【AOTY2020アドベントカレンダー Day18】 Novo Amor 「Cannot Be, Whatsoever」
個人的にも周りを見ても今年盛り上がりを見せている、インディフォークというジャンルの音楽。コロナ禍直前滑り込みセーフの来日公演で話題になったボン・イヴェールや、夏と冬に1枚ずつ大作をサプライズリリースして注目を浴びるテイラー・スウィフト、そして国内では2年続けて年間ベスト級の傑作を送り込んだROTH BART BARONなど繊細で内省的、それでいて神聖な響きで恍惚へ誘う楽曲を聴いて静かなひとときを過ごしたリスナーも多いのではないか。
イギリスのウェールズで活動するソングライター、Novo Amor(ノーヴォ・アモール)が11月にリリースした2ndアルバム「Cannot Be, Whatsoever」も正統派で芸術的なインディフォークを奏でる素晴らしい作品だった。
美しさ、儚さ、そして親しみやすさが共存したファルセットを丁寧に重ねたボーカルは先述したボン・イヴェールを彷彿とさせ、背後で微かに揺らめくシンセの音色が奥行きのある豊かなサウンドスケープを生み出してゆく。
そして時には4曲目の「No Plans」のようにダイナミックなバンドサウンドを響かせる。アコースティックな優しさを感じながら、雄大な自然に放り出されたような開放感は堪らない。続く「Birdcage」は親密な距離感でフォーキーな音色を奏でる一方で、じわじわと熱を帯びていく終盤のメロディアスな展開に鳥肌が立つ。
その後もアルバムの中で最も静かでささやかな歌声が沁みる「Keep Me」、カラッとしたギターと低い声のボーカルを軸にしたコーラスが美しい「Halloween」と味わい深いナンバーが続く。極め付けはタイトルに偽りなしのアンビエントなインストナンバー「Statue Of A Woman」から流れるように続く「If We're Being Honest」。ピアノの弾き語りから始まり、後半で一気に開けるバンドサウンドはコールドプレイのような壮大さでとても清々しい。
頬を撫でるような優しさと静かな高揚感に心地よく包まれ、10曲30分ちょっとで聴ける、軽やかでドラマチックな1枚。フォークミュージックの元を辿れば歌を聴かせることが最優先のジャンルだからこそ、繊細に作り込まれていてもメロディが立っていてエモーショナルな感覚を得られるのがとても魅力的なのだと思った。冒頭で述べたアーティストの作品など共に、インディフォークで静かに心温まる年末を過ごすのも是非オススメしたい。
12/1〜12/25にかけて2020年のベストアルバムを毎日1枚ずつ発表していきます。