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気がつけばカロリー制限

 この人生、ふとっていなかった期間がわずかにしかない。
 小学校高学年の時点でかなりふくよかだった。大人になっていったん標準体重になったこともあったけれど、今はそうではない。
 というか、どんなダイエット……減量も、リバウンドしなかったことがない。いっときは糖質制限もしたけれど、「糖質制限によってPMSが悪化する」という話を聞いて、リミッターをはずしたのであった。
 糖質制限もPMSもここで語る気はない。今回はカロリー制限の話。

 そんな自分だが、去年の秋に10年以上ぶりの健康診断を受けて、よろしくない結果をもらった。ちなみに健康診断をしなかったのは、よろしくない結果が出るとわかりきっていたからである。
 ここ三年ばかり、加齢と食生活の乱れにより、体重は増加傾向にあり、今後、更年期障害もあって、ただでさえ減量しにくくなるのはわかっている。
 でも、食べないと死ぬ、というのも、実感している。
 母は最後の二週間、何も食べられずに死んだ。母の主治医は、「一週間、水を絶てばひとは死ぬ」と言っていた。
 それは餓死なのでは? と思ってしまうので、食べるのをやめる気はなかった……なかったんだ……
(ここまで前置き)

 健診結果がひどかったので栄養指導を受けることにした。最初のひと月は、朝起きて夜寝る、40分歩く、というルールのみ課されたので、がんばっていたのだけど……ちょうど次の新刊の執筆作業と期間がかぶって、なかなかむつかしかった。
 まず、朝起きるのがどう考えてもむつかしい。夜寝るのが遅いからだ。「通勤をしているひとはどんなに眠くても朝に起きるのでそのつもりで起きてください」と言われた。まったく正論だけど、ほんと無理だ……寝ないと頭が回らなくて、一日作業が滞る。なので、執筆期間はこれはできなくてもしかたがないとした(自分に甘い)。
 40分歩くについても、無理がありすぎた。40分て! 隣町まで、と思って歩くのだが、帰りは電車かバスである。20分歩いて、20分かけて戻ってくるのも、なんだか釈然としない。

 そんな日々を送りつつ、執筆の隙間に友だちと会った。ちなみに予定では執筆は終わっているはずだった。2月の頭に渡しますよと口約束をして、最終的に2月上旬ならいいのでは? くらいまでなっていた……なんとか無事に刊行に向けて作業できているので言えることではあるが。あっ別名義です、相変わらず。

 自分がひどくふとってしまった、と言うと、友人は「やせなよ!」と叫んだ。そして、友人の家族もかなり肥大化していたが、医者に「食べて太るより、食べないで痩せるほうが健康的です」と言われて、二年かけて20kg落としたと話してくれた。しかも宅内業なので一切の運動はせず、とのこと。
「お腹が空いたらとにかく野菜を食べていたよ」とも、友人は言った。

 食べないと死ぬと思っていたので、衝撃的だった。
 死ぬのは怖くねーぜ とは言わないけれど、食べなくても死なない!と実例を聞かされたのはほんとうに驚きだった。いや、正確には食べていないわけじゃないな。野菜。そう。野菜。

 やさい!

 次の栄養指導の日に、担当者のかたにその話をすると、「理想的な痩せかたですね」と言われた。月に1kgほどが落ちればリバウンドはしづらいと。リバウンド王として生きてきた自分は、ひと月に5kgとか落ちないと意味がないと思っていたけど、やっぱりその微減が確実なのか……と改めて思い知った。いや、知ってたんですけど、長期的な取り組みはどうしてもむつかしくて……( ˘ω˘ )
 栄養指導の先生は言った。「お腹が空いたらプチトマトを食べるといいですよ」と。きゅうりでもいい。
 そして、一日の食事のカロリーは1400kcalに抑えるよう言われたのです。そのときに、朝200、昼600~700、夜400~500、と数値も決めました。
 朝が200なのは、前述の友人に会ってから指導の日までにいろいろ考えて「野菜かあ……( ΦдΦ)ハッ! そういやうち、ハンドブレンダーがあるから、スムージーでいいんじゃね?」となったためです。生野菜をいっぱい食べようとしたら無理があった……この時季(2月)はまだ寒いので……言うてもスムージーも冷たくて、朝っぱらからはキツいんですが。
 歩くのは30分となった。これなら駅前まで行ってうろうろすれば、速歩でも消化できるはず……!とあさはかに考えた。
 朝は9時半に起きて夜は2時に寝る。無理があるけどとりあえずそう決めた。

 極端にはしる人間なので、とにかく最初のときは野菜を食べていた。ちょうど、トイレットペーパーの買い占めが起きたころである。トイレットペーパーはたまたまその直前に新しいのを買っていたので、トイレットペーパーではなく、安くなった小松菜とかほうれん草とかみつばとか野菜の煮物とかのお惣菜を買い込んでいた……( ˘ω˘ )
 すると、驚いたことに、「おつうじ」がとてもいいのである! 驚いたことに! と繰り返したいほどに。要するに、これまで微妙な詰まりぐせは、ただの野菜不足だったのだ。と気づかされるほどに。そして、多少詰まっても、やわらかいのである。出口に負担をかけずに済むのである!(お察しください)
 これは思わぬ効能であった。いや、考えればわかるだろうよ……( ˘ω˘ )
 別に菜食主義になる気はない。しかし野菜を大量に食べてお腹を膨らませる最大のメリットは、実はこれだったかもしれない。
 野菜ばかりだが、規定カロリーを超過しなければ、糖質もとっていいので、そのへんは調節している。ちなみに外食をするので、もっぱらそっちで糖質をとってしまい、宅内ではほとんどとらなくなり始めている。コンビニも行かなくなった。

 ところで自分のスマホはGalaxyS9+で、いつの間にか万歩計みたいなアプリ(S Health)が入っていて、「歩きましょう」みたいに催促してくる。30分歩くのにももちろん役に立っていたが、これは健康アプリのようで、体重と脂肪率、そして食事のカロリーも記録できるのである!
 以前もカロリー制限のために有料アプリを入れたものだけど、それもすっかりわずらわしくてやめてしまっていた。今回は歩くのとセットになっているので、歩いたぶんのカロリー消費を計算して食べてもいい量がわかるっぽいのがありがたかった。(っぽい、というのは、適当にやっているのでよくわかっていないため……)
 最近の既製品はだいたいカロリーが表記されているし、そうでなくても、有名所の外食のカロリーなどはこのアプリに入っているし、自作のスムージーや買ったお惣菜なども登録できるので、管理がらくちんこのうえない。昔は、カロリー計算など、煩わしさの極みだったのに! ありがたや、と拝んでしまうレベルで簡単だ。

 スムージーとスーパーの野菜のお惣菜、そしてスマホアプリのおかげで、カロリー制限は以前よりハードルが低くなり、じりじりとではあるものの、減量できつつある。……と思う。

 そうはいっても飽き性だし、栄養指導期間の半年が過ぎても6kgくらいしか落とせないので、今年も健診を受けたらひっかかるだろう。つまりこれは、今後も、友人の家族のように、年単位でつづけないとならない。
 忍耐力の低い自分に耐えられるだろうか。
 だが、栄養指導担当者さんと話したときに、つい口から出た言葉がある。

「失敗しても、挫折しても、自暴自棄にならず、切り換えて、再び始められるように、なりたいです」

 軟弱な自分がこんなめんどくさい減量法に挫折しないわけがないし、友だちと遊ぶときはカロリーを気にせず食べたい。
 だけど、一日ぶんの規定のカロリーをついオーバーしても、くさらず、またリセットして、この習慣をつづけていければいいなと思う。

 生きてる限り挫折はするし失敗はする。それを予想して、何度でも、リカバリしていきたい。

 ちなみに朝9時半に起きるのは挫折しっぱなしです。