Life Story 12:今、自分は幸せだろうか?
ただ、その喜びは長くは続かなかった。喜びはやがて消え、ある大きな疑問が浮かんだ。
ふと自分を振り返った時に、幸せな感覚を全く感じられていなかったことに愕然とした。
もちろん頭で考えれば、幸せな状況だとは理解できる。
お金は十分あるし、しばらくは生活に困る心配もない。子供たちは健康に育ち、仲の良い家族だと思う。
ただ、心が、感覚が、幸せだと感じられていなかった。もっと心の平安な気持ちを感じられると思っていたのに、不安な気持ちが消えなかった。
なぜ不安が消えないんだろう?
両親のようにお金がない状況だと不幸になってしまうと思った。だからお金が欲しかった。お金や人生への不安から逃れたかった。お金を得れば、不安が消えるはずだと信じてきた。
ようやくお金持ちになった今、驚いたことは、むしろ以前よりもずっと、不安が大きくなっていたことだった。
お金を得たことで、今度はお金を失う恐怖が襲い掛かってきたからだ。
ある日、投資で増えた資産が一日で半分以下に下落した時があり、その時は体が粉々に砕けそうなほど恐怖を感じた。
仮に半分以下になったとしても、投資した元本よりずっと大きいし、FP会社に入ったばかりの30歳の頃より遥かに大きなお金を持っている。そう自分自身に言い聞かせても駄目だった。
恐怖の正体
この恐怖の正体が何なのか、そのときは全く分からなかった。
だが後に思うことは、きっと心の中で、自殺した父親と自分自身を重ね合わせていた。
母よりも収入が少なかった父。母からは見下されていた。離婚して家族を失った。そして失意の中、死を選んだ。
そんな父と自分を重ね合わせ、怖くてガタガタ震えていた。
実際の父の気持ちは分からない。離婚も自殺もお金とは全然別の理由かもしれない。でも私の潜在意識ではそう感じていたんだろう。
父のようになりたくなかった。
途中で動くのを止めちゃだめだ!止まったら落伍者になって命まで奪われる!
心の底でそんな恐怖を感じていた。だから成功を求めてもがき続けた。
荒れ狂う真っ暗な海の中を、何度も溺れそうになりながら、ようやく岸にたどり着いたと思った。命が助かったと思った。幸せになれると思った。
でもそれは幻想だった。たどり着いたと思った瞬間に岸が消えて、深い海の底へ沈められた。
そこに求めていた幸せはなかったことに気づいた。
20代の時、お金はなかったけど、希望はあった。経済的な成功をしてお金持ちになれば幸せになれる。そんな希望にワクワクしていた。
でもそのゴールに幸せはなかったことを突き付けられた。
希望が断ち切られ、絶望していた。
今の自分は、あの頃の自分よりずっと不幸を感じていた。
➡ Life Story 13:まだまだお金が足りないんじゃないか?
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