外の世界に目を向ける
成果、すなわち利益貢献の源泉は顧客がもたらしてくれるものです。
これをプロフィットセンターと言うのは、以前からお伝えしている通りです。
成果は組織の外にあり、組織の中にあるのはコストです。
先にコストをかけて活動し、最後に対価の支払いを受け取る。
その際の収支によってプロフィット(利益)が決定されるのです。
コストとは、成果を得るために消費される経営資源のことです。そしてヒト・モノ・カネ・情報などの経営資源のうちヒトだけが価値を生み出すことができます。
モノはすでに価値が決まっていて、それ以上の何かを生み出せません。
カネも同様です。
「相場の変化に伴って価値はかわっている」
という人もいますが、それはモノやカネ自身の持つ価値が変わったのではなく、ヒトのニーズが勝ちに変化を与えたと考えてください。
そして知識労働者である自分自身を管理し、自制できるのは当然ながら自分自身以外にいません。誰かが自分自身をコントロールしてくれるということはありません。そして自分で自分をコントロールその際、貢献の焦点を自分だけに合わせていると成果をあげることはできません。自らの貢献が、外の世界につながって初めて成果に結びつきます。
外の世界、つまりは顧客から「対価を支払う価値がある」と言う満足を得られて初めて売上があがり、利益を獲得できて、それが自分自身やチームの成果になるわけです。
そのときようやく給料を受け取るに値する人、
すなわち
コストとしての「ヒト(資源)」から、
成果をあげる「人(財源)」になる
のです。
ドラッカーは『経営者の条件』の中で、
と警鐘を鳴らしています。
何年か前には、
・厚労省の勤労統計不正
・製造メーカー大手の検査不正やデータ不正
・数多くの大学で発覚した試験結果不正
・熊本の病院で行われた診療報酬不正受給
・老人ホームなどを運営する未来設計グループの会計不正と経営破綻
などがありましたよね。
これらは外の世界を見ていないからこそ起きた問題です。
自分の稼働原価であれ、それらの活動に費やした諸経費であれ、兎にも角にもコストの使い方に誠実でない人たちが起こした問題ともいえるでしょう。
直接顧客と接する部門であれ、接しない部門であれ、常に「顧客が喜ぶこととは何か」という観点から自らなすべきことを考える重要性を忘れないようにしてください。
これを忘れた時、それを
著しいモラルの低下
と呼ぶようになります。
組織の外を意識すると顧客の立場や顧客の目線を知ることができ、そこから発展したアイデアが生まれます。たとえば、セブン&アイ・ホールディングスはコンビニエンスストア業界の中でも特に
POSシステムの売れ筋情報
をマーケティング等に駆使することで有名ですが、同社の鈴木敏文会長は常々、
単に情報を分析するだけでなく、
顧客の立場に踏み込んで考え抜く
よう警鐘を鳴らしています。
たとえば、明日の天気が雨で肌寒くなりそうな場合、
「自分が顧客ならどう思うか」
「何を買いたくなるか」
仕事に慣れれば慣れるほどつい過去の経験や成功をもとに、顧客は「こういうものを求めるだろう」と思い込んでしまいがちですが、常にその時の顧客の立場から情報を知識に転換していくことが重要なのです。
ドラッカーを尊敬してやまないというファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は、
「企業の目的は、それぞれの企業の外にある」
というドラッカーの言葉から大きなヒントを得たそうです。
来店している顧客だけにとらわれていては広がりがないと考え、まだお店に足を運んでない顧客をどのように振り向かせるか、そのためにどんな商品が必要かを考え抜いた結果フリースやヒートテックといった商品が生まれたのは有名な話です。
たとえば、歯医者に通うのが好きだという人は、あまり多くないでしょう。あの「キー…ン」という独特の音、痛さなど、苦手の理由はさまざまです。
そこである歯科では、無痛治療を音を遮断する個室で行うことにしました。初期投資や運営費を考えるとあまり効率的でないように見えますが、患者に共通する不安や不満を取り除いたことで多くの支持を集めました。
たとえば、理容チェーンQBハウスを展開するキュービーネットはカット以外のプロセスを省き、徹底的に業務を再構築することで10分1000円という破格の値段とスピーディさを実現しました。
それまで、シャンプーからブ口ー、ひげ剃りまでフルセットで提供していたのは業界側の論理でした。顧客から見れば、本当に自分でできないのはカットの部分だけ。それ以外は自分でやろうと思えばやれる作業です。そこには「もっと時間をかけず、あるいは安く済ませたい」という隠れた二ーズも多く存在していたのです。
顧客の立場で本来求められている価値を見直すことで、新しいビジネスチャンスが生まれるのです。
こうしたことはIT企業における要件定義を含め、お客さまへの提案活動を行うフロントエンジニアやコンサル業務を行うエンジニアにも同じことが求められます。
お客さまの現状がどうなっていて(Real Situation)
お客さまは何に困っていて(問題/課題定義)
お客さまはどうしてあげれば満足するのか(Reqirement)
これらを正しく把握することは、ただのモノづくり要員から抜け出し、本当の意味でITを駆使した課題解決をする企業としては、今後の社会において必須と呼ぶようになっていくのではないでしょうか。