2024テゲバジャーロ宮崎にフォーカス⑬(J焦点⑰24集中連載)『 来季への希望と自信を得た最終節~資格と死角~ 』J3 第38節(A)vsFC今治



1、残留or自動昇格を決めた勢いの差は?〜来季を見据えて~


 テゲバも残留を決めて、今治も自動昇格を迎えた1戦。テゲバは、考えうるベストメンバーではあるが、出場停止や契約により、3人の主軸を欠いての1戦でした。

 今治も来季を見据えた若手の起用や退団する選手を起用するなど、主軸を残しつつも、ベストメンバーではなかった。ただ、それでも自動昇格を決めたチーム。実力も強さも本物である。

 ただ、今治にとっては、ホーム最終戦ですから勝って、自動昇格をした強さを示し、有終の美を飾りたいでしょうし、テゲバにとっても駆け付けたサポーターのために、来季に繋がる試合にしたい。

 ということで、消化試合に感じない好ゲームになりまして、両チームの良さを出し合えたことで、お互いにほぼ完成系のサッカーを体現できたのではないかと思います。

 お互いにもっとできるという部分はあると思いますが、来季に向けてを強くイメージできた試合でもあったと思います。

 最終節レビューでは、次章で前後半を通じた両チームの攻防。3章で、テゲバの強さ。4章で来季に向けてという構成で進めたいと思います。それでは、よろしくお願いいたします。

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2、総合力の高いハイレベルな攻防~自信と敗北~


 今治とテゲバのサッカーは、完成度という観点で、大きな枠組みで捉えれば、ほぼ同じサッカーを展開していたように感じます。

 ただ、比重の掛け方が違ったように感じます。今治の比重が(攻撃4:6守備)で、テゲバの比重が(攻撃6:4守備)の意識や方針の違いで、そこに基づいて最適化されて、2024シーズンの完成系に到達していました。

 具体的に、どうしてこの比重になるかと言うと、今治は、ボールを持った時に、失うリスクを感じると、ロングパスをテゲバより早いタイミングで選択する傾向にありました。

 一方で、テゲバは、多少のリスクであっても、しっかり繋いでボールを落ち着かせる意識が高いプレーが多い傾向にありました。

 また、今治は、前からのプレスとスペースを埋めるゾーンディフェンス。ここで隙を見せない完成度で、90分間やり続けていました。

 攻撃で、局面を落ち着かせるテゲバと守備で局面を落ち着かせる今治。かといってどちらかに比重に寄り過ぎていたり、どちらかが欠けている訳でもない。

 そのため、中盤の所に差しかかった所で、ビルドアップをやり直して、後ろに戻して繋いだり、プレスを受けて、ロングパスやパスが流れて、お互いに失点のリスクの小さいボールロストの回数が非常に多い試合でした。

 そういった手堅い互角の攻防の末に何らかの手段で前進し、自陣→中盤→前線と運ぶことができれば、両チームともなかなか奪えない。つまり、両チームの崩しの所でミスが少ないことで、得点の匂いがする攻撃が何度かできていました。

 手堅い守備と分厚い攻撃を両立させた両チームの攻防が非常にハイレベルでした。全チームを観れた訳ではないですし、序盤戦のテゲバのサッカーを知りませんが、今治の攻守における「速さ・強さ・巧さ」は、私が観たチームでは、最高レベルのバランスの良さに感じました。

 大宮の試合を観ることができていませんが、勝ち点や得失点を考えても、これ以上ということを考えると、今季のJ3で、大宮だけが抜けていたということを、今治の強さから感じることができました。

 勝負を分けたポイントは、ファインセーブを再三みせた今治の守護神44番 伊藤 元太 選手の存在でしょう。190センチという長身ながら、シュートへの反応や守備範囲の広さ、ハイボール処理を高い次元で守りを魅せていて、J2のGKと比べても遜色ないように感じるハイレベルなGKに感じました。

 後は、44番 井上 怜 選手と58番 武 颯 選手と11番 橋本 啓吾 選手と20番 阿野 真拓 選手の良い所を足して、4で割ったような今治のエース10番 マルクス ヴィニシウス 選手。非常に武器が多い選手で、得点パターンが多彩であることは、この試合でみせたパフォーマンスで感じました。

 テゲバの出場停止であった選手が出ていれば、今治に勝てる可能性の十分示せた試合であったと思いますが、この最終節では、善戦できましたが結果は「敗戦」です。

 サッカーにたられば付き物ですが、今治に対しても互角以上に戦えた試合と言っても差し支えないことを考えると、悔しさよりも来季への期待が膨らみました。

 「自信」が膨らむ「敗戦」。逆を連想しがちなワードですが、それが率直な感想ですから、それが今のテゲバの伸びしろとそして可能性という名の希望です。


3、テゲバの終盤戦の強さとは?~終盤戦総括~


 まず浮かぶのが「若さ」と「個性」です。

 私が観始めて10試合ぐらいですが、それでも個人だけではなく、チーム単位で、驚異的に強くなったのが、終盤戦のテゲバです。

 私が観始めた当初は、どこか浮き出しだっていた部分や連動性に欠ける部分もあって、守備では気持ちで守っていて、攻撃も個の力に頼っていた部分も多かったですが、攻撃でも守備でも互いに特徴を理解していく中で、距離感が飛躍的に改善して、チームとしての安定感が増しました。

 これは、お互いに「できること」と「できないこと」を理解し、任せられる範囲が増えたこと。そして、それが自由な選択肢が増えて、攻撃に好影響をもたらしただけではなく、失敗を恐れない積極性が、意外性や創造力となって、対応の難しい攻撃を可能としました。ボールロストのパターンを理解できていれば、それに応じた守り方もできますからね。

 また、こうしてチームの成長と強さは、過信ではなく、自信。そして、勢いになって、好成績に繋がりました。「若さ」の良い所が「個性」との相乗効果でこの強さに繋がりました。

 具体的なテゲバの武器となったポイントは、プレスを受けた状態や五分五分の混戦の中で、クリアだけではなく、テクニックで繋いでしまう点にある。そこでのボールロストを恐れがちですが、テゲバは、恐れずそこでトライできる。不思議なことに、そこでボールロストしても、失点するどころか危険なシーンになることすら少ない。

 やはり、それは最後尾に控えるGKの万能性やDFラインの強さと巧さ、高さで、リスクを軽減できて、ボランチの2枚がバランスをとりつつ、攻守で顔を出して、フォローできる。両SHは、1人で運べる力があって、守備も全力プレー。前線では、個性豊かな選手によって変幻自在の攻撃ができる。

 後方から前方まで、ボールを渡さない。主導権を握る力が優れるというか、試合を増すごとに、このクオリティが上がっていきましたね。結果的に守備の安定感や勝負強さ、負けない強さに繋がっていったと思います。

 後は、何と言っても大熊 裕司 監督の存在も大きいでしょう。監督コメントで、試合で感じていた、とても共感できる内容が多く、そのタイミングも素晴らしい。こういった勝負勘と選手の才能や力を引き出す感覚に長けた監督に感じますね。

 最後に、終盤戦の得点源となっていたGKとDFの間を徹底して狙うこと。J2では背が高い選手が多くて、GKが飛び出してハイボールをキャッチしたり、パンチングして終わる可能性も否定できませんが、J3で対戦したチームの多くは、GKと同じ打点、もしくはより高い打点での対応に戸惑い、テゲバの得点が繋がることが多かった。

 そして、DFがなんとか守備に関与しようとして、押してしまいGKへの接触に繋がるプレーになってしまっている。ジャッジによってはファールになる可能性もありますが、対戦チームのDFがテゲバを押していたらファールどころか、PKになる可能性もある。

 これを可能とする出しての精度とその局面を作れる連係プレーや個人技、そして受け手の高さや落下点に入れるスピード。全てが整った時に得点が生まれる。この得点パターンが、テゲバの中で主要パターンで、シンプルに凄かった。後は、クロスやセットプレーでの出し手と受け手の双方の決断までの速さも光りました。

 それだけではなく、えぐいミドルやパスでの崩し、少ないタッチで得点に繋がるカウンター、ドリブル突破での得点。本当に色々な顔を魅せてくれたテゲバ。

 この終盤の成績を残せたこのメンバーであれば、間違いなくJ2昇格の有力候補と言えるでしょう。


4、来季に向けての補強ポイント~維持と補完~


 一番の補強は、今季のスタッフとメンバーの主軸を維持することであると思います。

 しかし、流石にそれは難しいと思いますので、ステップアップやレンタルバックした選手が出てしまった時に、その選手に代わる選手の獲得が、必要となってくる可能性は高いでしょう。同じタイプというよりは、同じ方向性の中で、個性的な選手を前線では人数を確保できたらと思いますが、夏場の補強を考えますと、ごっそり主軸が抜けない限りは、今季をベースとしたサッカーができるのではないかと思います。

 ただ、JFLから昇格してくるクラブやJ2からの降格組やJリーグのレベルアップを考えると、全体のレベルは上がりますから、現状維持ではなく、強くならなくてはなりません。

 それでも育成クラブと舵を切って、苦しみながらでしたが、シーズンの終盤に大きく順位で挽回できた訳ですから、選手を含めて、クラブとして軸がぶれない限りは、J2昇格を目標と堂々とできる状態で、2025シーズンを迎えたいですよね。

 あえて、補強ポイントというか一人ぐらいいて欲しい選手として、スペシャルな外国籍選手や若手を牽引できるベテラン選手、後は、ロングスローが武器の選手。この3点ぐらいでしょうか。

 どちらかというと、本当の意味の補強。手薄なポジションに将来性のある新人を含めた選手を加えて、厚みを作るイメージぐらいで、別段大きな補強の必要性を感じないというのが、正直な所です。

 欲を言えば、主軸選手に負担が集中しない選手層があったらと思いますが、育成を掲げていく中で、チームとしてだけではなく、クラブとして一歩ずつ前進できたらと思っています。

 本日の試合では、今治の観客動員数、J2自動昇格、全体的に隙の少ない総合力の高いサッカー。1つの目指したい成功体験をした今治と最後に試合できたわけですから、色々な面を吸収して、今治に追いつき追い越すといった夢。目標としては、少し遠い部分もありますが、テゲバにはテゲバの良さもありますし、今治にも勝ってるものもありますし、今あるものを大事して、伸ばして、テゲバらしくテゲバスタイルで、J2昇格の先を目指したいですね。

 テゲバには、その資格があると思います。ただ、まだまだ課題という夢への死角があるかもしれませんが、少しずつ視界を開き、新しい景色がみたいです。

 私もみたいですよ。来季もよろしくお願いします。

文章・図・写真=杉野 雅昭
text・figure・photo=Masaaki Sugino


 今後の予定ですが、企画ものは、時間見合いになりますが、2025の最初は、選手名鑑の記事に全力を注いで、作成予定です。監督&GK編、DF編、MF編、FW編。人数によっては、更に分割する可能性もあります。ボリューム的に時間がかかるので、少しずつ作成していきます。


筆者紹介
 冷静さと熱さを両立した上で、自分の感じた事を自分の言葉で表現することを大事にしていて、ハイライトやテキスト速報をレビューを書くために映像や速報などを確認しますが、極力SNSの情報を遮断し、レビューを執筆していくスタイル。流石に通知や開いた時などに、偶然に目にすることもありますが、綿密に分析するというよりは、サッカーというスポーツの魅力を発信することを一番大事にしている直感型レビュアー。
 ファジアーノ岡山だけではなく、対戦クラブにもリスペクトの意識を持って、言葉にすることを心がけています。同時に、サポーターとの交流や魅力を語り合うことも好きで、レビューを書き始めて、中断期間や書けなかった試合こそありますが、10年以上、ファジアーノ岡山を中心にサッカーのある生活をエンジョイしつつ、応援してきました。同時に、人数も回数こそ少ないですが、岡山を問わず交流のできたサポーターの方もいて「趣味」という「生活」の一部になっていて、サッカー観戦を心より楽しんできました。これからも多くのサッカー通じての交流を大事にしつつ、皆さんと一緒にサッカーを楽しみたい。


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