はじめての海外旅行は、アイスランドだった
日本からデンマークで乗り継いで、約14時間。到着したのは夜の22:30頃だった。
当時、私は大学生だった。
4月頭、みなが就活をスタートしていた時期、
私は『アイスランド』の地を踏みしめていた。私にとっては初めての海外旅行だった。
私は、8日間の旅にしては小さめのトランクと小さなリュックを持ち、バイトをして貯めたお金で買った一眼レフカメラを首にかけていた。
アイスランドの空港は、大きめのショッピングモールくらいの大きさで、途中乗り継いだデンマークとは、また違った雰囲気があった。
そこは時間帯もあったのかも知れないが、なんだかとても静かだった。
空港から出ると、冷えた空気が眠気を覚ますかのように染みていった。春になりかけの季節だったからか、まだ雪や氷が地面に残っていた。バスに乗り込み、ホテルまで向かう。
街の灯りが少し遠くの方に感じた。
深夜で真っ暗な道をひたすらに走るバスの中、寝る人や音楽を聴く人、様々だった。
ふと外を見ると、ぼんやりと緑色に光るカーテンが見えた。これが人生初めてのオーロラとの出会いだった。
しばらく走ると、ホテルに着いた。
その頃には、オーロラはもう消えていた。
旅をしていく中で色々な事があった
それは一つ目の街のホテルでの出来事だった。
深夜、ホテルのロビーに併設されたバーで、オーロラが出るのを待っていると、現地の人に声をかけられた。彼とバーテンダーと3人で片言な英語とイラストで話をした。
「何かいい写真は撮れたかい?」
彼の親戚は日本人らしく、いつか自分も日本に行ってみたいと笑っていた。(海上自衛隊らしかった)
気がつくとココアと、彼が好きなアイスランドの場所のポストカードを奢ってくれていた。
「良い旅になるといいね」
彼らは英語が分からないと言った私に、ゆっくりとわかるように話してくれた。
二つ目のホテルは荒野の真っ只中にあった、
ロビーで受付の女性から鍵を受け取り、部屋に行くとすぐ外は氷の世界だった。
(わたしがアイスランドで、また泊まりたい宿はここかもしれない)
兄がシャワーに入るとなんと水しか出ない、慌ててロビーに行くと先程の女性が、私の拙い英語にもかかわらず直ぐにシャワーを直してくれた。彼女とは二日間、会うたびに少し話をした。
「この国の人は、オーロラを毎日と言っていいほど見ているから、わざわざ外に出て見にいったりしないのよ。」
「だけど私はオーロラが好きよ」
「だってとても美しいもの」
彼女はそう言って「だからあなたも見れるといいわね」と笑っていた。
出会いというのは人だけではない、
アイスランドには間欠泉があり、一定時間経つとお湯が吹き出るようになっている。これはアイスランドの地熱発電と深く関わっている。
他にも、見たこともないような巨大な滝だったり、広大に広がる流氷だったり、自分が普段感じる自然とはまた違う、自分がちっぽけに思えるような、そんな自然がアイスランドにはあった。
私は旅のお供に、写真家の星野道夫さんの本を何冊かバックに詰めて居た。その中のひとつにこんな言葉があった。
さまざまな人生の岐路に立ったとき、人の言葉ではなく、いつか見た風景に励まされたり勇気を与えられたりすることがきっとある
『長い旅の途中』より
アイスランドに行って、わたしの人生が大きく変わったということはない。
けれど今この瞬間も、どこかで空を見上げてオーロラを見ている人がいるのかも知れない、それを知ることが出来ただけでも、それは変化なのかも知れない。
またいつか、アイスランドに行きたい。