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まずスタートする

始める前に"やらなくていい理由"ばかり探す人に比べ、「さあ、やろう」という気持ちにすぐなれる人はスタートすることを大げさに考えません。考えても意味がありません。やる必要があるなら

 「どうせやらなきゃいけないんだから、さっさと始めよう」

と思うだけのことです。どんなことでもまず手をつけてみないことには「できるかどうか」さえわからないだろうと考えています。「わからないことをいくら悩んでも答えなんて出るわけがない。悩むだけ時間のムダ。人生がもったいない」と考えています。

スタートに時間がかかる人は逆です。

問題はそのスタートで、「いつ始めるか」「気持ちの区切りをどうつけるか」「テンションをどう高めるか」といったことばかり考え続け、なかなかスタートを切れません。たかがスタートに過ぎないのに大げさに考えすぎるのです。

スタートそのものに問題が起きることはそうそうありませんし、スタートしてみなければわからないことだらけです。早期であればスタートしてから微調整すればいいことも非常に多くあります。

それにスタートにも色々ありますが、うしろむきで居続ける限りスタートラインにも立てません。

私に言わせれば「スタート」というのは無計画に行動を開始することではなく、

  • 実現性を勘案してきちんと計画する

  • 計画通りに進められるようしっかり準備する

ところから始めます。スタートというのはそういうものだと思っていますし、早期に決断するからこそそうした活動をする余剰時間も作れるのだと知っています。不安だから動かないのではなく、不安だからこそその不安を払拭するところからスタートすればいいだけです。

それができないのは、要するに「スタートしたくない」からだとしか解釈できません。「スタートしたい」のなら、さっさとスタートすれば十分に準備できる時間も作れるはずなのですから。


また、実際にスタートさせてからも両者の心情には違いがあります。

早いスタートを切った人は(油断はしないと思いますが)ひとまず安心します。スタートが早ければ早いほど遅い人よりもはるかに時間的余裕がありますから、多少難しい課題に直面してもゆっくりと考える時間があります。

少しぐらいペースが遅くなっても、時間的余裕があるのですから無暗に慌てることがありません。

この状態を確保しようとすれば、それは否応なく『争う気持ち』『焦る心情』とは無縁になります。自分の課題だけ見つめていればいいからです。他人のことを気にする必要性がまったく無いからです。

スタートの悪い人はそうはいきません。

「追いつかなくちゃ」とか「負けるもんか」といった気持ちになっています。先にスタートさせている人間にどうしても対抗意識をもってしまいます。周囲に同じような人たちばかりになればなおさらです。

自分とゴールとの差を見る絶対評価ではなく、自分と先に進んでる他人との差をみる相対評価しか見れなくなっていくのです。これは子供の精神です。

そもそもスタート時にすぐに動こうとせず、後発になってしまった自分自身にこそ問題があるはずなのですが、勝手に対抗意識を燃やし、勝手に焦ります。

とにかくスタートが遅くてギリギリになって慌てる。
わかっていることなのにギリギリまでスタートを遅らせる

こうした心理を一般的に

 学生症候群

と呼びます。

わたしは、社会人に対して「学生気分が抜けない」人というのは、この学生症候群な状態をいつまで経っても持ち続ける人のことだと解釈しています。年齢は関係ありません。ビジネスパーソンらしい振る舞いをするかどうかではありません。こんな初歩的なタイムマネジメントもしようとせず、学生の頃から延々と続けようとする人のことを言うのだと思っています。

新卒や入社2~3年目の若手よりも、いい歳したオッサンがいつまで経ってもタイムマネジメントできないシーンを見ていると、案外学生気分が抜けていないのはオッサンの方なのかもしれないな…なんて思うこともしばしばです。

そもそもですよ?

「期限」「期間」という言葉が「終わりだけしかない」と勝手に思い込んでいること自体がナンセンスです。「期限」は期日に一定の限度…境界値がある状態を指しますし、また「期間」は"間"という言葉が使われているように、

 「始まり」「終わり」

があるに決まってるじゃないですか。いつまでも学生症候群をこじらせ続けている人は、この「始まり」を定めることの重要性を何歳になっても理解できていない…ということですよね(あるいは就職先で誰も教えてくれなかったか)。


加えてモラルが欠如している場合は、他人の足を引っ張ることもします。他にも「大丈夫かな」とか「ダメだったらどうしよう」という不安もあります。とにかく競争意識や焦燥感で盲目的になってしまって心穏やかではありません。

そして、スタートを切ってからいつも気がつきます。

さっさと課題に取り組みだしていれば気持ちが落ち着くのですから、

 「こんなことならもっと早くスタートさせておくんだった」

と後悔するのです。

いつまでもスタートを渋る行為は百害あって一利なしです。

人生にも「始まり」と「終わり」が決められているのに、それすらも無駄遣いしているということに早く気付くべきです。


だとしたら、軽い気持ちでとにかくスタートです。

すぐに始めることで他人より有利になるのではなく、自分の気持ちをかき乱すさまざまなものから自由になれます。それが争いの嫌いな人にとってはいちばん楽です。悩みやすい人にとってもいちばん楽です。焦りやすい人にとっても楽でしょう。

スタートの速い人に他人の足を引っ張る人はいません。引っ張る相手がいないのですから当然です。先頭を走っていれば他人が目に入らないからです。

ですからこう考えてください。

じっとしていればいるだけ、いろいろな不安や想像がまとわりついてきます。スタートさえ切ればすべて消えます。

早くスタートする姿勢は、それだけで

 早くマイペースをつかんで楽になるためのれっきとした技術

なのです。難易度は決して高くないのに、技術的には誰もができることなのに、誰もができていない高等技術です。

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Takashi Suda / かんた
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