毎月短歌14(連作部門)姿煮選
こんにちは、はじめまして。姿煮です。今回、毎月短歌連作部門の選者を任せていただきました。わたしは、他の選者ふたりのように新人賞の候補になったりとかの経験もなく、「本当にわたしでいいの?」という気持ちです。しかも堂々と締め切りを破るくらいずぼらだし。傘立てはあるのに傘ないし。
さて、早速、選に移ります。
首席 「家事をするひと」まちのあき
一首目、なんだか愚痴のような歌から始まり、初読ではすこし面食らいました。でもどうやら連作として読むと、愚痴ではなかったようです。四首目、結句の「生姜だけない」が実感をもちつつ、間抜けになりすぎず絶妙に詩的なことの不思議さが魅力的でした。六首目は上の句と下の句の折り合いが見事。六首連作という珍しい形ですが、これが過不足なかったのだろうなと構成面にも納得がいき、文句無しの首席です。
次席 「ピンクいゆりちゃん」菜々瀬ふく
十首連作。十首目は今回の選全体でも一番好きだったかもしれません。現在の視点から幼い頃を思い返しているのか、幼い自分に戻った目線で詠んでいるのか、掴みきれないところがあり、(そこを魅力とは思えず)、連作としてみたときに二席としました。
五首目の結句「わたしたちは魔女なの」は昼寝のまどろみの舌足らずな感じが出ていて、良い意味で演劇のようでした。九首目、「ぽぽ」の擬音がかわいい。十首目、おにぎりとヨーグルトという具体がこの連作の締めとしてとても効いているように思いました。
三席 「あたしのバ先」畳川鷺々
バイト先についての、コミカルでおそらくフィクショナルな九首連作。七首目、バイト先が好きという気持ちと、めちゃめちゃになってほしいときの気持ちの振れ幅が気軽な口語にフィットしている。九首目、下の句で突如として現れる手羽先の匙加減がとても良い。全体的に言葉の脈絡がおもしろかった。
ナイスチャレンジ賞
「フォカヌポォw ~推しを守って死ぬオタク~」T・G・ヤンデルセン
好きか嫌いかならめっちゃ好き
「BIG MACHINE」松浦
B'zの歌詞を短歌に落とし込もうという試みは、申し訳ない、必ずしも成功していない歌が多かったように思う。ただ、この一首はとてもよかった。
「シティポップ」onwanainu
一首目に提示された掲出歌に掴まれた。ブルーハワイ、ワルニ、シティポップ、タワーレコードといった名詞が独特の空気を生んでいた。たぶん、音楽が好きな人にはもっと刺さる連作だと思う。
「あなたに決めた」もくめ
ポケモンの世界をリアルに描いた。ポッポにもポッポのよさがある。ポッポ好き。
「第一回納涼ニュータウン夏祭り」汐留ライス
挑戦的な設定。この一首がとてもよかった。
「光に落ちる」つじり
景と心情のバランス感覚に優れている連作だと思った。挙げた一首が特に良い。