不可抗力時に出すカード。
私の場合。
セレクトショップやナイトクラブを夫婦で切り盛りし、ハーフの子供を育てながら同居していた私の家族の介護もこなして忙しくも充実していたが、養父を介護の末看取った後、店の経営が破綻していることが判明。店を畳み家族の再建を願ったが元主人の猛烈な反対に合い、まあ、揉めに揉め、離婚。
家族を巻き込み、多額の支払や返済に翻弄されながら、即戦力になるのが、手元に残っていた多少の服と体一つだった。車に服を積んでフェスやフリマに出店しつつ、旅行会社などの単発仕事や派遣をこなしながら、英会話講師になった。
専門は日本文学だから、まさか英語を教えるとは夢にも思わなかったが、元々は海外志向。旅が大好きで、シルクロードにロマンをみた口。違えば違うほど牽かれた世界に導かれて今に至る。アフリカンアメリカンの文化に牽かれ、狂ったように聴いてたHiphopが買い付けのきっかけになり、店を持てたのだ。
離婚後は世間で何が求められていて、何を自分はできるかのみが全ての基準だったが、祖母も失くなり相続する古いアパートの存続を巡り、こちらをなんとか生かせないかと模索中。住民の皆さんは親戚に近い存在でもある。
自分や家族のためにとにかく突っ走ってきたが、50を過ぎ、誰かの力になりたくなった。
養父の介護時にケアセンターの方に大変お世話になったし、アフリカンハーフの息子の子育てや、離婚時には公私共にあらゆる人のお世話になったからこそ、私は今ここにいるのだ。
威張れた経歴もないし、清廉潔白ですらない。だけど、とにかく生き残った。
自分の人生を省みると、自分から欲して変わったわけではない。
ただ、誰もが持つ転機のようなタイミングで出すカードは多いほどわくわくするゲームができる。
仕事に拘らずどれだけ無邪気に好奇心を携えて生きているかによると思う。
嫌いなことで、人は成長できるかもしれないが、自分の幸せには近づけない。そもそも幸せの定義なんてないのだけど。