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邦楽を、読もう。〜瑛人の香水とshowmoreのリンスインシャンプーを比較してみた〜

洋楽もK-POPもいいけれど、邦楽がダントツで好きです。なぜなら、歌詞が日本語だから!

私は邦楽を音楽として聴く以上に、詩を読む感覚で耳を傾けています。歌詞至上主義と言ってもいいかもしれません。だから、英語も韓国語も分からない私が全力で楽しめるのは邦楽だけなのです!…威張れることでは無いですね。

とは言え、学生時代は邦楽6:洋楽4くらいでした。そんな私の邦楽偏愛が始まったのは、仕事で作詞を手がけたのがきっかけです。

作詞って割と誰にでもできそうな気がしませんか?小説を書けと言われたらストーリー考えるの難しそうって思うし、漫画を書けなんて言われたら絵心無いから無理です!ってなる。けど作詞なら自分にもできるかもって思いません?短いし☆って思いません?

これがまぁ、やってみたら難しかった。めちゃくちゃ難しかった。限られた文字数で世界観を作り出さなくてはならない俳句の難しさに、プラスアルファー音程の縛りという制約がつくんです。言葉のイントネーションとメロディの高低がかけ離れていると、聞き取れない。単語の切れ目じゃない文字で音節が途切れると気持ち悪い。音読みの熟語は歌詞カード読まないと一聴しただけでは意味が取り辛い。(交渉・高尚・考証・校章とか)そんなこんなで作詞の奥深さを知り、邦楽を読む楽しさに目覚めたのです。

色々な作詞テクニックがある中で、技術じゃなくこれはもうセンスだなぁ。と思ったのが、どこまで説明するか・何を省くかの選択です。説明多めで具体的であればあるほど情景は浮かびやすく、『え?これどういう意味?』ってことにならないのですが、共感できる人間は限定されます。『この歌は私のことを歌っている!』って思う人が減ってしまうのです。そして何より、想像する楽しみを奪います。けれども、あまりにも抽象的な歌詞にしすぎると“分かる人にだけ分かればいいさ”という自己満的な作品になってしまい、キャッチーさは失われます。濃いファンは生まれるかもしれませんが、多くの人に愛されるヒット曲にはならないでしょう。

どこまで説明するか・何を省くかの選択には作詞家のセンスが現れ、どこまで説明されている曲が好きかは聴く側の好みが現れるのです。

さて。ここで2つの曲を取り上げたいと思います。いずれも“嗅覚”を鍵とした歌詞です。このどちらが琴線に触れるかによって、あなたの好みが分かると思います。

『香水/瑛人』

最近とっても話題のこの曲。Tik Tokで火が付いて、サブスクで再生回数を伸ばしに伸ばしているそうです。一度聞いたら耳から離れないキャッチーなメロディ。シンプルなアレンジ、繰り返しの多用。カバーしたくなる人が続出するのも納得の楽曲。

さて、歌詞はどんな感じなのでしょう。出だしはこうです。

夜中に いきなりさ いつ空いてるのってライン
君とはもう三年くらい会ってないのにどうしたの

かなり具体的ですね。3年会ってない“君”から急にラインが届いたようです。どうやら“君”は僕に会いたがっている様子。“君”って誰でしょう?友達?元カノ?元嫁?歌詞はこう続きます。

あの頃   僕達はさ なんでもできる気がした
ふたりで海に行っては たくさん写真撮ったね

青春ですね。きっと海水を掛け合ってはしゃいだことでしょう。正式に付き合っていたかどうかは分かりませんが、恋愛関係にあったと見て間違いありません。続く歌詞では、“僕”が人を傷つけても何も感じないクズになってしまったことが反省の色を微かに滲ませつつ自虐的に歌われます。そしてサビに入ると…

別に君を求めてないけど
横にいられると思い出す
君のドルチェ&ガッバーナの
その香水のせいだよ

更に具体的ですね。香水の銘柄までバッチリ歌い上げられています。3年ぶりに再会したにもかかわらず、正面に座るのではなく隣に座る距離感の近さがチャラい。ドルチェ&ガッバーナを嗅いだことがないので明言はできませんが、彼らの好むファッションが恐らくearth&ecology系じゃないことが察せられます。そして曲の終わりは以下のように締めくくられます。

別に君をまた好きになるくらい 君は素敵な人だよ
でもまた同じ事の繰り返しって 僕が振られるんだ

おお!明言しましたね。僕、過去に振られていたようです。君と僕の関係性が明確になったところで、香水は終わります。モヤモヤを残す事なく、スッキリとした聴き終わりでした。自由に想像を膨らましたい派には、やや物足りなさを感じるくらい分かりやすい歌詞かもしれません。では2曲目の考察に入ります。

『rinse in shampoo/showmore』

香水と比べて圧倒的に知名度が低いこの曲。出だしはこうです。

あなたが見つめた私はきっと全部嘘で
 私が見つめたあなたもきっと全部嘘で
知りたくない事ばっか知りえちゃって困っちゃうな
手のひらのブラックボックスを壊してしまいたいな

むむ?かなりふんわりした情報しかありませんね。この歌詞から導き出せるのは、“あなた”と“私”は見つめ合うような間柄ながらも、嘘や秘密を沢山抱えているということくらいでしょうか。手のひらのブラックボックスって何でしょう?そしてサビに入ります。

リンスインシャンプーの匂いが2人を繋いだ証だとしたら
リンスインシャンプーの匂いで朝の街に溶け込んでいく

リンスインシャンプー!!!!!やっと具体的なワードが出てきました。リンスインシャンプーが置いてある場所って相当限定されますよね。そう、ラブホとか。しかもそんなに高級じゃなさそうです。このキラーワードによって、“あなた”と“私”がそういう場所に行く間柄であることが浮かび上がりました。でもバチッと関係性が名言されたわけじゃない。もしかすると彼氏彼女かもしれないし、浮気相手かもしれないし、デリヘルと客かもしれない。色んな可能性が秘められています。2番の歌詞はこのように続きます。

(略)
寂しいだけなのに縋っちゃって困っちゃうな
本当の私を誰かに教えたいな
(略)
あなたが愛した私を忘れないで
この街で生きていた私を消さないで

う〜ん、意味深。本当の私を“あなた”には見せれていないにも関わらず、「そんな私を忘れないで」と歌う私の気持ちは如何に?“この街で生きていた”と過去形ってことは、私はこの街から出て行くの?もう出た後なの?それとも死にたいの?などなど疑問は尽きません。妄想が膨らみます。

2016年に発表されたrinse in shampooのYouTube再生回数は130万回、対する香水は2019年に発表されたにも関わらず400万回。関連動画も日に日に増えており、止まる気配はありません。ドンキでドルチェ&ガッバーナが売れまくってるとかいないとか。

どちらも嗅覚に訴えかける歌詞。あなたはどちらが好みでしたか?香水ほど多くの人に好まれる曲ではないかもですが、showmoreのrinse in shampooも良い曲だよ!と宣伝して、この記事を終わりたいと思います。(回し者じゃないよ)

#歌詞 #邦楽 #香水 #瑛人 #showmore  #rinseinshampoo






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