ソーセージの言語学
英語の「ソーセージ(sausage)」の語源はラテン語のsalsīciusにまで遡り、もともと「塩漬けにされた」という意味の形容詞だった。Sālは言うまでもなくsalt、塩のことであり、イタリア語のサルシッチャ(salsiccia)、そしてサラミ(salami)もここから来ている。フランス語で加熱調理用の生ソーセージのことをソスィス(saucisse)というが、周辺諸国の言語にも借用されて英語でも使われている。
音節末に来るLは別の音に変わりやすい。例えばブラジル・ポルトガル語ではただの-u(ウ)になって国名のBrasil(英語のBrazil)も「ブラジル」ではなく「ブラズィウ」と読むのだが、saucisse(仏)やsausage(英)のSAの後ろの母音がLからUに変わったのも似たような原理だろう。
以前紹介した「阿蘭陀正月料理図」に登場した豚の腸詰はNPO茶道鎮信流のサイト上には「スシスト」と記載されていたが、元の図をよく見ると「スシスト云(スシスという)」となっていた。オランダ語でソーセージはドイツ語のWurst(ヴアスト)と似たworst(ヴォルスト)だが、ラテン語系のsaucijs(ソーセイス)も使われているようで、おそらく「スシス」もこうした語が訛ったものだろう(長らくオランダに支配されていたインドネシアではソーセージのことをsosisという)。
さて、ソーセージの本場ヨーロッパには様々な種類のソーセージがある。白カビで発酵させるドライソーセージ(スペインのフエが代表的)やブーダン・ノワールやモルシージャなどの血のソーセージ、日本のお菓子「カルパス」の語源にもなったロシアのソーセージ「カルバサ(колбаса)」はサラミのような感じである。