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【2024年】K-Pop楽曲|知っておけば語れる11の音楽ジャンル❗️
この記事では、R&Bやクラブミュージック・ダンスミュージックのサブジャンルを切り口にし、kpopの楽曲を紹介する。各ジャンルのサウンド的な特徴、BPM、ルーツについて見ていこう。
※2024年3月に執筆した記事を一部加筆
はじめに|K-popのトレンド
近年のk-popのトレンドは変化している。
イージーリスニング
3分未満の楽曲
Y2K
これまで、kpopのアイドルミュージックは海外市場を視野に入れており、エネルギーが高く華やかな曲が中心だった。
しかし英国や米国のポップス市場で、聞きやすく真似しやすい曲がトレンドになると、その影響を受けている。
高橋芳朗さんのラジオでイージーリスニングのトレンドの影響を受けた曲として紹介されていた二曲はこちら
さらに2024年2月に発売されたLE SSERAFIM3作目のミニアルバムはEASYというタイトルを冠している。リード曲のEASYから続く4曲はまさにイージーリスニングの流れを汲んでいる。
穏やかで聴きやすい楽曲はベッドルーム・ポップの流れを汲んでいるとも言えるだろう。ベッドルーム・ポップは2000年代生まれを中心とした、ローファイなサウンドが特徴だ。
家の中で作曲からmix、場合によってはレコーディングまで行うようなミュージシャンも増えている。
Pink Pantheress(UK)
Billie Eilish(US)
imase(JP)
また多くの人がストリーミングで音楽を聴くようになった今、再生回数を増やすには短い楽曲の方が有利になる。tiktokなどの縦型動画の影響も関わっていると言えるだろう。
new jeans の2nd EP ‘get up’では一曲目の ‘New Jeans’から1分51秒と短くなっている。続く ‘Super Shy’も2分35秒と3分以内だ。
さらにY2Kのテイスト(ファッションも含む)がリバイバルとして取り込まれていることも、Kpopの音楽市場に影響を与えている。Y2Kとは「Year2000」という2000年を指す数略語。
企業などで中心となるのは30代が多い。彼らが影響を受けた20年ほど前のカルチャーがリアレンジされるため、20年周期で流行がサイクルしているという説もある。
これらのkpop(特にアイドル楽曲)のトレンドを踏まえ、楽曲のジャンル・サウンドについてみていこう。
1.Jersey club, Baltimore club
ジャンルの特徴
1小説にキック(808ベース)が5回入るビート
四つ打ちに聞こえるが、後ろの二拍が三連符
独特なドラムパターンで他ジャンルとの相性が良い
米国発のベースミュージックで、ブレイクビートのサブジャンル
テンポは135~145程度が一般的
楽曲
ルーツ、関連楽曲
ボルチモアクラブは、五つ打ちのジャージークラブのルーツにあたるダンスミュージック。
1980年代後半から1990年代前半ごろにアメリカのメリーランド州ボルチモアで生まれたのち2000年代半ばに本格的に流行した。
90年代に、New Jersey出身のDJ Tameilがハウスミュージックから影響を受け、独特で攻撃的なリズムを入れ込んで生まれたジャンル。
2.Moombahton
特徴
EDMの一種で、チョップド・アンド・スクリュード(ヒップホップのトラックのミックスの手法であり、レコードの回転速度を落とし間延びさせることにより陶酔感を生み出す。)の手法を使用
BPMは108~110でレゲトンと酷似、EDM(bpm128:縦ノリと横ノリの分岐点)よりもかなり遅い
四つ打ちのキック
chopしたようなボーカルとシンセ
シンコペーションリズムとラテン・ダンス的サウンド
*レゲトン(プエルトリコ発祥の、Hiphop/ラテン/カリビアン/トロピカルの融合ジャンル)
楽曲
bpm113とやや早め
ルーツ・関連楽曲
「Moombah(Afrojack remix)」をbpm108まで下げたことがルーツ。BPMがレゲトンと酷似しているため、Moombah+Reggaetonで「Moombahton」と命名した。
3.Drum'n'Bass
特徴
電子音楽の一つでbpm165~185と、テンポが速い(4つ打ちはほぼ不可能なテンポ)
高速で複雑なシンコペーションを用いたブレイクビーツサウンド
キックやベース・スネアを強調した重低音
ドラムは打ち込み
1990年代イングランドのジャングル(ドラムのブレイクが特徴で、レコードからサンプリングされたものを使用)というジャンルにルーツ
楽曲
ルーツ、関連楽曲
ドラムンベースは1990年代半ばにイギリスで誕生して1990年代後半から2000年あたりをピークに大きなムーブメントになったダンスミュージック。
ピンクパンサレスの楽曲について高橋芳朗氏は次のように評している。
4.UK garage/2-step garage
ジャンルの特徴
ハウスミュージックの四つ打ちに対し、変則的なリズムを持つ
1990年代後半から2000年前後にかけて流行
各小節の2拍目・4拍目でキックドラムが演奏されない(キックドラムの演奏周期が元の2倍に引き伸ばされた状態であり、4つ打ちのトラックより遅いものとして知覚される)
スネアだけでリズムを取るとハーフテンポのBPM65前後、
ハイハット、もしくはキック連符の部分で追うとBPM130前後そしてシャッフルや三連符を用いる
前のめりにつんのめるようなイレギュラーなビート(2stepの場合、リズムが16分で跳ねる
パーカッション以外のサウンドを、パーカッションのように使用するアプローチ
楽曲
ストレートな2ステップサウンド
ルーツ、関連楽曲
ハウスミュージックから進化したUKガラージのサブジャンル。1990年代後半から2000年ごろにかけて流行したイギリス生まれのダンスミュージック。
Y2K当時の楽曲(2000年)
5.Atlanta bass
ジャンルの特徴
ヒップホップ/R&Bのサブジャンル
BPMが早く、うなる重低音
ローランドTR-808をベースに使用した重低音のキックドラム
ヒップホップとしてはかなり速いテンポ(BPM130~140)
楽曲
bpm125
ルーツ、関連楽曲
ルーツは1980年代半ばにマイアミで生まれたマイアミベース。マイアミベースにR&Bの要素を取り入れてポップ化が図られた。
6.Trap(hiphop/R&B)
特徴
ハードコア・ヒップホップから派生した。アメリカを中心に人気
bpm70~90
トラップ特有のハイハットの連続音や、派手な電子音、キックとスネアのハーフビート
808ベースと呼ばれる超低音のベースサウンド
ギリス発祥のダブステップの要素取り込んだEDMとしても認知されている
楽曲
R&Bの要素も強い
ルーツ、関連楽曲
2000年代前半、サザン・ヒップホップやクランクから派生したジャンル。トラップは、「コカイン密売所」を表すスラング。アトランタがジャンルの発祥地。2010年代に本格的に全米で浸透。
7.Disco
特徴
ファンクやソウル、R&Bをダンスミュージックとして踊れるようにした
bpm110~130の四つ打ち(イーブン・キック)にボーカルを乗せる
小気味よいギターのカッティングが特徴
強力なフック(曲全体で何度も繰り返されるフレーズ・タイトル)
ファンクから影響を受けたホーンセクション
*ホーンセクション
トランペット(Trumpet)トロンボーン(Trombone)サックス(Sax,Saxophone)の3つの楽器で構成された、管楽器のアンサンブル
楽曲
ルーツ、関連楽曲
ディスコ発祥の地はフランス。1960年代から1970年代前半にかけてフィラデルフィアからニューヨークへと伝わっていった。語源は、バンド生演奏ではなくDJがレコード演奏をおこない、客がそれに合わせてダンスを踊る娯楽場のことを指す「ディスコティーク」。
8.Drill
特徴
UK drillでbpm140程度
過激で荒々しいリリック
ダークで危うい雰囲気のビート
スライドベースと呼ばれるTR-808系の太いベースのピッチをスライドさせたベースライン
早いテンポでパーカッション的に打たれるスネア
楽曲
UKドリル特有のフェイスマスク
ルーツ・関連楽曲
ドリル(Drill)は、2010年代初頭にアメリカのシカゴ南部を発祥に広まったヒップホップのサブジャンル。
「シカゴドリル」よりもテンポが速く・重いベースライン・さらにダークなのが、UKドリル。自分の顔をフェイスマスクなどで覆い隠す異質さを持つ。
9.Tropical House
特徴
bpm100~115でDeep Houseのサブジャンルの一つ
スティールパンなど南国楽器
コンガやサックスやトランペット、アコースティックギター
マリンバ、グロッケンを彷彿とさせるシンセ
陶酔感を誘うメロディ
楽曲
ルーツ、関連楽曲
トロピカル・ハウスの語は、オーストラリアの音楽プロデューサーであるトーマス・ジャックの冗談だった。トロピカル・ハウスがダンスミュージックで流行となるのは、2013年にクラングカルッセル、カイゴ、ロビン・シュルツプロデューサーの出現がきっかけ。
10. Bigroom
特徴
bpm128前後、フェスティバルなどでのプレイを前提とした、スケール感が大きいサウンド
エレクトロ・ハウスのサブジャンル
キックと同時にベースの音が鳴っている
パンチのあるキック、伸びのあるベース、トランシーなシンセサイザー
エレクトロ・ハウス系とプログレッシヴ・ハウス系の2種類
*エレクトロ・ハウス系:シンプルなリズムと、わかりやすく派手なシンセのドロップ、ブレイクからの強烈な盛り上げ
*プログレッシヴ・ハウス系:エモーショナルなコードワークやメロディに重点がおかれたサウンド
楽曲
ルーツ、関連楽曲
2010年半ば以降の EDM の中でも、最も人気のあるジャンルの一つとして挙げられる。
エレクトロ・ハウス系
エレクトロ・ハウス系
プログレッシヴ・ハウス系
11. Future House
特徴
ハウス・ビート(bpm130前後とハウスでは速め)に湿ったメタリックな音のベースラインが典型で、ハウスとEDMの中間的にとらえられている
ピアノやトロンボーン系の音もよく使われている(サイドチェインの効いたリード)
フューチャーシンセと呼ばれるシンプル且つスタイリッシュなシンセ
弾力のあるドロップ(より弾力性の増したFuture Bounceというジャンルも存在)
*Future Bounce:2015年頃から先駆者であるBrooks、Mike Williams、Mesto、Justin Mylo、などといったアーティスト達が誕生。マーティン・ギャリックスも参加した。
楽曲
Bpm112で、FutureHounceサウンドだがテンポはやや遅め
楽曲の冒頭からFutureHouceらしいベースサウンド、サビのベースラインのクリシェがJpop的ともとれる
ルーツ、関連楽曲
2013年にTchamiが造語して発生した新しいジャンル。80年代から存在するアンダーグラウンドなディープ・ハウスではなく、よりポップな2010年代型のハウス・ミュージック。
Future bounceの楽曲
おわりに
これまでもダンスミュージックとR&Bはお互いに影響を与えてきた。
kpopはダンスミュージックとR&Bの様々なサブジャンルの要素を取り込みながらさらに進化していくだろう。最後に、複数のジャンルが融合された楽曲を紹介する。
Drum and Bassのビートにtwiceらしいシンセサウンドが加えられた楽曲。ビルドアップでは5つ打ちのビートが用いられている。
ドラムンベースと2ステップのコンビネーション的なビートとジャージークラブが交互になる構成。
UK garageとtrap(サビ部分)のミックス。
5つ打ち(サビ前のみ)、trap(hip hop的)、終盤のハウス/エレクトロ的4つ打ち
参考文献
この記事を書くにあたり参照した記事はこちら
https://www.nhk.or.jp/radio/magazine/article/my-asa/hyd20230826.html
https://koke53.com/201807-what-is-moombahton-on-kpop