2023ファジアーノ岡山にフォーカス13『 負けない強さ?勝てない弱さ?~烈水~ 』J2 第3節 Away 水戸ホーリーホック vs ファジアーノ岡山
二つの意味を持つ開幕戦の連戦が終えた岡山。想像以上に厳しい。それが正直な感想だ。それと同時に、岡山の強さも感じた水戸戦であった。水戸が強かった。だからこそ価値のある引き分けと言える。
まずはっきりさせておきたいことは、終了間際のプレーは、PKをとられてしまっても仕方のないプレーであったということ。そのため水戸サイドからすると、納得できない悔しいドローであったことは間違いなく、岡山サイドとしても受け入れなければならない評価である。
そのシーンに関しては、15本山 遥もやってしまったという気持ちで、覚悟していたかもしれない。幸いにも岡山のDF選手が揃っていた事で、審判の方が、吹き辛い状況であり、PKを免れた。
勝ち取った引き分けというよりは、辛うじて守った引き分けと捉えて、この試合を振り返っていきたい。
本編に入る前に、当記事で、引用元のリンク先を予め、こちらで紹介させていただきます。
ファジアーノ岡山公式HP
J2第3節 水戸ホーリーホック戦 監督・選手コメント
は、こちら(別サイト)。
URL:https://www.fagiano-okayama.com/news/202303051800/
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J2 第3節 水戸 vs 岡山(23/03/05)試合後コメント(監督)
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J2 第3節 水戸 vs 岡山(23/03/05)試合後コメント(選手)
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試合情報図
1、生命線のサイドの攻防~烈~
という意味を持つ。
また、国民的な漫画のスラムダンクでの名言として、湘北高校率いる、キャプテン赤木 剛憲「リバウンドを制するものはゲームを制す」という言葉がある。
一度聞いたら忘れないフレーズではあるが、この試合のサイドでの攻防は、まさにバスケットボールのリバンドのように、勝敗を左右する意味を持つ試合であった。実際に生まれた得点は、サイドからのクロスからである。そして、そこでの戦いは激しく、まさしく「烈」であった。
守備側のプレスを受けて、攻撃側が辿り着くのは、サイドである。もうそこまで来ると、選択肢はかなり狭まる。その中で、そこで勝てるかどうか。もしくは、そこに良い形でパスを配球できるかどうか。
選手からは、「サイド」というワードこそ出てこなかったが、サイドの含む全体のワードが、試合後コメントに水戸側のコメントとしてありました。
確かに中盤を支配できれば、それがベストである。もっと言えば試合(全体)を支配できれば、完璧である。ただ、実力が近くなればなるほど、エリアの1つ1つの攻防の勝敗が、勝負を分けることとなる。
この試合では、岡山がパスを回す時間をあまりできず、水戸に回されたのも事実であるが、一方で、19木村 太哉が仕掛ける場面や9ハン・イグォンが、ドリブルを仕掛けるというシーンが90分間通して多く見られました。
前半は、主に9ハン・イグォンがスピードと強さを活かした仕掛けでゴールに迫る事ができていました。18櫻川 ソロモンが下がってきたり流れる事があっても、守備で中央を離れすぎないことで、逆にDFラインを引き留めることも出来やすくなっている。18櫻川 ソロモンがいるだけ、スペースを作り易くなる。そこを左CHと右SBの両選手で、使って行く。この試合では2トップの一角の9ハン・イグォンも巧く使えていました。
19木村 太哉のコメントの中に気になる部分がありました。
>もっと簡単にやるところの質の部分は技術のところなので、自分の苦手が露呈してしまった。
左サイドは、43鈴木 喜丈が中に入っていく形が多く、22佐野 航大のプレーを観ても一人で打開していくというシーンが多い。右サイドは、16河野 諒祐がサイドレーンの大外を上下動しているので、複数人で崩すという形を岡山は、採用している。
マッチアップの関係もあるかもしれないが、中に絞る43鈴木 喜丈の左サイドと大外を使う16河野 諒祐のチームの構造の上の違いが想像以上に19木村 太哉のプレーの成功率を下げるだけの水戸の圧力が強かったという事でもある。
43鈴木 喜丈も19木村 太哉と同じように、いつもと同じやり方でやる難しさを感じていたようだ。
この試合を通して、水戸の攻守のプレーの強度は高く、完全にフリーというシーンは、ほぼこの試合を通して無かった。それだけに、今までは感じたことのないような問題やシステム上の課題がでたという事を意味していた。
また、後半から15本山 遥が、中に入っていく43鈴木 喜丈のような形が見えた。16河野 諒祐が、後半に失点にこそ絡んだが、16河野 諒祐は、守備が得意な選手ではなく、攻撃の方が得意な選手であるので、この試合のように守備機会が多くなっていることが意味する事は、水戸に押し込まれているという事である。
16河野 諒祐は、攻撃的な選手ではあるが、15本山 遥は、守備的な選手。この試合のようなシーンが増えてくれば、15本山 遥のスタメン奪取も十分可能性がある。しかしながら、15本山 遥がリザーブメンバーに連ねる安心感や外も中にもポジションがとれるという点を考えると、当面はリザーブメンバーではないかと感じる一方で、フル出場できるだけの運動量があるので、中盤以降より前の運動量を重視したい試合であれば、15本山 遥のスタメンフル出場も考えられる。
この辺り、対戦相手に応じての起用ができる可能性を感じたここまで3試合。怪我の選手が多い状況であることを考えると、今後も様々な形をテストしつつ、攻守でのチグハグ感を解消していくことになるだろう。
攻守でのチグハグ感を減らしていく事。つまり、チームとして組織的修正することと、個人の状態・力を高めて行く事で、各選手の良さを出していける。19木村 太哉の左と右の出来の違いも、ここに関係している。左と右では、チームの形が違うため、その形を自体を変える事や成熟させて進化させていくことも、今後はより求められていく。
そして、木山マジックにより、左右のどちらのサイドでも、19木村 太哉が、「This is Takaya Kimura.」という活躍で、躍動する姿をみたい。
また、2高木 友也や42高橋 諒といった本職がSBの選手の起用法や20井川 空の起用を含めて、チームとしてまだまだ整備して、改善していくという伸び代を強く感じた水戸戦でのサイドの攻防でもあり、この辺りの起用法にも注目していきたい。
2、運ぶことで繋がる勝利への道筋~水~
オシム氏が、千葉の監督時代に残したフレーズの1つとして以下の言葉がある。
「水を運ぶ選手」
現代サッカーでは、攻守であらゆるポジションの選手がハードワークすることが、常識となった。ただ、当時はまだ、走らなくても良いケースが多かった。それ故に、チームのために献身的にハードワークする意識を受け付けるために、「水を運ぶ選手」というワードにより、チームに走る意識を植え付けていった。
岡山においても、サイド深くまで押し込まれた所から、どう前線まで運ぶという点で、「水を運ぶ選手」という選手が、必要不可欠だ。
私は、今季の岡山においては、別の意味の「水を運ぶ選手」が、必要不可欠となっていると強く感じている。「水」の性質は、低いところに穴があいていれば、そこから流れ出す。つまり「底=プレス網」と、解釈して、「穴=プレス網の隙間」と解釈すれば、「水を運ぶサッカー」と、解釈できる。
岡山としては、攻撃を受け止めてからのボール奪取後に、細かくパスを回し、前に素早く運んで行く。それもプレス網から漏れて行く水のように、速く運ぶ必要がある。
素早く運べた時には、良い形を岡山は構築できている、実際に、木山 隆之 監督も次のように語っている。
ハーフウェイラインを、如何に越えて行くのか。近年のJ2は、前からプレス意識は極めて高くなっており、そこを越えた先には、ビッグチャンスが待っている。22シーズンのファジ造語として、「雉プレス」と評したが、そのプレス網を破られた時に、一転してピンチとなり、カウンターを受けて、失点に繋がることが多かった。
良くも悪くもハイリスクハイリターンであった。今季は、プレスへの意識が変わり、攻撃を受け止めてからのロングカウンターを狙える堅守速攻のチームへと変貌した。主導権を握った時に、どう崩していくのかという解答はまだ目にしていないが、少なくとも「水を運ぶ」重要性が増したサッカーとなっている。
ただ、この試合では、そのプレスを掻い潜って、押し込んでいく事があまりできない試合であった。五分五分の時間帯も長かったが、手応えを感じていたのは、水戸の選手や監督サイドであるだろう。
これは、岡山がプレスに苦しんでいた=水をなかなか運べなかったことを意味しています。
岡山が、「形」をなかなか作れなかったと感じた一方で、水戸としては、しっかり自分達の「形」を作れていた。
それでも、水戸の浜崎 芳己 監督の仰る通りフットボールは、相手より多く得点を挙げないと勝てない。
岡山サイドとしては、苦しい試合であったが、ここは粘り強く勝ち点1を死守したと、ポジティブに捉えたい。
水戸の圧力と力は、凄くそこで失点してしまった。こういった試合で、如何に水を運び、攻守でより前でプレーするのか。そういった必要性を感じた。
だからこそ岡山としては、今後は、どう水を運んで行くのか。そこをテーマに勝利を目指していくこととなる。水を運ばせないサッカーから水を運ぶサッカーへと、軸を転換したことが、ここ3試合からは、強く感じた。水戸戦では、この部分に苦しんだが、負けなかった。これもまた事実である。
3、水烈(優劣)を決するために~表裏~
物事には、表と裏がある。私のテーマとして、「中立の立場から」がある。ここまで、両チームの試合後コメントを通じて、岡山よりではあるものの両者の意図や攻防にフォーカスを当ててきた。この試合を受けて両者は、次節に向けての気持ちを探っていきたい。
確かな手応えを感じつつも、勝ち点3に繋がっていないもどかしさを感じる。開幕戦は、優勝候補筆頭の清水。2節目は、昇格組のいわき。3節は、頂を目指す岡山と、難しいカードが続いている。岡山も磐田、清水、水戸と難しいカードであった。
水戸は、次節も強力な戦力を擁する町田との試合だ。仮に町田戦に勝つことができれば、ここから水戸が序盤戦の上位争いに絡んで来る力がある安定感をこの試合では感じた。
まずは、勝利。今は、まずそこにあるだろう。
焦りと自信の入り混じったコメント。勝てていない事への焦りがありながらも、負けていない確かな手応えがある。FWの選手の最初のゴールのように、23シーズンの初勝利は、水戸を勢いに乗せてくれそうな期待感がある。一方で、細部までしっかり修正していかなければ、勝てていないという事もあるので、1週間、1試合を大事にしていく。そういった意識を感じました。
こういったメモリアルのかかった試合の難しさは、岡山もここまでプロサッカークラブとしての戦いの中で、強く感じている。何かがかかっている。何かのめでたい日。そういった試合でも岡山は、なかなか勝ててこなかった。
だからこそ歴史を作る凄さ。クラブとしての300勝の重みを感じるところだ。サッカーの勝負において、そういったものはプレーする選手には関係ないのは、当然のことではあるが、岡山が苦手として来た強い水戸のサッカーが、ここにあった。
水戸とすれば、流石に近いうちに達成できると思われる300勝であるが、「水戸市の日」に達成できていれば、確かに最高のシチュエーションであった。
しかしながら、この試合の水戸のサッカーを見る限りは、その300勝が早ければ早いだけ、歴史を作った瞬間から歴史が始まる。そう感じさせる強度や粘りに軸とした強さが、水戸にはあった。
では、岡山はどうか。
負けてはいないが、勝利を掴まないといけない。そこへの強い覚悟を感じる。ホーム開幕戦の引き分けは清水相手だったとはいえ、頂を目指すのであれば、勝ち点3でなくてはならない。そういった意識から生み出されるプレーからのゴールやアシストに期待したい。
古巣への想いと、負けなかったことへの安堵の気持ち、勝ち点を積み重ねる事への意義、勝ち点3を目指す必要性への理解といった勝ち点への気持ちや想いが籠ったコメント。
42試合(最大で44試合)で問われていくこととなるという趣旨のコメントは、まさしくその通り。価値のある勝ち点1になって欲しい。
本当のJ2が始まった。確かに、その通りだ。しかし、「どちらが〇〇である。」という話ではないのも事実だ。どのチームに対しても勝利することの難しさを木山 隆之 監督から感じる。そして、しっかり準備してきたが、勝ち点3に届かなかった。これもまた事実だ。
代表選手が戻ってくるまでという言葉が意味するように、岡山にとって2選手がキープレイヤーであることを強く感じるが、そこを頭に入れてのチーム編成であり、しっかり結果を出していく事が求められるため、言い訳にしたくないところでもあり、選手と監督は、痛いと感じながらも勝ち点3を勝ち取るという強い気持ちを持っている筈だ。
本当に、シンプルだが、コンディションやパワーを上げて行く必要がある。
少なくとも「烈(プレー強度)」と「水(前に運ぶ)」の戦いおいて、「水烈(優劣)」で、上回れなかったのだから。この現実を受けてめて、次の試合に繋げてくれる筈だ。
4、雉リズム(雉サイクル)の確立へ~海流~
今季の岡山には、雉プレスという言葉は、該当しないだろう。どちらかと言えば、前からプレスをかけていくというよりは、吸収してポジティブトランジション(守備→攻撃への切り替え)において、ネガティブトランジション(攻撃→守備への切り替え)で、プレスを受けた時に、そこを掻い潜るパスワーク。
これは、今季にしかないプレーで、特に開幕戦は素晴らしかった。もっとそういったサッカーがみたい。華麗にテンポよく回るパスワーク。守備から攻撃に移る明確な形、そこで、私は「雉リズム(雉サイクル)」を今季のファジ造語として考えた。なかなか思い付かなかったが、改名する可能性を含めて、暫定のファジ造語とした。
今後、ファジがチーム戦術を深めて行く中で、水の流れが海の流れのように大きく、なることで、主体的に自然なサッカーができると信じて応援していきたい。
しかし、現実は、まだまだ遠い。
重複して、引用させていただいた部分もあるが、この一文で、試合レビューとして成立する。試合後にコメントを読む事も楽しみの一つになりつつある。
99ルカオの状態が、かなり気になるが、木山 隆之 監督の苦笑い。いや、満面の笑みに等しい表情は忘れられないが、流石にこのままでは厳しい。ここで、笑える木山 隆之 監督のキャラクターというのは、個人的に好きだ。
言うべきところは言う。という言葉は良く聞くが、笑うべき所で笑う。という言葉は、あまり聞かない。ただ、裏表の少ない木山 隆之 監督らしい一面で、DAZNで観戦していた方の多くが、この時、「あぁ、やっぱりか(笑)」と思ったはずだ。
言葉以上に、その表情が全てを物語っていた。画面越しにでしか伝わらない部分こそあるが、スタジアムに足を運んでこそ伝わる部分もある。
岡山だけではなく、水戸のサポーターも岡山のサポーターもそれぞれのホームの試合。圏外在住の方であれば、アウェイで近場に応援するクラブが遠征してくれる時は、是非、足を運んで欲しい。
応援することで、選手の力になることもあるが、現地でしか体験できないことも大きい筈だ。
この試合の1-1という結果の激戦が、多くの方に目に止まり、もっと評価されていくこと。WBCと大谷による野球人気に再び押されつつあるもののサッカーとしても負けないぐらいに、日本スポーツ界を盛り上げて欲しい。
そして、岡山は、サッカーだけではなく、スポーツクラブであるように、地域スポーツを盛り上げていくことで、老若男女に活力を生み出すことに繋がって欲しい。
それこそ大きな「海流」のうねりとして、地域から盛り上げていけたらと強く感じる。
そういった意味で、水戸市の日に水戸が300勝をかけて岡山を迎え撃つという日に対戦できて良かった。水戸としては、勝ちたかったことは間違いないと思うが、だからこそ熱い試合となった。もちろん、色々な想いが、その90分間の背後の中にある。「勝利・優勝・昇格」も大事だが、私としては、サッカー観戦の魅力を少しでも伝えて行く、そこに重点において、今後も発信していきたい。
文章・図=杉野 雅昭
text・figure=Masaaki Sugino
5、アディショナルタイム
5-1、水戸戦アンケート
岡山の選手MIP
水戸の選手MIP
5-2、ファジ造語
5-3、雉(ファジ)語録23
5-4、岡山選手名鑑23(作成途中)
監督編は、こちら(別記事)。
URL:https://note.com/suginote/n/n04d01567785f
GK編は、こちら(別記事)。
URL:https://note.com/suginote/n/n8955634e7f65
DF編ー前編は、こちら(別記事)。
URL:https://note.com/suginote/n/nd90392e54381
DF編ー後編は、こちら(別記事)。
URL:https://note.com/suginote/n/n79f5fb21291e
MF編ー前編は、こちら(別記事)。
URL:https://note.com/suginote/n/n1aee07814a92
MF編-中編、後編
FW編-前編、後編
は、現在作成中です。
5-5、筆者紹介
杉野 雅昭
某ゲームから野球派からサッカー派へと移籍。当時チーム名が、ジェフユナイテッド市原であった現ジェフユナイテッド千葉に興味を持つ。オシム(監督)と阿部 勇樹(選手)を中心にJリーグと代表をチェックしてきた。2008年より地元クラブであるファジアーノ岡山のサポーターデビュー。そこから、多くのファジの試合を見てきた。忘れることのできないエピソードが年々増え、シーズンを重ねる毎に想いは強く深くなり、2021シーズンは、初めて号泣。心からサッカー好きで、戦術の奥深さや、プレーの凄さなど、サッカーの本質の攻防にフォーカスを当てて、客観性と冷静さを意識した文章を投稿している。
そのレビューへと突き動かす原動力は、サッカーへの情熱。熱さと冷静さを兼ね備えたフォーカスを今後も目指して、投稿を目指していくことで、サッカーの魅力の発信と、サッカーを通じた交流による、感動の共有と縁の繋がりを大事にしていきたい。
ただ、たまに調子に乗り過ぎて失敗する悪癖もあるものの、サッカーを楽しみたいという一心で、皆さんにサッカーの喜怒哀楽を届けて行きたい。そんな私ですが、noteやSNS、スタジアム等で、交流できたら嬉しく思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。
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