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案外間違いがちな漢字表記

メールやビジネス文書などで

 「これって漢字? それともひらがな?」

と迷ってしまう用語・用字はあるかと思います。

なんとなくで使ってる漢字表記って多いですよね。
私も若かりし頃はそうでした。

今でもまだまだだとは思っているのですが、それでも少しずつ改善はしていっているという実感はあります。

なかには、統一感のない表現となってしまっても

 「どっちも同じ意味だし」

と勘違いして放置しっぱなしというものもあるかも知れません。実際、身の回りでも20代、30代だけでなく、40代でも50代でも間違った使い方をしている人はたくさん見かけます。

毎日使っている言葉だからこそ、実はずっと間違ったまま使い続けている人がたくさんいるんですね。ビジネスだから全部(堅苦しい)漢字が正解だと思っていた方は、この機会に正しい使い分けを覚えておきましょう。

メールやチャットなど「文章」を用いることが、現代のコミュニケーションツールのデファクトスタンダードとなっている以上、それを利用する際に送る相手への配慮としてこうした作法や常識を身につけるのは当然のことです。

文書化するのも、原則として「他人に読んでもらう」「情報共有をおこなう」ことが目的で作成するのですから、コミュニケーションツールとしての側面があることは明白です。

そうである以上、言語化、文書化する際には恥ずかしくない程度の教養はやはり必要と考えておいたほうがいいのではないかと思います。

「致します」

メールの締めの挨拶に「よろしくお願い致します」と記載する人は多いと思います。

 「いたします」「致します」

みなさんはどちらを使っていますか?

どちらもよく見かけるのであまり気にしたことがないかもしれませんが、漢字の「致します」は実は間違った使い方です。「致す」というのは「いたる」に対して「いたらせる」の意。「届かせる」「ある状態に至らせる」など、ある状態から別の状態にいたるようにするという意味です。

 「よろしくお願い致します」

はいったい何を届かせるというのでしょう。しかも相手に対して要求する言葉としては不適当ですよね。この場合の「いたします」は、述語の下について付属的な意味を添える補助動詞にあたります。

公用文では補助動詞をひらがなで記載するというルールがあるので、正しくは「よろしくお願いいたします」と書きます。メールでよく使いがちな「お電話致します」や「お伺い致します」も同様に「いたします」とひらがなで表記するのが正解です。

というか、ビジネス文書で「致します」という言葉を用いる機会はそうそうありません。悩むくらいならあえて「いたします」で統一しておいたほうが恥ずかしい思いをしなくてよいでしょう。


「下さい」

「ください」「下さい」も間違いがちな表記の一つです。

言葉が似ている例として「飲み物を下さい」「お飲みください」をみてみましょう。
初めの例「飲み物を下さい」はそもそも「下す」「下賜する」という動詞の丁寧語です。「飲み物をくれ」を丁寧語として「下さい」を使用しているので漢字で表記します。

一方、「お飲みください」は「飲め」という動詞を丁寧にするための補助動詞として使用しているので、「いたします」と同様にひらがなで書くのが正しい表記です。

メールでよく使用する文例として

 「資料を下さい」は動詞なので漢字表記
 「ご確認ください」は「確認する」の補助動詞なのでひらがな表記

です。
文法が分かりにくい時は、英語の

 give(もらうの意)なら漢字表記
 please(~してくださいの意)ならひらがな表記

と解釈しておくといいでしょう。


「見る」

漢字表記の「見る」は、視覚などの感覚を動かしてとらえるという意味です。

「資料を見る」など動詞として使うときには漢字で表記します。ビジネスメールでは「見る」と表記するよりも「資料を拝見する」と敬語にした方がよいでしょう。

一方、ひらがなで表記するのは「実行してみる」や「聞いてみる」など、「~てみる」とするケースです。

ここまで読むとそろそろみなさんもおわかりですよね。
そうです。この場合は「実行する」や「聞く」という動詞をサポートする補助動詞になります。

動詞補助動詞を混同するということは、要するに「見てみる」を

 見て見る

と言うよくわからない使い方をしているというのと同義になります。IMEなどの辞書変換ではどうしてもそこまでただしくサポートしてくれないケースがあります。私たち自身が正しい認識を持っていないとどうしてもこのようなおかしな使い方をしてしまいます。


「無い」

最近誤用が増えている用語のひとつが「無い」です。

漢字の「無い」は形容詞で存在を否定するときに、ひらがなの「ない」は助動詞で動作や状態を打ち消すときに使用します。意味が近しいので間違いやすいですね。

たとえば

 「面白みが無い」は形容詞なので漢字表記。
 「面白くない」はひらがな表記

です。考え方は補助動詞と似ています。
迷った時は、「有る」に置き換えられるものは漢字で表記するようにしましょう。

「面白みが有る」とは言いますが、「面白くある」とは言いません。
「面白くはある」と言うことはあっても、「面白くある」と言うことはありません。


「頂く」「戴く」

これまでの例と同じように「注文を頂く」「食事を頂く」など、動詞「もらう」「食べる・飲む」として使用するときは漢字表記、「ご覧いただく」「お集まりいただく」など動詞を補助するときにはひらがな表記です。

加えて、「いただく」には「頂く」と「戴く」の2パターンがあるのでさらに使い分けが難しくなります。

「戴く」は常用漢字ではありませんので、基本的には「頂く」と表記すれば正解です。

たとえば対象が自分よりも非常に上で、あえてかしこまった表現にしたいときなどに「戴く」を使用するとよいでしょう。「もらい物」の意で「戴き物」と記載されることがあります。

また、「お菓子を頂く」だと「自分がお菓子を食べる」の意ですが、「お菓子を戴く」だと「お菓子をありがたく受け取る」のニュアンスになります。


その他

勘違いした使い方でよくみかけるのは「殿」と「様」の使い方というものがありますよね。

相手の名称を丁寧に取り扱うときになんとなくで使っているのだと思います。「殿」といえば殿様を連想し、目上の人に対して使う言葉だと思う方が多いかもしれません。しかし実はその逆で、「殿」は目下の人に対して使う敬称となります。

間違えて、目上の方へ「殿」の敬称を付けるようなことがないように注意しましょう。

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