短編小説を書けるようになりたいのだ
このところずっと考えていた。
短編が書けるようになりたい。と。
冗長な前置き(だいたいオタク特有の早口)
短編というと自分にとって3万字でござる。pixivで二次創作を読むときは8000字未満は短編認識ができなかった。短すぎでは?という意味で。
5月まで、カクヨムで長編を公開していた。西洋風の異世界ファンタジーで転生ものではない。タグにも「非転生」とつけていた。さすがに今の世間様が「異世界ファンタジーはだいたい転生もの」という感覚を抱いているのは察していたからだった。
自分は異世界ファンタジーが好きだが、基本的に「自分で考えたオリジナルの世界観を構築するのが好き」なので、書いた作品もそういう話である。現代日本あるいは近未来日本から別の世界へ生まれ変わるのが前提……みたいな作品を「異世界ファンタジー」と認識しているひとが自分の書いたものを読むと悲しい齟齬が生じるだろうことは予想されたので、念のためだった。
その長編は10万字を超えていた。場面ごとに区切って1ページとしたが、短くても4000字近くなってしまう。場面によってはその倍もあった。閲覧者に、スマホだと長すぎるせいか表示が乱れるバグが生じると教えられた。自分のスマホでは再現できなかったので、特にそれ以上、ページを分けることはしなかった。
そのあたりでようやく、世間の比較的多数が「一度に読むなら3000字」くらいなのだ、と気づいた。そらそうだ。自分も、出退勤時の列車内で、ガラケーでpixivを読んでいた。読み終えると、目的駅につく。そういう「ちょうどいい」長さを求めて読んでいた。
当時、仕事で関係した編集者も言っていた。隙間時間に読めるものを求めている、と。それが10年以上前である。
なるほど、短い話が書けるといいな!(なぜか今さらそう考えた)
しかし自分はほんとうに、短く話をまとめるのが苦手だ。短編のつもりで何か考えても、気がつくと壮大になっている。そうでなくとも、3000字くらい……と考えると、そこで思考が止まる。
自分が仕事で出す文庫の1ページはだいたい400字ほど。3000字といったら7~8ページだ。文庫は1冊10万字前後。その中で10ページ未満なんて、キャラクター紹介のエピソードで終わってしまう。話が展開できない。
販促で求められるSSは、1200字という凶悪な字数だったこともあった。販促で本編を読んでもらう前提だから、どんなキャラクターが出てくるかの説明は省ける。だとしても、この字数で何をどう展開するのか。ギリギリ日常の一場面くらいではないだろうか。ひいひいいいながら書いた(原稿料は出ない)。
とにかく短編はむずかしい。という認識だった。
それでも書けるようになりたかったので、どういうものが短編小説なのか、参考にしようと考えて、ひとさまの作品を読んだ。といっても、ツイッター上のタイムラインに流れる二次創作を、である。画像が4枚貼りつけられているようなやつだ。
特に知らない原典の二次創作を読んでみた。知っていたら、おもしろかったのかもしれないが、よくわからなかった。
こういうので……いいのだろうか……いやでもなんかちがうような……? うーん……? なんか……コツみたいなのはどっかにないかな……と検索した。だが、自分の求めているものは見つからなかった。
唯一この記事だけが、おお!助かる!!! となった。
しかし改めて読んで、短編連作についてなので仕事に活用できそうでめちゃくちゃありがたいが、自分ができるようになりたいのは、いわゆるSSなのだな、と気づいた。そうそう、仕事も短編連作のほうが、書くのはたいへんだけど、その後の作業はだいぶんやりやすいんですよね……
(ちなみに栗原先生の有償記事はこちらもおすすめでござる。とてもためになって助かるのである……)
模索するうちに、去年の夏くらいに、「旅行しながらSSを書く練習をした」みたいなレポート漫画を読んだのを思い出した。
当時、それを読んで画期的!と思ったものの、今ほど短編を書きたいと欲しておらず、それでも「いつか書けるようになるといいなあ」と思った。
しかし、そういう感じだったので、自分でRTしたもののイイネもしていなかったようだ。今のツイッターって自分のログでも3か月くらい前までしか遡れないんですなあ……おかげさまで見つけられなかった。アーン読みたい! と思って検索しても見つからなかった。それをひとに話したら、そのひとが検索して見つかったという……自分の検索方法が悪かったようだ……(このへんは取捨選択にかけると不要とされるエピソードである)(とわかってても書かずにいられないのだ……)
「文字書きと行く!2泊3日の原稿合宿」レポ | こもりP #pixiv https://www.pixiv.net/artworks/76263024
これを読んで、改めて感心した。これは指導者が素晴らしい。そして二次創作への情熱はほんとうにつよいなあ、と感心した。このかたに限らず、二次創作に注ぎ込む熱は、とても強いものである場合が多い。人生を変えることもある。(これについては、別記事で触れられたらいいな~とぼんやり考えている)
ともかく、これを改めて繰り返し読んだ。つづきも読んだ。何度も読めば、鈍い頭にも、いろいろなことがしみ込んでくる。
ここから本題(やはりオタク特有の早口)
先日、友人K嬢と会った。無理をすれば産めなくないな~という年齢差のお若いお嬢さんである。
K嬢は、ちょっとした会話の中からキーワードを拾い上げてものすごい勢いで思いついた話を語り出す。それが、親しくなってから何度もあるので、どうかしてるのでは……と本気で感心している。頭の回転がしぬほど速く、それで苦労することもあるようだ。
K嬢は一次二次にかかわらず創作に真摯なスタンスで、二次創作でめぐりあったのが奇跡では?というレベルである。(二次創作界隈についてはいろいろと思うところがあるが、ここでは語ることではない……)
K嬢と会うのはだいたいホテルである。というのも、人目を気にせず話せる場所を求めて行き着いたのだ。以前はカラオケボックスだったが、それでも昼から夕方までの6時間くらいしか長居できない。我々は(特にわたくしが)アホほどしゃべるし、なんならそれぞれの機械でテキストを打ったりするのである。6時間なんてジュッととけて消える長さだ。
どちらが言い出したか忘れたが、今ではアパホテルの日帰りデイユースを利用するようになった。しかも今回は「テレワークプラン」だ。朝の8時から18時半までの利用が可能!!! 電源もたくさんあるしトイレもすぐ行けるしでかいTV画面もある! 禁煙ダブルをふたりで6000円未満というお値打ちさ!!!! うそだろ承太郎……!
そんなわけで5時に起きて6時半に出て8時からのプランを大いに有意義に利用した。原稿合宿ならぬ原稿デイユースだ。椅子をもうひとつ借りられたら最高かもしない(次のとき訊いてみようと思う)。
本当は、投稿作品のプロットの相談をしたかった。K嬢は前述通りに頭の回転が異様な速さで、他人のプロットを読み込んで、補う箇所を見抜いて改善策を思いつくのである。プロット練り職人だ。ただ、改善策には彼女の趣味がかなり入っているので、そのへんはご愛敬ではある( ˘ω˘ )
だが、短編を書きたい、という話をして、K嬢にも前出のpixiv作品を読んでもらった。彼女も「これはすごい」と唸った。
彼女が前出のpixiv作品から拾い上げたキーワードは、「お題」「ワンライ」であった。まさに自分が気になっていたのもそこだった。
お題というものを、二次創作のサイトを持っていた当時、ほんの少しだけやったことがあった。だが、異様にむつかしかった。100のSSのお題、というような、あれである。しかも、もちろん100作の完遂は無理だった。
ワンライは、一時間で1本のSSを書く、という意味にとっている。自分は、「結果としてワンライだった」ことしかない。それは、昼休みの一時間に思いついて書き出し、書き終わったときに昼休みも終わっていた、というだけの話である。意図して「一時間で書き上げよう!」と意気込んで書き上げられた、ということはない。
じゃ、やってみようか……となった。が。が。が。
二次創作で出会ったK嬢は一次創作も書くためか、創作全般に対するスタンスがとても近くて助かる。
もちろん一次創作を書かなくても「創作に対しての気持ちが近しい」と感じ取れるひとはいる。そして、そういう存在は何にもかえがたい。滅多に出会えない、とも言う。
ワンライをやるにしても、お題はもちろん必要だ。だが、登場人物はどうするか。それぞれのオリジナル、一次創作では、前提の説明が必要になってしまう。それだけで一時間が終わってしまう。
そんな話をしてうすうすわかったが、ワンライやお題は「二次創作」に有効のように感じられた。
お題はともかく、ワンライ、つまり一時間で書ける量はさほど多くない。となると、基本的な前提をのみこんでもらっておいたほうが「お話」としては広げやすい。なるほど!
もちろん一次創作でワンライをしているひともいるだろう。しかしテレワークプランのデイユース内でワンライを試そうとする我々には、できれば省けるところは省いていきたいという共通認識があった。
そこで、二次創作でワンライをすることとなった。が、自分たちがどっぷり浸かっている二次創作では無理だ、と早々に意見が一致していた。
我々はABというカップリングを奉じている。まさに宗教というレベルで心酔している。そのせいか、ABでおためしワンライをやるのは「もったいない」と考えてしまっていた。
だって 本に したいじゃん!
そう、我々はアホほど書いて隙を見て本にする二次創作の怪物のような存在であった。
とにかくABはだめだ~! そんな、気軽に消費できないよ!て、どんだけやねん。
では、おたがいの知っている別作品の二次創作にしよう……となった。しかし、どちらも「よく知っていて、書けそうな気がする」作品が、……ない……ないのである。
我々が浸かっている二次創作の原典があまりにも優秀で、ほかを食べる気があまりしなかったからだった。もう少し推せばFGOのぐだ鯖くらいいけたかもしれないが、K嬢が、ゲーム上のぐだおを自分の名前にしてるので勘弁してください。とも言うし、おたがいの好きな鯖がピン萌えだったので、なしになった。(ぐだビリとぐだエリは生まれ損ねた)
しぬほど頭を悩ませて、原典に戻ってきた。
「CD……」と、わたしは呟いた。
CDは我々の原典の別館的な作品の登場人物を二次創作で捏造したカップリングだ。工場が同じだけど製品が微妙に違う、というレベルで味わいも近しい。Bが原典で口にしたある言葉が、一度しか使ってないのにBの口癖として二次創作界隈で使われているが、Dにもまったく同じ現象が起きていた。
そして、AはCと血縁関係があって、根っこの性格が近しかった。BとDは赤の他人だったが、傾向で括ったら同じかもしれなかった。
時間もなかったので(その時点で16時半を過ぎていた)、我々は急いでお題をひいて、カップリング:CDで書き始めた。(CDを好きなひとには怒られそうだ。すみません)
一時間後、なんとか書き上げた。自分は3900字、K嬢は2900字。字数の差はかな打ちとローマ字打ちの差だと思いたい。
それぞれ相手の作品を読み合って、意見を言い合った。その内容については割愛するが、K嬢の書いたものを読むと、同じ年齢のころの自分を思い出した。
書く内容の取捨選択が適切にできなかったり、ワンライとは無関係だが、自分でつくったオリジナルキャラクターに思い入れができなかったり、などだ。あ~ 昔の自分だ~!と本気でびっくりした。
彼女にはいろいろと助言のようなことを申し上げたが、自分が当時それを言われても素直に受け容れられなかったのは経験上、知っているので、聞き流してほしいものである……K嬢はわたしより頭がいいし、同じところをぐるぐるしてしまうハムスターの回し車の回転数がわたしよりすごいので、たぶん、あまり時間をかけずに通り抜けられるのでは……という気もしなくはない。
そして、打鍵数の差を見て、一生かな打ちする……!ってなった。
あ、自分の書いたものですか? とても典型的な内容でしたわ。まあ、一時間ならこんな感じかなあ、というレベルではある。
しかし大げさな物言いになるが、「テンプレ」いわゆる定型的な作品の意義を初めて体感したと言っていい。
短い話は、テンプレで「あるべき」なのだ。書くほうもだが、読むほうも、ある程度「こうなる」と期待して読むのだから。これはいわゆる「なろう系」で、異世界に転生か転移か召喚される話が多い、というのに似ていると納得もした。みんな、スルッと物語に入りたいのである。ジャンル分けとは異なるかもしれないし、巧く表現できないが、そういうことなのだ。
お題&ワンライを実行して、それが、はじめてわかった。商業創作でお金もらいはじめて四半世紀経ってるんですけどねえ……(おろか)
とにかくワンライを、ひとと同時にやるのは初めてのことで、とても緊張した。緊張したけど、楽しかった。
楽しかった~!!!!! なんだこれ!!!!
このところ「何か書きたいような気もするけど長くなってしまうしなあ……」と考えて、仕事以外であまりものを書いていなかった。投稿作も、余裕がなくて、冒頭8000字くらい書いてやめていた。
しかしワンライを実行して、ダラダラと時間を使って長く書くより、決まった時間で短くビシッとまとめられるのって最高では?とわかってしまった。「理解して」と書いて「わかって」とルビを振りたいくらいだ。
一時間かけてお題を消化する。これを毎日、習慣化できれば、どれほど力がつくだろう(つかないかもしれないが)。できれば一次創作でこつこつ書いていくのがいいかもしれないけれど、二次創作でやっても、文章を連続して書く力はつくのではなかろうか。
もうだいぶん年を取ってしまったけれど、新しいことを始めると、わくわくする。
ワンライを体験してみて、まだ自分にのびしろがあるように思えた(事実はわからないけれど)。
日曜の昼間っから、あした発送の仕事を放り出して記事を書くくらいは楽しかった。楽しかったことを忘れたくないので、書いておきたかった。今から仕事をしますよ~。ありがとうK嬢!!
そしてこの記事も分割したほうが字数的によかったのかな~って思った。思ったけどこのままいく。