頭の指示に心が従えない時
なかなか行動に移せない状態は、頭の命令に対して心がストライキを起こしているときでもあります。
「働きたい、会社に貢献したい」
「やらなきゃいけない、やるべきだ」
と思う一方で、
「やりたい仕事以外はやりたくない」
「面倒くさいから誰かやってくれないかな」
と理由はいろいろありますが、結果的に心のストライキを起こして動けなくなっている状態です。こういったとき、まずはこの「ねじれ」を改善する必要があります。
このねじれを改善する方法はしっかり自分自身と「対話」をすること。心がストライキを起こすほとんどの原因が対話を通じて解決できるものばかりです。なぜ解決できるかというと「共通する目的」があるからです。
実社会におけるストライキには賃上げや労働条件の向上などある目的があります。労働組合のほとんどは会社を壊したいとは思っていません。それと同じように自身の心の奥底の声もあなた自身をダメにしたいとは思っていないはず。自分に対してよかれと思って抵抗(ストライキ)をしているのです。
解決するためには心との「対話(=言語化)」がすべてです。
真摯に向き合って対話をしていけば「ねじれ」は解消できます。まずは心の奥底ではどんな要求をしているのか、問いただしてみましょう。
静かに目を閉じ、自分にひとつずつ問いかけてみてください。
「会社に行きたくない」という願いがあったとしたら「どうしてそう思うのか」「何をすれば会社に行ってもいいと思えるのか」など全部聞いてあげるのです。
叶えられることはかなえ、叶えるのが難しければほかの解決策はないのかを探ってみてください。
ともかく大切なのは自分の心と対話のテーブルにつくことです。心の奥底の思いや要求を聞かずしてこの抵抗は解決しません。自分の心の声を聞くことで思考と行動のねじれの原因がわかってくるようになり、あとはそれを解いていけばいいのです。「解くため」に考えるのは心よりも頭の得意分野です。
また、頭と心のバランスを欠いたまま頭で考えていることによって心を支配しようとすると、ある限界点を超えた時点でうつ症状に転化することもあるので、頭…つまり理屈だけで強制力を以って行動しようとあるいはさせようとは極力しないようにしましょう。
これは、自分自身だけに言えることではありません。
昨今、IT業界では精神疾患による休職者もどんどん増えているといわれています。前職の企業でも毎年多くの若手、中堅エンジニアが心の病を抱えて休職や退職を余儀なくしていく人が多く、たくさんの子たちを見送ってきました。
ちなみに、IT業界に限って言えばそうなる原因については、検証できる類のものではありませんので照明はできませんが、私自身ハッキリとわかっているつもりです。
すくなくとも1on1やメンター制度程度の浅知恵では根本的な解決までは不可能です。
経営者の意識、組織のあり方、管理職層の評価制度等、仕組みから見直さなければ、おそらく下位要員の精神疾患が無くなることはありません。
そもそもIT企業といえば「人」の数×質によって売上の上限が決定し、質×量によって利益の上限が決定するといわれている世界です。
人的リソースを『減らす』という結果が、あるいは他社の人的リソースを増強する結果となることが、中長期的に見て如何に企業に損失をもたらすか管理職層以上の面々はもう少し真剣に向き合うべきなのです。
そして今の休職や離職をさせてしまっている事実に対し、その根本原因をただすことなく放置し続けるべきではないのです。
「組織に損害を与える」
というのは何も目先の売上や利益を損なうことだけをいうのではありません。企業の売上/利益を生み出す原資である人的リソースを雑に取り扱い、減少させる環境や上司というのも、その先何年、何十年という長期で見た場合にどれだけ企業に損失を与えているのか、その影響は計り知れないのです。いかに個人能力が優れていようが、組織に損害を与える上司など害悪でしかありません。
「頭」で理解させること。
「心」に納得させること。
管理職や経営者ともなれば自分自身だけでなく、他人にも必要となるケースは多々あるでしょう。それができなければ自身が行動できなくなるだけでなく、組織のパフォーマンスも著しく低下させることになるわけです。