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行き過ぎたリスクヘッジは適切な行動を阻害する

リスクヘッジとは、もともと金融・経済・証券用語の1つで、起こりうるリスクの程度を予測してリスクに対応できる体制を取って備えることです。単にヘッジと呼ぶこともあります。日本語では「危機対策」「危機予測」などとも言います。

たとえば資産運用において、資産価値が一方的に下落することを最小限に食い止めるために、先物取引を使ってリスクを回避する方法があります。現物(株式など)を買い付けると同時に、先物市場で同量の売り注文を出して、現物の値下がりが続きそうなときに、先物市場で先に売ったものを安く買い戻せば、現物取引で生じた損失をカバーできます。

利益追求より価格変動リスクを抑え安定した運用をするために使われます。これがリスクヘッジです。

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今では比較的金融や証券だけでなく、ビジネスであればどこでも使われる言葉となりました。もちろん、IT関連のビジネスにおいても同様です。

ちなみに、

 対応できるように準備することを「ヘッジ」
 対応せずに受容することを「テイク」

と言いますよね。


未来の別名は詰まるところ"可能性"です。

可能性はどんなこともありうるという意味で中立的な言葉です。肯定的な意味で言えば「機会」や「チャンス」とも言い換えられますが、これを危機に陥る可能性と考えれば「危険性」とも言い換えられます。いわゆる「リスク」です。

株式が値上がりするか値下がりするのかについて、どれくらいの振れ幅があるのかを「リスク」と呼ぶのもその例です。

 「価格変動の可能性」=「株価上昇の可能性」=「株価下落の危険性」

ということです。大事なのはリスク(変動の可能性)のないものは皆無だということです。

では、リスクはどのように判断するのでしょう。

過去の実績や将来の見通しなどをみて、人間が総合的に行います。どんなデータがあったとしても、それにもとづいて判断するのは人間の心です。そのため、リスクの感じ方は人の気分や意識状態によって左右されます。

楽観的な気分のときは、良くなる可能性が大きく、悪くなる可能性は小さく感じられます。

悲観的な気分のときは、良くなる可能性は小さく、悪くなる可能性が大きく感じられることでしょう。悲観的な気分や不安が強いとき、悪化する可能性が大きく見積もられるために過剰なリスクヘッジをしてしまいがちです。

結果的にそうすることで機会を逸したり、チャンスを棒に振ったりということが出てくるわけです。


過剰なリスクヘッジの例としては、次のようなものが挙げられます。

・現在の生活が苦しいのに貯金をしようとする
・生活費を圧迫するくらい生命保険をかける
・裏切られることを想定して常に本心を見せない
・いつフられてもいいように常に複数の人と付き合う

常に気分が後ろ向きで悲観的に振舞おうとすると過剰なリスクヘッジが習慣化恒常化してしまいます。過剰なリスクヘッジを必要とするのは、適切な行動をしない(したくない)ことに起因します。

それはまるで、太りすぎて困っていても適度な運動や食事と規則正しい生活を嫌っている人が、健康や美容のために多くのサプリや薬を飲もうとするのと一緒です。

リスクを意識するだけで行動しなければ、不安はどんどん大きくなっていきますし、悪影響もどんどん大きくなっていくことでしょう。大事なのはリスクのヘッジとテイクを天秤にかけて、上手にバランスを取りながらマネジメントすることです。

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ISO 31000のリスクマネジメントのなかで大別すると4つの対策方法があるのもそのためです。ただ目を逸らし逃げようとする「回避」だけでなく、致命的とならないのであれば他のことに注力する「保有」のような決断もしっかりとしたマネジメントとなるわけです。

さらにいえば、1つのリスクに1つの対策だけとする必要もありません。複数の組み合わせもあっていいでしょうし、「未然に防ぐ」発生前対策と「発生時の対処」という発生後対策の両側面から準備しておくというのもアリでしょう。

どちらにしても、リスクがネガティブなものだからと言って守りの姿勢を採ろうとするのではなく、むしろ攻めの姿勢で手のひらの上でコントロールするつもりであたること、常に先手をとっていくことが肝要なのではないかなと個人的には考えています。

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Takashi Suda / かんた
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