【詩】お子様よ!
お子様よ!
キミは毎日ステキに元気いっぱい
キミのエナジーはますます宇宙を膨張させている
手にとるようにわかる健やかなキミの成長
お日様の降り注ぐ部屋で駆け回るキミに注がれるママの慈愛の眼差し
それはまったく祝福すべき黄金の幼年時代
だがキミの優雅な日常がボクには悩ましい
お子様よ!キミは真上二階のお子様でボクは真下一階のオジサンだ
キミのギャロップはドラム・ソロ
キミのジャンプは頭の上で破裂の爆弾
弟とそれに時々ママも交えてキミたちったら、部屋の中
毎日トランポリン、来る日もサーカス
年中サッカー、いつも無邪気な運動会
おお、お子様よ!お子様の母上よ!
ボクの頭脳はヒート・アイランド、臨界、爆発寸前
お子様よ!キミはボクから静謐な日々を奪う
お子様よ!キミはボクから閑雅な生活を取り上げる
廊下ですれ違うママと一緒のキミはとても可愛いお坊ちゃん
お子様よ!二階の天使で王子で至宝のキミは
一階この部屋では悪魔で魔王でタイラント
ボクの頭脳をブンブンさせる電気ドリル
ハリケーン叩き続けるキミのティンパニー、バスドラム
オジサンのココロは炸裂して飛んで行っちゃうぞ
けれど家賃滞納中の失業者にはオオヤさんも味方せぬ
だからオジサンは天井に向かってそおっと叫ぶ
シズカニシヤガレ!コノガキ!
キミの人生は今始まったばかり
さあ、お子様よ!ひろびろとした地球の広場で遊べ!
そして無産のオジサンにも安眠を与える大きな人間になってくれたまえ
でも怪しいオジサンがうろついているからかな
この世紀
公園にはもう誰もいない
*初出 『季刊抒情文芸』2006年投稿欄掲載。
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