自称非常識人A君vsマジの非常識人私
「非常識ですみません」
人にちょっとしたことを指摘する機会があって、指摘したらこう返された。
いや、論点が違う。
私は君の常識のなさについて物申してるわけではない。
というか、この謝り方に対して私は非常に不服だった。
私は非常識人の極みみたいな存在で、やろうと思えば場にいるあらゆる人を怒らせるような冒涜的なことを即座に言うことができるし、ちょっと遊びに行っただけでサークルを破壊するような人間だからだ。
常識のなさなら負けない、非常識バトルで勝負だ。
何を隠そう、私は自分の非常識さにめちゃくちゃプライドがある人間だ。
ことのはじまり
別にこの件は、いうほど怒るほどのことではない。
グループ内で微妙に迂闊な(上司の病気とかの個人的な事情について結構踏み込んだ)ことをうっかり言っちゃったA君がいた。
それについて、後でA君をちょっと人のいないところに個別に呼び出してこそっと指摘したってだけの話で、これが原因で実際に人間関係トラブルが発生したわけでもない。
というか「やっべ! これは事故が起こるかもしれねえぜ! 盛り上がってきたな!」と察した私が最強のコミュ力と場のコントロール力と上司への全力謝罪で未然に防いだ。
普通に、私がなんか偉めの立場の人間だったからだ。立場には責任が伴うからクソめんどくせえなと思うけど、こういうとき即座に動けるから便利なんだよな。
だから、この指摘に対して、A君は「あっ知らなかったっす! 次からは気をつけますさーせん!」くらいの返答をしてくれたらそれで全然よかったし、そういう感じになるように、私も極力ふざけて砕けた口調で、柔らかく指摘した。
心配だよねー、わかるよー、なんて、A君の気持ちにも寄り添いつつ、極めて適当な感じでゆるく言った。
そしたら冒頭のことばが返ってきたのだ。
まず「常識」に縛られてないとそんなこと言わないだろ
マジでびっくりした。私の中にはそんな発想なかった。
そもそも本当にマジで非常識な人間って、常識と非常識のラインを「6割くらいの人間がお気持ちするかどうかのライン」くらいにしか思ってないと思う。
っていうか私がそう。5割ならまだ平気だと思う。
この記事を見て宇宙猫になってる「ある側」の人間に向けて解説すると、私の中にはそもそも「常識」「非常識」の境目がない。ぶっちゃけ倫理とかもない。
ので、過去に会った人から「常識に一家言ある人」を脳内に数人くらいイマジナリー召喚してエミュレートして、そのうち半分以上がダメそうだったら常識に欠けた発言かなって思う。(思うけど、普通に言うことも割とある)
あんな形式ばったもの、自分が異端であることを理解していれば常人のふりをしてパスできるってキンブリーも言ってただろ。
だから「非常識ですみません」って言われた瞬間に、この人は常識のことを日常的に考えてて、咄嗟にそういう言葉が出てくるタイプのホモサピエンス? と思った。
A君のことをなんか自分と全然違うロジックで動いてる人だと直感的にわかった。ていうか本当にびっくりした。
えっ!? A君は私に常識のなさを指摘されたって思ってて……それはつまり、私と比べてA君は常識がないって思ってるってこと!? 私のこと常識人って言ってる!?!?!?
いやそんなことないだろと思うけど、A君の目はまっすぐでピュアだ。ここには書かないけど、あらゆる言動がなんか、人を100%信じてますって感じの発言なのだ。
ブラック企業のブの字も多分知らない。この世には横断歩道を歩くおじいちゃんおばあちゃんを助けて遅刻するような善人と、あとかわいい動物しかいないと思ってる。
今自分の目の前にいるのがどんなおぞましい化け物かも知らないのだ。
騙してすみません。
社会で会った全人類騙すつもりで生きてます。
罪悪感とかも特にないです。
で、その常識って何の原因の究明にもなってなくない?
非常識マウントはさておき、問題はここだと思う。
私は別に、A君の常識が欠けていることに対して怒ったわけではない。
やった言動について指摘をしただけであり、それは常識の有無とは関係ない。
だって上司に病気があるかないかとかが常識でわかるわけないじゃん。
強いていうなら、この上司は何か病気っぽい人だなあと察するとか、あとみんなが触れてない話題にはなんとなく触れないでおくとか。
どうしても気になったら場所を選んで人が少ないとこで拒める状態で聞いてみるとか、
そういうコミュニケーション能力は、まぁ、ひょっとしたら必要だったかもしれないけど。
常識じゃないなら何が悪かったんですかって聞かれたら、
人のプライベートにあんまり直接的な質問をしないような会話をする会話デッキが不足してたとか、
あと「1ターン様子を見て場慣れしてる人が話し始めるのを待つ」みたいなスキルがなかったとか、
どうしても気になってプライベートについて聞くことを選んだとしたら、もう少し迂遠な言い回しから始めて様子を見たり、上司が重いことも話しやすい場と話の空気のセッティングにしたりする、などの慎重さを身につけてなかった、とか?
具体的な改善点とその対策なら、いくらでも案は出る。
でもそれって「常識」で得られます?
「訓練」でなら得られるかもしれないけど。
原因をただ「常識がなかったから」とかいう漠然としたテーマで解決したことにするって……思考停止ではないですか!?
常識って言葉、逃げじゃないですか?
この言葉、クソほど解像度が低いんですよね。
具体的に何がどう悪かったかが一切説明されず、ただなんかそのグループに蔓延してるよくわからんお気持ち抵触ラインに触れましたよって話でしかない。会社とかグループとかが違えば、当然この「常識」とかいうラインも変わってくる。
私が「非常識」と言われて怒られる時って、人間をおもちゃにしてるから怒られてるか、なんか新しいことしたらよくわからん懐古厨がめっちゃキレたかのどっちかが多いし、他のパターンも割とある。
でもその非常識さが具体的に何のパターンだったかは誰も言ってくれないよね。私は7割くらいわかるけど。(たまにマジでなんで怒られたかわかんないパターンがある、なんでなん?)
常識の罠についての考察
でも、それを言って、「常識って言葉で括るのは逃げてるよね〜」で終わらせたらこっちも逃げだと思う。
というわけで、A君がどうして「常識」とかいう言葉を咄嗟に放ってしまったのか、考えてみたい。
仮説1:怒られ童貞
おそらくA君は、自分が善人すぎて悪行をほとんど働いた事がないのだと思う。そうすると怒られ慣れてない若者がこの世に生まれる。
で、急に怒られたらわけがわからなくなる。
怒られる、ということに慣れてなさすぎるから、実際に指摘を受けたとき、わけもわからずパニックになって頭が真っ白になってたような気がする。
これは多少の特性もあるのかもしれない。怒られたことのない人にとって、怒られるというのは「初めての衝撃的な体験」であり、それを理解するのに時間がかかる。
そのときに、なんかわかんないけどとにかく自分がとても悪いことをした、くらいの解像度になっちゃうのかもしれない。悪いことし慣れてないと。
それで、「とても悪いこと」のレパートリーが「常識が欠けている」ということだったのかも。
なんか謝罪の文面のテンプレが少なすぎて適切な謝罪文構築できなかった感。
今でこそこんな私ですが、人生で初めて怒られた時は頭が真っ白になったものでした。
幼稚園児の時、お昼ご飯のお弁当のハッシュドポテトを落としたことに気づかずに、ハッシュドポテトが虚空に消えたフォークを呆然と見つめて質量保存の法則について考えていたところ、先生に「食べ物を粗末にしちゃダメでしょ!」って怒られたのが人生で初めての怒られだったと記憶しています。その時はわけもわからず「ごめんなさい」とひたすら繰り返してギャン泣きしました。
これ今思えばわりと理不尽な怒られだったような気がするな。
仮説2:教育者の言語能力の破滅
あるいは、割と怒られていた説もある。この場合自ら思考停止したわけじゃなくて、教育者が思考停止させているかもしれない。
親や先生など、上の立場の人間から「常識的に考えてあり得ない」というフレーズで怒られていたのでは?
なぜ怒られているかを説明しないまま衝動に任せて怒るやつは教育者じゃなくてただのヒス野郎なのだけど、
その怒られへの対処が身に付いてて、反射的に出た可能性が高い。
で、怒られた原因がどこにあるのか、なんなのか、そもそも自分の責任なのか相手のアンガーマネジメントが終わってるのかすらわからず、
ただ「常識がない」自分が悪かった、ということにして、それ以上の怒られを回避しようとしているパターン。
なんなら教育者側もなんで自分が怒ってるかの分析ができてないので「常識がなくてごめんなさい」って言われたら「そうか! こいつに常識がないのが私の怒りの原因なのか!」と納得してしまう。
この場合はぶっちゃけ適切なメンタルのヘルスを検討した方がいい。カウンセリングとか。なんらかの相談室とか。
どっちがって? どっちもだよ。
以上、マジの非常識人が偽非常識人について怒っている理由を言語化しましたが
いかがでしたか?
「非常識ですみません」というフレーズは私の中で相当地雷だし、これを聞いた時は正直結構な衝撃だったのだけど、これが地雷になる機序をまとめると、
理性的な反論としては「言動について指摘をしただけのことを、常識の有無とかいう曖昧な定義の話にすり替えないでほしい」ということであり、
それとは全然別に「常識なら私の方が全然ないし、常識があると言われる(常識に縛られていると思われる)のは本当に嫌なので、非常識バトルで私に勝負を挑まないでほしい、界隈一つ潰してから壇上に上がって来い」みたいなバトル欲みたいな感情が働いている、という感じ。
でも、怒られた時に反射でこのフレーズをやってくるやつには割と「そういう教育」を受けて育ってしまった人が一定数いるだろうので、一概に本人のせいとは言えないような気がするし、怒る側の人たちもなんかちょっと気をつけてあげられたらいいよな、と思いました。
新生活で怒られ慣れてない諸君、人を怒った時に新入社員がバグってビビった上のものたち、こういう一例もあるよって感じでどうぞ。
ちなみにタイトルにvsって書いたけど私の戦いはこれからです。さすがに事があった直後に聞くとめっちゃビビられると思うし。
うまい具合にチャンスを伺って本人に聞いてみます。迂遠な感じで。
私は非常識で、人の精神を解剖するのが好きなので。