歪んだ形のままでいい
先日、ロックバンド、the HIATUSの結成10周年アニバーサリーライブを観た。
ファーストアルバムの1曲目で始まり、最新アルバムの最後の曲で終わる。
まさに周年ライブといったような、バンドのキャリアを振り返るオールタイムベスト的な記念碑的な夜だった。
ライブの終盤のMCでボーカルの細美武士さんが、
「もしかしたら人生で最も辛い10年になってたかもしれなかったけど、素敵なメンバーとお前らのおかげで人生で最も素敵な10年になった」
と話していたのが、このバンドの10年を言い表していた。
the HIATUSの発端は、同じく細美さんがフロントマンを務めるバンド、ELLEGARDENが11年前に活動休止したことにある。
このバンドの初期の作品で表現していたのは、細美さんの音楽的探求を深めた先に生まれた、難解で複雑な楽曲。
そして、それまでの1番の居場所を失ったことへの絶望や自身の葛藤がそのまま音楽として形になっていた。
そこから時を経て明るみに出たり、より音楽的に深みを増していったり、今のメンバーでバンドをやることの必要性が強固になり、鳴らす音楽もカラフルな色味を帯びていった。
「変わり者のまま、色んな人と関わって生きていくことがこんなに素敵なことだとは思わなかった」
細美さんはこうも話していた。
普通になりたい、誰かと何かをするには自分を曲げなきゃいけない、イビツな形の自分だけど、はみ出ることなく綺麗に収まらなくてはならない。それでも1人ではなくバンドをやることを望んで10年の月日が経った。元の居場所も昨年再び動き出した。
そしてこの日のライブで象徴的だったのは、先述したMCの言葉が決して細美さんだけのものでは無かったということだ。
「大事な居場所になった」と語り感極まったドラムの柏倉さん。
「神様ありがとうって気持ち」と話したのはキーボードの一葉さん。
the HIATUSというバンドは個のプレイヤビリティに溢れる鬼才の集まりだと思っていた。
それもそうだけど、メンバーそれぞれが変わりもの同士、形の違う変わり者を必要としているんだなと感じたシーンだった。その人らしい形の歪みを尊重して埋め合えるような関係が、集団をバンドにさせたのだと思う。
自分もこの頃は1人では出来ないことをやってみたい欲が強まっている。
正方形のタイルが一面に敷き詰められている美しさよりも、1つひとつ形の違うピースがハマってパズルが完成した時の喜びを大事にしたい。
これも、ロックバンドから教わった大事な教訓だ。