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『エロイカより愛をこめて』少佐・伯爵 再読後の第一印象(令和)


エーベルバッハ少佐の印象

令和6年、再読した当初の印象は、「あれ、少佐ってこんな人だったっけ?」。

昭和→平成→令和と時代が変遷し、私の価値観・倫理観や習慣が変化し、世の中の空気も変わった結果、かつて感じなかった違和感を抱くようになったようだ。

◉少佐の印象<その1>煙草吸いすぎ

いつ見ても煙草を吸っている
  ・デスクで吸っている
  ・路上で吸っている
  ・航空機内で吸っている
  ・礼拝堂で吸っている

煙草の灰はどうしてるんだろう?その辺に落としているのか?
そばに寄ったら絶対クサイはず…。

ついつい令和の2020年代の空気感で見てしまうんだな…。

昭和から平成・令和と時代が下るにつれ、喫煙に対する社会の目はどんどん厳しくなってきたんだよ。そこを忘れてはいけない。

新宿区の路上喫煙禁止条例が施行されたのはいつだっけ。
調べたら2014年。
東京都の受動喫煙防止条例が制定されたのは2018年。
意外と最近なんだな。

「飛行機の中で煙草吸うの?信じられない!」と、思ってしまうけど、航空機内での全面禁煙が実施されたのは、1990年代になってからなんだよ。少佐の航空機内での喫煙シーンが描かれた1980年代には、機内喫煙は普通のことだった。

思い起こせば、平成の初めに就職した頃、社内ではスパスパ煙草が吸われていたよね。喫煙者は自分のデスク上に灰皿を置き、煙草を吸いながら電話したり書類を作ったりしていた。

新幹線には喫煙車両があったし、観光バスの座席にも灰皿あったなあ。

マンガに描かれることも、当然リアルな社会の影響を受ける。

でも『エロイカより愛をこめて』は、1970年代に同性愛者を扱うという先駆的なところがあるのに、喫煙については保守的というかクラシックというか昔ながらな取り扱いだったので、ちょっと驚いたのであった。

そのポイントに驚く自分にも驚いた。時代の空気に流されているかも。ポリティカル・コレクトネス病かもしれない。

◉少佐の印象<その2>ハラスメント

いつも怒っている
 ・いつもどなってる
 ・誰に対しても自分と同じリズムとタイム感を強要する
 ・二人称が「きさま」

パワハラ、モラハラ?ブラック上司?
発言が不適切極まりない。

「ホモ菌がうつる」発言。
これまたあまりにも人権意識の低い差別発言。

いや、まあ時代が変わったのだ。

今や私はマンガの中の少佐の年齢を追い越し、むしろ部長と同年代。

しかし読み進めるうちに、違和感よりも、誰にも時代にも何者にも配慮しない少佐に感じる頼もしさの方が強くなった。



ドリアン・レッド・グローリア伯爵の印象

リアタイ読者だった頃、私は伯爵ファンであった。
という記憶はうっすら残っていたのだが。

大人になり、令和の価値観にどっぷり浸かって読み返すと、伯爵の行動や価値観にも違和感あり。

◉伯爵の印象<その1>性加害疑惑

19歳のシーザーをさらって来る(1巻)
身体の接触を強要する
1000回キスしようとする

それは未成年を略取した上での性加害なのでは?伯爵様…。

いや、物語とは法律的に正しいことだけを描くものでもないんだから、そこをガミガミ言うのはどうなんだ、自分…。

あーこの感覚って、現代の価値観で過去の行為を断罪する、いわゆるキャンセルカルチャーの類かもしれない。私ってば、そんなところに現代の流行りの感覚を取り入れちゃってるわけ?

◉伯爵の印象<その2>アートの趣味

印象派は好きじゃない
現代アートは興味ない

うぉ〜!このアートの趣味は悲しいかな全然共感できない。
私はヨーロッパの美術館に展示された「分け入っても分け入っても人物画」状態にうんざりする人だ。
印象派はむしろ大好きだ。
現代アートはものによる。

残念だけど伯爵の美意識には共感できない。
でも、「残念」と思うくらいには、やっぱり伯爵びいきなんだな、私。

欲しいものは窃盗で入手

えー、欲しいものは合法的に入手した方がよくないですか?
わざわざ泥棒するの、なんで?

思い出せ、自分。
70年代には「泥棒」にロマンを感じる価値観があったのかもしれない。
いや、あったよ。
ルパン三世大好きだったじゃないの、私。
そうだった。


総じて、伯爵への違和感は少佐へのそれよりは少なかった。
また、伯爵の人間性は素晴らしいと思う。

しかし、なぜなんだろう。
2人のことを、妙に身近に感じてしまうのだ。
小学校、中学校、高校の同級生くらいには身近に感じている。
欠点があってもスルーできるくらいには仲間と思える。

架空の人物だが、完全につながっている。
非常に太い糸でつながっている。とても濃いつながりがある。

人間の想像力とは、すごいものだなあ。
そして作家の創造する力もまた、すごいと思う。

キャラクター達は、彼らを生き生きとイメージできる感じる人間が存在する限り、永遠に「いる」わけだよね。

そして、私の頭の中に存在すると同時に、他の人の頭の中にも存在しているという不思議。

人間って、すごくない?
という結論で今回はまとめることにしよう。





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