太田裕美/ヤア！かもめ～隠れ名曲、名演コレクション。

　子どもの頃、好きだった歌手は岩崎宏美さんと太田裕美さんだった私です。
まー、ヒロミという名前が好きだったわけではなく、歌が上手い人が好きだったのと筒美京平さんの曲が好きだったんですね、今にして思えば。
それに太田裕美さんは秋本治さんの「こちら葛飾区亀有公園前」によく出ていた(秋本さんもファンだったとか)から、曲のタイトルは自然と頭の中に入っていったというわけですね。

　太田裕美さんといえば懐メロ番組などではひたすら「木綿のハンカチーフ」ですよね、流れたり取り上げられるのは。
ちなみに私はデビュー曲の「雨だれ」と「赤いハイヒール」がとにかく好きだったのです。
「雨だれ」は太田さんがピアノを弾きながら歌ったのを見たのが、とにかく印象に残ったんですよね。楽器を弾きながら歌うのに弱かったりするのも後にわかりますが、これはまた別の機会に。
「赤いハイヒール」はマイナーで始まって、サビでメジャーになるのが好きでしたね。
たしか「木綿のハンカチーフ」の次のシングルで、子供心にこっちの方がいいじゃん！と思った記憶があります。

　で、今回取り上げる「ヤア！かもめ」ですが、この曲同名ドラマの主題歌なんですよね。太田さん自身の作詞・作曲で最高の仕上がりです。
(ドラマ自体は1978年6月6日から10月17日までの全20回放送ですから、決して人気ドラマではなかった模様です。篠田三郎さんと香山美子さんがメイン・キャストだったことも忘れていました)
でも、シングルのA面(ちなみに松本隆さん作詞、筒美京平さんが作曲と編曲を担当した「ドール」がA面で、1978年7月1日発売です)にはならず、カップリング曲なのです。
太田さんの著書「太田裕美白書」(PARCO出版)によると「初めてドラマの主題歌として作った曲です。夏のキラキラ光る海を思い浮かべて、作りました」とあります。
多分、ドラマの主題歌なので、サビに「かもめ」という言葉を入れてください程度のオファーはあったかもしれませんね。

編曲はデビュー曲「雨だれ」の編曲を担当した萩田光雄さん。
書籍「ニッポンの編曲家」(DU BOOKS)によると、萩田さんのファースト・コールのキーボード・プレイヤーは羽田健太郎さんとのことなので、この曲のピアノもおそらく羽田さんでしょう。
この曲の素晴らしさは羽田さんのピアノと流麗なストリングスだと思います。
それに太田さんはファルセットを多用してますから、ライヴで再現するのは難しい曲だったでしょうね。
そして、1978年8月1日発売のアルバム『エレガンス』にも未収録だったのです(A面の「ドール」はしっかり収録されています)。

・太田裕美『Singles 1978～2001』(MHCL-10006～7/ソニー)
「ヤア！かもめ」収録CD(2枚組)

　ちなみに萩田さんは私が好きな歌手の岩崎宏美さんのデビュー曲「二重唱(デュエット)の編曲も担当しています。
萩田さんの修行時代、ヤマハに出入りしていた時期に大橋純子さん、林哲司さんに鈴木康博さんたちに出会ったそうです。

　岩崎宏美さんと太田裕美さんといえば筒美京平さん作品の歌い手という印象が強くて、途中から筒美さんが編曲も手掛けるようになるのも共通してますね。
　お二人の最大の違いはメインの作詞家が太田さんは松本隆さんで、岩崎さんは阿久悠さんだったことでしょう。

・「ニッポンの編曲家」(DU BOOKS)
萩田光雄さんインタビュー掲載。

そのせいか、太田さんの曲はより洗練されていて、岩崎さんの曲は割とベタだった印象を勝手に持っていました。

　割とうろうろしていた時期に太田裕美さんのボックス・セットを購入し、また太田さん筒美さんを調べようとしたのが、1999年だったか2000年だったか？どちらにしても「20世紀の終わり」にでしたね。

・太田裕美『太田裕美の軌跡～First Quarter～』(SRCL4501～4506/ソニー)
1999年4月発売のボックス・セット。全てのシングル曲、未発表別ヴァージョン、ヴォーカル参加曲、TV、CM、ライヴ音源に新曲など全94曲収録。LPサイズのブックレット付属。

・「太田裕美白書」(PARCO 出版)
太田裕美さんの貴重な写真、資料にインタビュー掲載。松本隆さんインタビューも。

　それ以降は割と太田さんのCDを購入していた記憶があります。はっぴいえんどのカヴァーが収録された「キャンディ」や先に挙げた「Singles 1978～2001」などです。
勿論、現在でも大事な位置にあるのは間違いありません。
太田裕美さんには名曲も隠れ名曲、名演はまだまだ沢山ありますが、昔昔に見たテレビドラマの主題歌を選んでみました。
　
　明日もなんとなく太田裕美さんにつながりのあるアーティストがプロデュースした曲を取り上げようかなと考えております。お楽しみに。

　ではまたー。