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CSとESは表裏一体

顧客満足度(Customer Satisfaction:CS)というものがあります。

似たようなものに従業員満足度(Employee Satisfaction:ES)がありますよね。これらの満足度を全くの別物と考えると手痛いしっぺ返しを食らうことになります。

そもそも従業員も会社から一歩離れれば一般消費者の一人にすぎません。

当たり前ですが、日ごろから一般消費者として物品の購入や消費をしている一人間です。当然、子供のころから「顧客」という立場でいろいろなものと向き合ってきました。

満足できないものは「二度と買いたくない」と思いますし、あまりにも内容がひどい場合はクレームを言うこともあるでしょう。では、それが仕事に従事する立場となった瞬間、毎日のようにスイッチが切り替わって一般消費者とは全く異なる考え方になるものなのでしょうか。

私はそうは思いません。

雇用主である企業に対しても同様になります。一般消費者と全く変わらないでしょう。

さて、では一般消費者の心理はどうなっているのでしょうか。

個々人によってもちろん差はあるでしょうけど、ある程度の統計データはわかります。その1つがグッドマンの法則となります。

苦情処理再購入決定率の相関関係を計量化した"グッドマンの第一法則"は、企業のみならず家庭でも応用できます。しかし、企業も家庭も"第二法則"にも注意したほうがいいでしょう。

グッドマンの法則とは、アメリカのジョン・グッドマン氏が苦情処理と再購入決定率の相関関係を計量化した結果と口コミの波及効果を測定した結果をまとめたものです。

グッドマンの第一法則

不満を持った顧客のうち、苦情を申し立て、その解決に満足した場合、顧客の該当商品・サービスの再購入決定率は、不満を持ちながら苦情を申し立てない顧客よりも高い

という法則です。

商品・サービスを購入したお客さまが不満を感じた場合、会社やお店に申し立てをした場合と申し立てをしなかった場合を比べてみると、申し立てをしなかったお客さまの再購入率はたったの9%です。残りの91%のお客さまは諦めて買わないか、次回からは別の会社やお店で購入をしていると考えられます。

そう、必ずしも多くの人たちが「不満」を口にしているわけではありません。
不満がある場合はその不満を直接ぶつけようとはせず潜在的に客としての関心を失うということです。すなわち、お客さまの苦情に速やかに対応し満足した結果が得られた場合は、そのお客さまはリピーターになってくださるということを示しています。

お客さまが不満をもたないような商品やサービスを提供することが一番重要なことですが、どんなに誠実に対応していたとしても、人がやることである以上は100%完璧と言うのは無理な話です。

そんな時のために、

  1. 不満をもったお客さまにアクセスしやすい企業として窓口をつくりオープンにする

  2. お客さまの不満の声をネガティブな反応でなく、むしろウェルカムなチャンスとして不満解消に全力を尽くす。

と言うことが重要となるということです。

これに反して最も怖いのが、トラブルやクレームなどが発生した場合に真っ先に「責任のなすりつけあい」を行うことです。少なくとも上記2つのポイントとは真逆の応対となり、苦情・トラブルに対する不満はより募ることになります。

非があったなら、

 それらは素直に認め、迅速に対応する

ことが企業価値をより向上させるのだと言うことに気づいてください。

そしてまったく同じことが企業と従業員の間でも言えます。

私自身も過去に4回転職していますが、退職することについて「相談」というものを上司にしたことはありません。また退職する理由…原因についても同様です。

ということです。

すでに「退職」を決意するほどに企業に対して信頼を失っているわけですから、そうなってしまってから「考え直せ」と言われてもそうなることはまずありません。

それに理由を述べてから「じゃあ改めるから」と言われれば、さらに信頼を失うことになるでしょう。

  • 言われるまで何一つ管理してこなかった

  • 言われるまで改善する気がなかった

ことを自ら認めているようなものですから、今後もそんな企業に振り回され続けるのかと思うと辟易してしまうからです。

人と人との付き合いとは「一期一会」のようなものです。
少なくとも日々そう思って接するべきで、一方的に甘えていいものではありません。特に対等な付き合い方を求められるビジネスにおいては絶対です。それは取引先との売買契約や請負/準委任契約も当然ですが、企業と個人との雇用契約においても同様です。

ビジネスはすべて「信用」と「信頼」で成り立っているのですから、それらを無視した行いをしておいて問題が明るみになってから何もなかったかのようにしようとしても、それは無理というものです。

また、グッドマンの第一法則のなかでは仮に不満に対して申し立てを行なったお客さまでも、その解決が迅速であり、結果的に満足につながった場合は82%が再購入をしているとあります。

そのつもりがなくお客さまに不満を与えてしまうようなケースであれば、誠実さ・真摯さによって信頼を取り返せる可能性が非常に高いことがわかりますね。

これはなかなか従業員満足度にはない観点かもしれません。

企業と個人、上司と個人の関係の場合、企業や上司には善管注意義務がありますので、その日々注意しなければならない義務を怠ってしまうと一気に信頼を失ってしまう可能性が高くなります。

善管注意義務は、昇格等によって役職者や経営者になる時点で常に徹底することが義務付けられていますし、それも待遇や報酬のうちですから、一分一秒たりとも欠けさせてはならないものとなっています。

特に企業の評価、待遇、人事は不公正になりやすいものです。

どんなに企業の仕組みとして制度化しても、必ず人事権を持つ者の主観的な価値観が優先されます。これまで多くの不正な人事を目の前で見てきました。実際、酒の席で告発できてしまうような人事や評価の話をポロっとこぼしてしまった役職者や経営者も見たことがあります。

だからこそ不誠実な対応を従業員に対して取ってしまうと一発で信頼を失い、しかも再チャンスを与えられることなく退職してしまう優秀な人材も多くなります。


グッドマンの第二法則

しかし、第一法則だけでは不十分です。

一度苦情が届くという時点でそれなりにハードルは上がっているはずです。対応を誤った時のリスクはそれなりに高くなることを予想し、真摯に取り組む必要があります。

苦情処理に不満を抱いた顧客の非好意的な口コミの影響は、満足した顧客の好意的な口コミに比較して、二倍も強く影響を与える

という法則を第二法則と呼びます。

好意的な口コミは、たった1人から4~5人に伝播するといいます。一方で非好意的な口コミはたった1人から9人~10人に伝えるそうです。さらに20人以上に伝える人は 12.3%も存在しているといわれています。

今はインターネットもSNSもありますからアッという間に何万人もの人に伝わる可能性もあると考えられます。苦情処理は、対応を誤ると対象のお客さまの離反どころか、他のお客さまの心象にも大きな影響を及ぼすということです。

これはB2CであってもB2Bであっても変わりません。

なぜなら最初にも言いましたように、企業間取引(B2B)を行う人も、企業を一歩離れるとただの一般消費者だからです。環境の違いによって考え方が根底から変われる人と言うのはそうはいません。グッドマンの法則は常に頭の片隅に入れて、顧客満足度を意識した応対ができるようになりましょう。

そしてこれも従業員満足度に置き換えると同じことが言えます。

いまではこうした口コミサイトも増えました。

前職の時にみかけるようになって、私も自分がいる会社の情報を見るくらいはしたことがありますが、結構赤裸々に不満が書かれています。なかには「あ、あの部署のことか」「あー…あの上司のことかなぁ」なんて読む人が読めばわかってしまうような内容もありました。

ですので、SNSではないにしてもこうしたサービスが普及し、市民権を得ていることによって満足した評価だけでなく、不満足評価についても5人、10人程度ではなく何百、何千、何万人という人たちに広がってしまうリスクも考えておく必要があるでしょう。

単純に目先の既得権益にばかりかまけて従業員満足度を無視すると、単純に離職するしないだけでなく、さらに大きな被害につながってしまいかねないということは気を付けておいたほうがいいでしょう。

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Takashi Suda / かんた
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