鮟鱇の骨(まひる野 2025年1月掲載分 8首 ※改題)
白山通りへと出でたれば遅咲きの金木犀と街のさざめき
祝祭のまぶしさ四年を古書市と無縁に勤めたる街今日は
一組の箸で焼きそば分けあえばほかの人ではだめだと思う
産まないと決めたる秋のみずからへ二冊購う半値の絵本
十代をきみは語れりベンチにて枝ごと断たれし葉の降る午後に
堂々と惚気るための手続きと思う婚姻などとうものは
英雄的(ヒロイック)なる死を望む人とする散歩のひどく穏やかな暮れ
龍の髭のようなる骨を引き抜いて鮟鱇鍋に冬の香の立つ
今月からマチエール(島田修三選歌欄)に掲載いただいている。実力者揃いの欄で自分には早すぎたのではないか…と思うものの昨年の全国大会で島田先生の人柄や語り口に強く惹かれたので、選歌・添削していただけることが純粋に嬉しい。久納美輝、滝本賢太郎と並んでいるのも嬉しい(並びは単に五十音順なのだけれど。なぜかマチエールにはあ行の方が多い。)
3首目を添削いただいた。「ば」が1首目と被ってしまうため1首目の方の推敲を試みるもしっくり来ず、上記は誌面のまま。これに限らず自分は「ば」を多用しがちなのだが、意外性のあるものを順接することで生まれるドラマに安易に寄りかかりすぎている気もする。と書きつつ昨日投函した月詠にも1首入れてしまった。