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マネージャーがやるべき「知識共有」

マネージャーの仕事のごく一部には、作業進捗の把握がありますが、当然ながら"作業"だけが把握対象ではありません。作業に加えて、情報/知識(information/knowledge)も管理していきたいところです。

たとえば、

 進捗や顧客の情報を整理したり、
 解決方法や対策に関する知識を浸透させたり、
 チーム運用上のちょっとしたアイデアを創出する

といったことは、プレイヤーよりも、マネージャーの仕事です。

特に、現場感覚よりも一つ上の視点からそうした活動を行なうことは、現場担当に任せきりになるのではなく、本当の意味でマネージャーの役割であるといえます。そうした役割を適切にこなせれば、効率やスキルアップが望めますし、新しい成果をチーム全体で生み出せるようにもなります。

プロジェクト単体のみならず、中長期的に考えても非常に重要な仕事です。

さて、情報を整理したり、知識を浸透させたり、アイデアを創出するためには、準備が肝心。その第一歩としておすすめしたいのが、「知識データベース」を作ることです。

知識データベースと言っても、とりあえずはAccessなどを駆使した本格的かつ大げさなものでなくてかまいません。単に、

 "必要な情報を"
 "欲しいと思った時に"
 "すぐさま取り出せる" 
(つまり、可用性)

と言う条件が整った環境が作れればExcelでもテキストでもOKです。できれば、変更容易性の高いものを検討しておくと良いと思いますが、いきなり大げさなものを作っても(使っても)使いこなせるとは限りませんし、リスクも大きいでしょう。

具体的に整理しておきたい情報として、次の4つが対象となります。

【よく使う情報】

まず、よく使う情報をまとめしょう。

仕事には、「よく使う情報」「頻繁にアクセスされる情報」というものがあります。

 取引先の電話番号
 お客様に提示する地図情報
 料金表・換算表
 お勧めの商品情報

などです。新人ならば、「どの席に誰が座っているか」「同じフロアの社員の顔と名前の一致」などは押さえておきたいですよね。電話の取次ぎが多いなら「どの取引先は社内の誰に連絡が来やすいのか」なんてのも、頻繁に使うかもしれません。

どんな業種でも何かしら頻繁に利用する情報があります。それらをイチイチ探し回ることなく、すぐに引き出せるようにしておくことはとても大切です。マネージャーはこの冗長的に失われる手間を改善し、メンバー一人ひとりが極力本業に集中できるよう取り計らう必要があります。


【たまに使う情報】

続いて、月に1度、半期に1度、年に1度しか利用されないような、たまに使う情報というものもあります。いわゆる「備忘録」です。

たとえば、「年末調整に関する書類」の提出方法などがそれにあたるでしょう。あるいは、「PCのパスワード変更」のタイミングなどもそれくらいになるのではないでしょうか。

これらは頻度が低いがゆえに、正確な手順をほとんど誰も覚えていません。覚えていられません。

すると、いざ必要になった時に探し回ったり、誰かに聞いて回ったり。もうそれだけで無駄な時間が発生し、本業の遅延が起きかねません。だからこそ、必要になったときにさっと取り出せる環境をあらかじめ用意しておくことが役立ちます。

とは言え、マネージャーの仕事を始めたばかりの頃は、何がよく使われる情報なのかはきっとわからないでしょう。そこで、手帳やメモなどにどんな情報を参照したのかを、簡単でも日々書き留めておくことがスタートになります。

少し古い方法であれば、私はWiki(Pukiwikiとか?)でプロジェクトごとに立ち上げて、すべてそこに書いて共有していました。

最近は、エンジニアリングから離れ、QAとしての活動が主でしたので、プロジェクトマネジメントをしていなかったため使っていませんが、どんな共有ツール/サービスが流行りなんでしょうね。SlackやRocketChatなどの会話ツールなんかで充分なのかな?基本的には「可用性」が確保されていれば、何でもいいと思います。


【専門知識】

また、たいていの仕事には、その分野における専門知識を必要とします。

それが多く必要となる仕事もあれば、あまり必要でない仕事もあるでしょうが、何かしらの知識は必ず必要になってきます。それらは、ビジネス書や論文などで学ぶ場合もありますし、ビジネスの現場で実地的に身につけることもあると思います。

なんであれ、そうした知識もできるだけ整理しておきましょう。そうすれば、後から自分が利用するときにも役立ちますし、チームメンバーに共有するときにも役立ちます。

特に後者の場合、記述しておかないと他の人と共有するのは難しいものです。学んだ知識、利用した知識があれば小まめにメモしておきましょう。

日頃なんとなく「いつでもできる」と思って放置していると、いざ転属、転勤、退職等によって共有できていなかった時、慌てることになります。これは完全に『学生症候群』の前触れです。

プロジェクトだって、メンバーが常に固定化されているとは限りません。

たとえば、メンバーの半数が外注(協力会社)だったとして、「予算の都合で」「メンバーが体調を崩し」「自社都合で」etc.…と言った理由で撤退しなければならなくなった、なんてことは良くある話です(この程度の事象はリスクでもなんでもありません。あらかじめ想定して然るべきレベルの話です)。

実際、私は今月で今の会社を退職しますが、私があらかじめ様々な取り組みや運用をすべて手順として仕組化した資料を作っていなければ、"やるべきこと"が多すぎて、引継ぎもままならなかったでしょう。


【アイデア】

もう一つ、大切な情報が「アイデア」です。

アイデアの扱い方で気をつけておきたいのは、

 「思いついたことは、なんでもメモしておく」

という習慣です。

それらのアイデアが後でどのように役立つか、それは思いついた瞬間にはわかりません。結果的に役立つモノが全体の2割しかないにしても、そのどれが2割の貢献になるのかは事前には判断できないのです。

そのため、何か思いついたら即座に書き留めておくことが重要です。事業改善やプロジェクトの進め方、部下の指導法や自分の仕事のやり方に関してなど、どんなことでもかまいません。

と言っても、私も週に1~2度閃いたりするものだから、ほとんどメモしておらず、忘れては閃き、閃いては忘れ…の繰り返しですが。しかも、私自身の仕事も多すぎて管理している余裕もなかったので、私は忘れる前に、そのアイデアを最も恩恵を受けそうな人に話にいって、アイデア自身を引き取ってもらうように、よく働きかけていました。

たいていの場合、『私自身が得するアイデア』よりも

 「もっとこうすれば楽になるだろうに…」

みたいな、他人の苦労を見て思いつくことが多いので、アイデア自身を他人に差し上げることの方が多かった気がします。昔、プロジェクトマネジメントをしていた頃は、私自身であったり、メンバーであったり、アイデアを実現するためのWBSを追加してタスク化していましたが、今は…管理している部署に私1人しかいませんし、他部署の改善アイデアを私がどうこうするのも変なので、『アイデアを差し上げる』ことで、管理しないようにしています。


最後に

この4つの仕組みを一気に作ろうとすると、だいたいは挫折してしまうかもしれません。本格的なものは憧れを感じますが、全部自分で作ってみようとすると、膨大すぎて手に負えません。

そこで、まずは手帳にちょこちょこと書き付けていくことからスタートしましょう。少しずつでも書き留めておきさえすれば、後からパソコンにまとめ直すこともやりやすくなります。

たとえば、よく利用される情報からマニュアルやドキュメントを作ったり、自分の専門知識をまとめて引き継ぎに使ったりと、利用方法は多彩です。利用の下準備に向けて、手帳にいろいろな情報を書き留めていくといいでしょう。
 
ITのエンジニアであれば、Information Technorogy…すなわち『情報を取り扱う技術』に精通するため、こうした

 情報を共有する技術

にも精通していくのは当然、必須となっていくものですが、それはエンジニアだけに限らず、マネージャー業務にとっても、仕事の柱の一つとなります。

 『ヒト』『モノ』『カネ』・そして『情報』

この4つの管理費目を使いこなせないマネージャーは、チームや組織にとって害になることはあっても、役に立つことはまずありません。知識や情報を「使えるように」しておくこと。そのための仕事にも、せっせと取り組んでいきましょう。

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Takashi Suda / かんた
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