AI時代の泳ぎ方⑬ テレ東の『正解のないクイズ』の答えを格付けしてみた
今回は閑話休題です。
テレ東の『正解のないクイズ』が面白い
番組のコンセプトは、毎回妄想が必要な問題を上げ、識者が色々な切り口で答え、それを呂布カルマ、Aマッソ加納らのMC3人がコメントするというものです。
個人的感想ですが、日本の教育が答えのある問題を解くことが中心になっているという批判に対応する今時のコンセプトですし、事実、ビジネスにおける創造力のトレーニングにもなるなと感じました。
で、今回は、このクイズの解き方をどうビジネスに応用できるのか、回答者の答えを格付けすることで考察してみたいと思います。
具体的な問題は、3/18放送分
「時間だけは膨大にある大学生がやるべき就活で圧倒的に優位に立てる「○○旅」を教えて下さい。」
いくつかの回答をを紹介しましょう。
① わらしべ長者の旅:
・最初はほぼ無一文から旅を始め、行く先々で物々交換し、徐々に高価なものに変え、最後は家を手に入れて帰ってくる旅
・面接官に「こいつ会社の資産形成の才能があるな」と思わせる
(国際弁護士 清原博氏)
② 手作り宇宙ミッション旅:
・学生でも簡単なロケットを打ち上げげられる場所がある。そこに1年滞在し、プチ宇宙ビジネスを体験する
・宇宙ビジネスはビジネスに必要な大抵ことを学べるし、旬のビジネスなので企業の担当者はこいつ使えそうと思ってくれる
(宇宙飛行士 山崎直子さん)
③ デジタルツイン名刺交換の旅:
・1日3枚名刺交換をミッションとする旅。4年間で4000枚以上溜まる
・それをChatGPTに分析させ、入社後のネットワークとして活用する
(電通デジタル 山本覚氏)
④ 社畜旅:
・世界中の行き着いた先々で、例えば、番組ADなど最も辛そうな仕事ををこなし、社畜になっていく旅。
・私はあなたの会社でワーホリになれますアピールができる
(エール大学助教授 成田悠輔)
⑤ そんな、旅はない:
・なぜなら目的がある学生は忙しいから。以上
(日本最高IQの太田三砂貴さん)
⑥ ダンボール旅:
・段ボールの中に入って、知らない住所をかかれて送られ、そこで言われたことをやって過ごし、また段ボールで見知らぬ土地に送られるを繰り返す旅
(芸人トムブラウン布川)
これを見ながら、ビジネス的にはどう格付けできるか考えてみました。
ビジネス創造力発揮の作法
数多くの企画の経験者として、言わせていただくと、大事なのは、以下の3つの手順で考えることです。
・ターゲットは誰か
↓
・インサイトは何か
↓
・アイデアは何か
ターゲットは、今回の問いから考えると、明らかに就活の面接官となります。
インサイトとは、マーケティング用語です。
簡単に言うと、面接官が何を考えているかを妄想すること。
当然、我社にふさわしい人材か否かですが、そのためにいくつかの基準をもっています。それを浮き彫りにできるかどうかです。
アイデアは、拠り所にするインサイトに基づき答えをつくるわけですが、それが実現可能でインパクトがあるかどうかです。
インサイト評価
で、各回答者の評価ですが、まずターゲットが面接官であることは少なくとも回答者の全員が意識しています。
なので重要なのは、しっかりしたインサイトがあるかないかです。
筆者がそれを感じたのは、下記3つの回答。
②手作り宇宙ミッション旅 〇
・インサイトは、面接官に「こいつ、目的完遂意欲が高い奴だな。いい経験をしたな」と思わせることができます。
・目的達成のためにやり抜く資質がある人材は会社にとって魅力的です。
③デジタルツイン名刺交換の旅 〇
・インサイトは、面接官に「こいつ、顔の広い奴。コミュニケーション能力があるな。しかもAIを使って分析させるのが今時だ。」と思わせることができます。
・鍵はコミュニケーション能力とイノベーション意欲があることです。
④社畜の旅 〇
・インサイトは、面接官に「こいつ、どんな所でも働けるんだな。確実に使えそうだ。」と思わせることができます。
・会社の本音として、従順で使いやすい人材であることを見抜いています。(社会への皮肉が効いている成田さんらしい発現ですね)
ということで、6つのうち3つが明確なインサイトがあると感じました。
アイデア評価
次にアイデアの評価です。
②手作り宇宙ミッション旅 〇
・実際に、学生が体験できる場所があることを知ってお勧めしていますので実現可能性十分です。
・しかし、アイデアとしてはそこで学べというだけで、一捻りがないかなと思いました。
③デジタルツイン名刺交換の旅 ◎
・単なる名刺の蓄積に終わらず、それをAI分析に結び付けているのが気が利いている。面接官にも「なるほどね」と思わせるところがあると感じました。
④社畜の旅 フツー
・実際、出来そうではありますが、よく考えると、外国で下っ端の就業体験が複数ありますというだけです。
・社畜という言い方に掴みはあるものの、アイデアとしてはフツーと感じました。
というわけで、私的に一番優れた回答は、「デジタルツイン名刺交換の旅」になりました。
さて、これはTV番組ですので、回答がインサイトをついているか否かもさることながら、視聴者がおもしろいかおもしろくないかという重要な基準があります。
つまり、残りの3案が全く評価がないのかというとそういう訳ではありません。
なので、全案を『インサイトがある・ない』『おもろい・おもろくない』の2軸で各アイデアをプロットしてみましょう。
結果はこんな感じですかね。
因みに、この回のカルマルアンサー(3人のMCが合意した正解)は、⑤そんな旅はない でした。
意表のつき方が秀逸だったということでしょうか。
ということで、本ブログの結論ですが、覚えて欲しいのは、ビジネス創造力を鍛えるための企画作法の手順です。
それは、ターゲット ⇒ インサイト ⇒ アイデア の順です。
ビジネス的な答えは、しっかりしたインサイトに基づくものであり、かつ施策アイデアにインパクトがあるのものがいいということです。
考えてみれば、我々広告会社の人間も、ブレストと称し、こうした正解のないクイズの答え探しをずっとやってきたという印象です。
ブレストで追求したのは、アイデアが単におもしろいかではなく、そこに秀逸なインサイトがあるかが必ず問われていました。
いずれにしても、『正解のないクイズ』は、毎回の問題に対し、「インサイトは何だろう?」と考えると、ビジネス妄想トレーニングに役立ちそうです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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