婆様の笹の願いの代筆は日本語能力N4グェンさん/ヒプノ寿司マイク
うたの日無冠の短歌を紹介するシリーズ第84回
2022年07月07日 『 七夕 』の一首
介護施設の景でしょう。ばあ様は七夕の笹にかける短冊にもう字を書けない。そこで介護士が代筆するのだが、担当のグェンさん(ベトナムのお名前でしょうか)はN4、つまり日本語検定4級であると。適当なサイトからコピペですが、4級はこんな感じ。
N4:意思疎通にストレスを少し感じるが、レストランやホテル、介護の現場で働くことが可能です。日常的な場面で、ややゆっくり話される会話なら、内容がほぼ理解できる」レベルで、す。
まあ、多少字を間違えてもやむなし。このうたの美しさは、ふたつの「出来ない」が重なってやさしい空間を作り出しているところだと思います。もううまく字を書けなくなったばあ様と、日本語がまだまだ得意ではないと思われるグェンさん。どっちが書いても完璧ではないのかもしれません。その、完璧ではないところに緩みがあり、それが詩になっている歌だと思いました。
ヒプさんの短歌は、真似できないなあと思っていつも見てます。評者はハートをつけることも多いのですが「これヒプさんかな」が当たったことは実はほぼありません(そもそも作者を予想しながら投票しないですが)
言葉の使い方に意外性があるというか、特殊な語を詠み込むときに、そこで満足せずにきちんと踏み込もうとするところが良くて、油圧ショベルカーの薔薇歌なんかはその最たるものかなとは思うのですが、真面目なのも、ふざけたなってやつも、だいたい好きです。いっぱい挙げときますね~
部屋で見る蛾は外で見るよりもっと 怖い 家ごと燃やすしかない/ヒプノ寿司マイク
夏の日は天皇を見ぬ祖父宛の公職追放封書の旧字/同上
雨けぶるしずかな谷の底ひとり猪谷駅(いのたにえき)が終点である/同上
挨拶を居間で妻と待つ恋人はどんな男か女だろうか/同上
辛いとききみが助けてくれたから今宵チュールの2番歌うよ/同上
~と打ち陰毛みたいと感じたらみてみて~←陰毛 にしか見えない/同上
チャオチュールの歌をYouTubeで聞いて、ねこかわいいな、メリークリスマス/姿煮