことはあるので、後半切り替えて心新たにやり方も変化して、同点に追いついたところまでは良かったが、また1つミスで失点して、退場もあって難しい展開になった。もう少し自分たちでテンポを上げて、シンプルに縦にボールを入れながらプレーをすることが必要だった。」

ファジアーノ岡山公式HP
2023 J2 第18節 栃木SC戦 監督・選手コメント
より一部引用。

 確かに負けるべくして負けた試合であった。90分間通して、巧く戦えている時間帯も短かった。違った表現をすると、攻める時間はあったが、栃木の人数をかけた守備の最後の所を崩すというシーンは限られて、栃木の少ない攻撃を機会をものにされて、勝ち越しゴールも許した。

 退場したことを含めて、流れが悪い時に、岡山の流れに持って行く力。19木村 太哉のような存在が不在の中で、正直負けなしをここまで維持できたのは、チームの地力だからこそであるし、ここで下を向かず、気持ちを切り替えて、次の試合に繋げて欲しい。

記者(インタビュアー)
--チームとしては、13試合ぶりの敗戦となりました。負け方もありますが、どう捉えていますか?
44仙波 大志 選手(岡山)
「以前に負けた甲府に対しても、今日の栃木に対しても、自分たちのミスからしか失点していないんです。今日の2失点目の裏への対応も、もっと集中していれば弾けていたし、負けたことについてマイナスなイメージは何も持っていないですね。」

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第18節 栃木 vs 岡山(23/05/28)試合後コメント(選手)
より一部引用。

 まさに自信を持ってプレーできているという証左であり、心身の好調であることが伝わってきますね。「頼もしい」の一言に尽きます。

時崎 悠 選手(岡山)
「勝点3が取れましたが、「課題だらけだな」と感じる試合です。次の藤枝戦に向けて良い準備というより、アウェイで勝てていない、連勝できていない、という状況に対して、この勝利をどう勢いづけて、どう次につなげていくかという1週間にしていかないと、意味のない勝ちになってしまうので、つなげていきたいです。」

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第18節 栃木 vs 岡山(23/05/28)試合後コメント(監督)
より一部引用。

 岡山と栃木の勝ち点の差にすると、7差なのですが、チームの置かれている状況や一つの勝利の重さがここまで違うのかというのが、正直な所です。栃木とすれば、勝利できたから良かったのではなく、これを続けて行かなければならないという切実な状況が伝わってきました。

 一方で、岡山も昇格を目指す上では厳しい内容であるものの切り替えて、まだ上を目指せる位置にいて、残留ではなく、昇格へ意識を持てる。そう考えると、岡山もこの敗戦を糧に起爆剤にしていかなければ、ならないと感じました。

⑥岡山の敗因(栃木の勝因)について

18櫻川 ソロモン 選手(岡山)
「チャンスを作れてない。相手陣内に入るところまではできているが、そこからのクオリティやバリエーションが足りなかったので、自分も含めて前のアクションや連動をチームでやってきたい。自分自身もチャンスを作るという部分でなかなかできていないので、自分からチャンスを作れるような受け方やポジショニングができるようにしたい。」

ファジアーノ岡山公式HP
2023 J2 第18節 栃木SC戦 監督・選手コメント
より一部引用。

 48坂本 一彩や22佐野 航大を含めて、もっともっとやってくれないと困る。正直、18櫻川 ソロモン自身が口にする課題の部分も大きいが、それ以上にミスを恐れず44仙波 大志のように自信を持って、伸び伸びやって欲しいという気持ちが個人的には強い。

記者(インタビュアー)
--課題だらけというお話でしたが、用意していたプランでやり切れたこと、やり切れなかったことは?
時崎 悠 監督(栃木)
「いろいろと準備はしましたが、最終的に相手の前線の個に対しては、最後は個で持っていけるチームだったので、そこに対する準備、体の準備、気持ちの準備、いろいろなものを促してきましたが、そういう部分で最後の最後、ギリギリで体を張ってくれたことが今日の勝因だと思います。戦術的な部分を挙げれば、キリがありませんが、ただ、最後はカウンターから仕留めないといけないところとか、焦ってしまって数的有利でもゴールを決められないとか、そこはまだまだ見えていないし、判断や精度について乏しいものを感じます。そこは足りなかったと思います。」

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第18節 栃木 vs 岡山(23/05/28)試合後コメント(監督)
より一部引用。

 勝ちには勝ったが、2-1というスコアも示す通り簡単ではなかった。そういった部分が伝わってきます。であれば、岡山としては、やはり勝ちたかったという感情が、どうしても生じる。

 栃木が、岡山に対して、かなりリスペクトして、準備して下さって、その守備の気持ちの部分で、岡山の選手の気持ちを上回った。「戦術的な〜」という話もという流れでしたが、この試合の栃木の守備における気持ちの強さは、悔しいが、岡山よりも栃木の方が勝者に相応しかった。これは、紛れもない事実。

 勝負を分けるポイントは、試合毎に違って、毎試合、自分達のベストを出し切れるとは限らない。栃木としても、この守備を続けて行く事は難しい事も事実ではあるが、不可能ではない。岡山に勝利した事をきかっけに、J2を盛り上げるチームの一つになって欲しい。やはり、同期昇格というのは、クラブが存続する限り、一生の歴史であり、個人的に意識していますし、これからも意識すると思います。

 だからこそ、他クラブと戦える1試合1試合の重み、幸せを噛みしめつつ、残り試合も全力で、応援し、サッカーを楽しみたい。

⑦次節に向けて

時崎 悠 監督(栃木)
「今日奪ったゴールはラッキーなゴールでしたが、ああいうゴールも、思いや気持ちが乗っているからゴールにつながっていると思います。大事なことに気づいた以上、さらに勢いを増していけるようなチームにしていきたいと思います。」

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第18節 栃木 vs 岡山(23/05/28)試合後コメント(監督)
より一部引用。

18櫻川 ソロモン 選手(岡山)
「次はホームで、勝つしかないので、良い準備をしてのぞみたい。」

ファジアーノ岡山公式HP
2023 J2 第18節 栃木SC戦 監督・選手コメント
より一部引用。

文章=杉野 雅昭
text=Masaaki Sugino

引用元サイト紹介(選手と監督公式コメント)

ファジアーノ岡山公式HP
2023 J2 第18節 栃木SC戦 監督・選手コメント
は、こちら(別サイト)。
URL:https://www.fagiano-okayama.com/news/202305281730/

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第18節 栃木 vs 岡山(23/05/28)試合後コメント(選手)
は、こちら(別サイト)。
URL:https://www.jleague.jp/match/j2/2023/052807/player/

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第18節 栃木 vs 岡山(23/04/12)試合後コメント(監督)
は、こちら(別サイト)。
URL:https://www.jleague.jp/match/j2/2023/052807/coach/

ここから先は

0字

¥ 100

この記事が参加している募集

自分の感じた事を大事にしつつ、サッカーを中心に記事を投稿しています。今後とも、よろしくお願いいたします。