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チームが機能するための仕組みづくり
チームが組織として動くためには土台となる「仕組み」がきちんとできていなければなりません。なにせ1人ですべてをやればいいと言うわけではないのですから、添えぞれに役割分担をしなければなりませんし、コミュニケーションも密に取らなければならなくなるでしょう。その時に、各個人が好き勝手なスタンスを採っていたらまず間違いなく揉めることになるはずです。
意外と知られていないことですが、以下の言葉はそうした背景から生まれた言葉と言われています。
・和を以て貴しとなす(聖徳太子・十七条憲法)
・和して同ぜず(孔子・論語)
チームを組織として機能させるためには、必要な仕組み(手順、手続、ルール、制度、情報伝達経路など)を作り、それを文書化して、メンバーに周知して、徹底させていかなければなりません。
こうした仕組みとしては、
チーム内で緊密なコミュニケーションをとるためのもの
チーム内で情報を流通させ、認識に誤りが無いようにするためのもの
メンバーの作業の進め方に統一感を持たせるもの
などがあります。
たとえば、「緊密にコミュニケーションをとろう」という掛け声をかけるだけでは、それは実現しません。具体的にどうすれば緊密になるのか、そのための仕組みを作り上げておかなければなりません。
そうすれば、仕組みに沿ってコミュニケーションが行われるでしょう。なにより、途中で不測の事態(メンバーの交代等)が発生した時に、それまでの経緯を知らず参画した人が早々にパフォーマンスを上げるためには、わかりやすいルールがあった方が良いのです。これはリスクマネジメントとしては至極当然な考え方になります。
同じく、「情報を流通させよう」という掛け声だけでは実際には情報は流通しません。具体的にどうやって流通させるのか、情報を流通させるための仕組み(手順やルールの策定、環境の用意等)を作っておかなければなりません。そうすれば、仕組みに従って情報が自ずと流通するはずです。
チームを組織として機能させるために必要な仕組みを作っておくためのコツは決して難しいことではないのです。正しく仕組みにできていれば、水が高きから低きへ流れていくように自然と徹底されていくことでしょう。
そうなっていない時は、仕組み自体を見直さなくてはなりません。
①緊密なコミュニケーションが行える仕組み
ある程度の数のメンバーがいるプロジェクト
内部でグループに分かれているプロジェクト
外部のベンダーや派遣会社の要員が参加しているプロジェクト
いくつかの会社が参加して協同・分担で開発を進めるプロジェクト
などでは、プロジェクト内で緊密なコミュニケーションが行える仕組みを作っておきます。内部の要員と外部の要員の間、グループ間、会社間でコミュニケーションが行われるようにするための仕組みです。
ここでいうコミュニケーションとは、
報告、提案、依頼、要求、注意・警告、評価・批評、注釈など
が相互に行われることを指します。
緊密なコミュニケーションが行われていると問題の発生を防ぐことができます。問題が発生する前に、相互のやり取りの中で、他のメンバー、グループ、会社がミスを発見したり異常に気付いたりして警告・注意や確認ができるためです。
また、たとえどこかで問題が発生したとしても、相互のコミュニケーションを通して、それが拡大する前に解決できるかもしれません。
ただし、問題の発生や問題の萌芽に気付くためには、メンバー、グループ、会社などの現在の状況、状態に関する情報が全体に見えるようになっていなければなりません。
定期的なミーティング・打ち合わせ、メールでの報告、ネットワーク上の掲示板での報告など様々なコミュニケーションにおいて、現在の状態、状況が見えるように仕組みを整えます。
また、突発的な状態、状況についてのコミュニケーションが行えるように、イレギュラーなメールの送信、掲示板への書き込みなどについての仕組みも作っておくといいでしょう。
②内部で情報がオープンに流通できる仕組み
同じく、
ある程度の数のメンバーがいるプロジェクト、
内部でグループに分かれているプロジェクト、
外部のベンダーや派遣会社の要員が参加しているプロジェクト、
いくつかの会社が参加して協同・分担で開発を進めるプロジェクト
などは、プロジェクト内で情報がオープンに流通するための仕組みを作っておくといいでしょう。情報の風通しが悪いプロジェクトや組織は必ず
『閉塞感』
が生まれ、ほぼ100%の確率でパフォーマンスが落ちます。必要な情報を入手する術がなかったり、特定の人しか持っていなかったり、あるいは随分と手間がかかったりすれば、当然無用な時間を消費することになるでしょうから当然と言えば当然です。
ここで大事なのは、内部の要員(社員)と外部の要員(派遣要員など)の間、グループ間、会社間で壁がなく情報が行き来できるようにするための仕組みの存在です。
ここでいう「情報」とは、技術情報、製品情報、業界情報、ビジネス情報、最新の時事情報など、報・連・相を用いて共有されていないと困る情報のことです。
プロジェクトのメンバーが、このような情報が欲しい、必要としているということをプロジェクト全体に発信でき、それに応じて該当する情報を提供、公開できるようにする手順や流通インフラ(たとえばメールや掲示板)などを整え、メンバーに周知しておきます。
ただし、こうした仕組みを機能させるために、誰もが情報をオープンにし、行き交わせられるような風土を醸造(醸成)しておく必要があります。それは誰もが「自分がこのような情報を求めている」ということを遠盧なく発信できる風土、それに対して該当する情報を持っていれば誰もが躊躇なくそれを公開する風土です。
ただし、これは単一のプロジェクトで実現できるようなものではなく、会社や部門・部署で実現しなければなりません。こうした取り組みは、隠蔽体質を持つ部署やチーム、派閥、人などが存在するとそれだけで足踏みすることになってしまいます。
たとえば、昨今あちこちの生産部署で”なぜなぜ分析”が行われていると言う情報を耳にします。
しかし、こうした実態に対して、過去様々な部署/拠点で行われてきた分析の記録は一切共有されることなく、共有される場所に保管されることなく、どこで行われたかの情報も公開されず、実施した人たち、あるいは部署のPCやNASでひっそりと眠っていることだと思います。
もし、こうした情報がオープンに公開されていて、様式/書式や考え方、書き方などを共有されていれば、後発の"なぜなぜ分析"を求められるエンジニアたちの負担を大幅に軽減していることでしょう。
「まったく同じ問題が過去にあった」
→解決法をゼロから考える必要がなくなった
「現状と同じ条件で問題が発生したプロジェクトがあった」
→現状改善を行い、リスクを回避することができた
過去の情報資産が共有できてさえいれば、余計な工数をかけず、より効率的に改善できて、経費圧迫をしなくていいような貢献ができたかもしれません。それがわかっていても諸事情によって「できない」のであればまだしも、「したくない」という人がいたら、その人は確信犯的に組織を陥れようとしているものと考えていいでしょう。
③不都合な情報の提供に対してメリットを与える制度
緊密なコミュニケーションを行う仕組みを整備したとしても、自身または自グループ(自組織)にとって不都合な状況、状態に関する報告が必ずなされるとは限りません。
言ってみれば「ただの情報隠蔽」でしかなく、会社にとって迷惑をかける行為になることではあるのですが、自分または自分たちに都合の悪い情報はなるべく公にしたくないというのが人間の性だと思います。
それを認めるわけにはいきませんが、心情としては理解できます。
そこで、都合の悪いことでも報告/通知されるような工夫が必要となってきます。たとえば「報告すること自体を評価に組み込む」などです。
不都合なことであっても「報告する」という行為自体をプラスの評価にするのです。その情報を展開、共有することで、あらかじめ他の人の再発防止にも貢献できるからです。その報告によって問題の発生を防ぐことができた場合には、さらに高いプラスの評価を与えるようにするといいでしょう。
失敗やミスというのは誰か先駆者が必ずいるものですが、その人が『その失敗やミスをどのように活かしたか?』によって、そのチームや組織のこの先何年、何十年という長い時間にかかるコストの差が大きくなってきます。ひいては利益率に大きく関わってくるということです。
逆に、報告しなかったために問題が発生してしまった場合には、問題の責任だけでなく、報告を行わなかったことに対しても責任を加え、より大きなマイナスの評価を与えるようにすればいいんじゃないかと思います。
あくまで一例ですが、組織への影響がプラスに働くか、マイナスに働くかはなにも数字だけでしか測れないものではありません。管理する立場の者が、管理する対象を正しく管理していれば、さほど難しいことではないはずです。
④作業中に中断や割り込みを生じさせない
設計にしろ実装にしろ、技術者が作業中に避けたいのは
外部からの割り込みによって強制的に中断させられること
ではないでしょうか。集中が途切れ、ミスや失敗を誘発させやすいと言う側面も持ちますしね。これは、どんなに優れた技術者でも同様です。優れていれば優れているほど、集中の仕方や、仕事の進め方に個性が出ます。それを無視して割り込ませることほど、非効率となることはありません。
通常、集中した頭脳作業中に割り込みがあると、元のレベルの状態・状況に戻すまでに大きなロスが生じます。お客さまからの問い合わせであればともかく、リーダー、マネージャー、上長であれば、部下やメンバーのパフォーマンスを最大に維持させ、かつストレスフリーで仕事をしてもらうためには、これだけは絶対に死守しなければならないテーマです。
少なくとも、軽はずみに実施していいことではありません。
そこで、
作業中には外部からの割り込みなく集中して作業できる
体制、仕組み、環境を作り上げておく
必要があります。特にお客さまから直接、担当の技術者に電話がかけられるような事態は、絶対に起こらないようにしなければなりません。
お客さまと率直に検討して、
・連絡の緊急性(急を要するものや時間的に余裕のあるものなど)、
・使用する通信媒体(電話、メール、正式な文言など)、
・連絡経路(担当者へ直接、リーダー経由、その他のメンバー経由など)
を組み合わせて、お客さまにも承諾してもらった上で、最適な伝達体制を作り上げます。
そもそも、PMBOKにおけるコミュニケーションマネジメントは、こうした計画外の問題が多発しないようにすることが目的の1つでもあります。これができなければ、メンバーの作業負担をコントロールすることは不可能になります。
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