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専門用語を多用する功罪
専門用語。
どの業界の仕事に携わるにしても、その業界の言葉について、いつまで経っても「知らなくてもいい」なんてことは絶対ありませんが、誰しも最初は「知らない」から始まるものです。ですから、会議のようにその場で調べることすら叶わない場などでは、話す人も「これくらい知っててあたりまえ」と横柄に思わず、
「知らない人がいたら進行に支障が出るな」
「知らない人のために、わかりやすくしておく必要があるな」
という思いで言葉を紡がなければなりません。それが本当の意味でのコミュニケーション姿勢と言うものでは無いでしょうか。
私は、会話に限らず、聞き手/読み手のコミュニケーションレベルを意識し、お互いのレベル差を小さくしようと努力できない人のことを、いわゆる
コミュ障(コミュニケーション障害)
と言うのだと思っています。
ですからどんなに「周囲から人気がある」とか、どんなに「面白おかしく話せる」とか、逆にどんなに「話がたどたどしい」とか、どんなに「声が小さい」とか、そんなものはコミュニケーション実現手段の中における些細な良し悪しでしかありません。
もちろんそういった課題は改善する必要はあるし、普段から改善の必要性がない方が良いに決まっていますが、それとコミュニケーション障害とはちょっと違うと思います。コミュニケーション障害とは、「コミュニケーションがまったく成立しない」状況全般を指すはずです。
であるならば、専門用語を濫用して、伝えるべき相手に正確に伝わらないようにしているのは、情報伝達上の障害以外、なにものでもないはずです。どんなに流ちょうに話せても、どんなに人気ものであっても、どんなに権威があっても、自分本位な姿勢しか為でないのであれば、それは変わりません。
たとえば、IT用語でもない、広告用語で「鶴の恩返し」を読み上げてみたらどうでしょう。
むかしむかし、あるところにM3、F3のおじいさんとおばあさんがWin-Winの関係を築いていました。
ある日、おじいさんは街へタキギのロケハンに出かけた帰り、BTLの施策にコンバージョンされた一羽の鶴を見つけました。
「こんなにデフォルメされるなんて・・」
おじいさんは鶴にソリューションを提供し、リザルトを残しました。
家に帰ると、おじいさんはおばあさんにプレゼンを開始しました。
「今日、鶴にCSR活動を実施した・・・」
するとポータルをたたく音がしました。
開けるとシズルのある娘がスタンドインしていました。
「一瞬いいでしょうか?
テッペンを回っているのにすみません。
香盤が悪く撮りきれませんでした。
本日のアゴマクラを頂けないでしょうか」
「確認します」
娘の競合状況に問題はなかったので、おじいさんおばあさんは腹をくくって娘と1クールの契約を結ぶことにしました。
翌朝、ハタ織り部屋から出て来た娘は、アートディレクションされた布をクラフトの力で見事にアウトプットしていました。
「これを、街でプロモーションしてきて下さい」
娘の織った布は街でバズり、おじいさんの刈り取りも成功、グッドデザイン賞まで受賞しました。布がブランド認知を獲得したことで娘は来る日も来る日も入稿作業を繰り返すことになりました。
そしてある日、試写を待ちきれなくなったおじいさんがエイヤで部屋の中を覗くと、2徹したPMのような姿の鶴がいました。
「フレームを見るとは、コンプライアンス違反です。
もう完パケることはできません」
そう言い残し、鶴は空へと飛び立って行きました。
おしまい。
どうでしょうか。
ちょっと知らない業界の言葉を使われるとさっぱりわからないという人も多いのではないでしょうか。もしも、子供の絵本売り場でこんな絵本があったら、みなさんはそれを許容しますか?
これはあえて面白みをねらった文章となっていますが、無意識の内にこうした文体になって、関係者を遠ざけてしまっているものはよく見かけます。語っている本人にとっては、当たり前になっている用語も、そうでない人にとっては馴染みがないことが多いものです。
そうした単語が複数目に入っただけで、頭の中が混乱してしまう人がいることを意識して、使う用語を調整しましょう。
「これくらい知ってて当たり前」
といってレベルが低い側の人にすべての責任を押し付けようとする人は、同じように自身が知らない言葉が出てきた時に、そのことに対して相手に同じことを言われてもその一切を許容し、まったくムカつかない、落胆しない覚悟と責任を持つべきです。それができないのであれば、それはただの自己中心的な我儘でしかありません。
知性とは、難しい文章を書くことでも読むことでもありません。
読み手や聞き手に知識自慢をしても仕方ありません。
相手に合わせ、相手にとって親切な文章を心がけること、どんな相手にでもコミュニケーションを成立させられる臨機応変さこそが真の知性ではないでしょうか。
「むずかしいことをやさしく」
「相手とコミュニケーションが成立するように」
いつも胸に留めておきたいものです。
私は、社会人になってから2~3年後には、常に
「新人に途中から引き継いでも、困ることのないように」
仕事する癖をつけていました。私が新人の時に同じ理由で相当苦労したからです。
新人教育3ヶ月でC言語しか学ばなかったのに、配属され、一番最初に指示された仕事は、「この設計通りのSQLを作って」でした。
もちろん、データベースアクセスなんて知りません。
教えてもらってもいません。
しかも、「あそこにあるORACLEのマニュアルから自分で調べてね」と言われ、当時ネットも普及していなかった時代、40冊以上50万円もするOracleのマニュアルから、何をどう調べればいいのかもわからず、延々と専門書を読み、わからないところは書き出して、休憩時間に近くの本屋で調べ…を繰り返していました。
今でこそ電子化されていますが、Oracleマニュアルの内容は今も昔も変わりません。みなさんは、入社間もない新人の時に、以下の内容を読んで、読んで、読み続けて…およそ2日で理解しろと言われて、できますか?
当時、すべて3~5cm厚の書籍でしかなかったOracleマニュアルを毎日毎日、読解するのは相当苦痛でした。とても、データベースという言葉すらままならない新人に読ませるような本ではありません。
結果、今なら1~2時間もあれば完成するような100~200行程度のSQL文を、当時は3週間もかけて何とか作り上げ、依頼した上司に提出したら5分でボツにされたのは、今でも苦い思い出です。
以来、私は「デキる人」向けではなく、常に「新人でも」わかるようにアウトプットするよう心掛けています。
こう言うのは、大人が小さな子供と話すのと同じですよね。3歳の子供にビジネスライクな話方をしても通じないのが当たり前なのを一緒です。子供の目線まで降りて話をしてあげなければ、会話が成立しません。
そしてこうした意識は、日常業務のアウトプットに限った話ではありません。会議や打合せなどの中で得意げに専門用語を使って、聞き手のレベルを意識した言葉に落とし込めない人と言うのは、相手にとって、上記のような昔ばなしを読み上げているのと同じように聞こえているのだということを理解しておく必要があります。
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